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新しい時代を創造する生協の活動と商品戦略 |
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信頼関係と同時に緊張関係をお互いにどう創造していくか コープこうべの商品政策の考え方 |
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浅田克己 生活協同組合コープこうべ専務理事 インタビュアー 田代洋一 横浜国立大学教授 |
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1921年の創立以来80余年、日本の生協運動のリーダー的な役割を果たしてきたコープこうべの浅田克己専務理事に、最近のマーケットの状況とそれに対する商品政策・産直政策、そして産地・生産者との関係のあり方などについて聞いた。聞き手は、田代洋一横浜国大教授。 |
◆ジャストフィットする事業サイズは何か
浅田 生協全体としては、事業サイズをもう1回考え直そうとしています。コープこうべも大きな考え方は一致しています。組合員の活動は、地域的なサイズで最適化できますが、事業のサイズがそれと同じで、市場との戦いに適応できるかというと、これは生活圏のサイズではないと思います。新しい局面を開いていくには、事業サイズ、これは産地形成のサイズでもあると思いますが、ジャストフィットのサイズは何なのか、ということが問われていると思います。 田代 そのサイズの中での最適化をはかっていこうということですね。 浅田 1998年ごろの供給高は3600億円くらいで、この間に800億円ほど落としてきているわけですが、それは不採算店舗や事業をいくつか整理をしてきたからです。そして、拡大主義ではなく、もう一度きちんとジャストフィットできるサイズの中で、次の発展期の展望をめざしていこうとしています。この間の5年間は、最初の2年が改革期、01年度、02年度が養生期、そして03年度、04年度が発展期という位置づけです。 ◆未利用のマーケットに目を向けて
浅田 03年〜04年度の2年間を発展期としていますが、03年度はどちらかというと仕込みの1年でした。無店舗事業では、要冷品の集配センターを新たにつくります。集配センターとしては温度管理が必要な冷凍・冷蔵のジャンルと農産温度帯を新たに設定して、セットセンターと加工センターを併設してスタートしますが、1年をかけて基礎条件を整えました。もう一つは、店舗ではこの4月から店舗の営業時間を拡大しますが、そのための準備も03年度に1年かけてやってきました。 ◆利用の安定と新規組合員の創造―戸別配達 田代 どういう層をターゲットに、どういう業態を拡大していきたいと考えていらっしゃいますか。 浅田 主力の業態は、店舗と無店舗です。無店舗では戸配が全国で伸びていますが、私どももここ1、2年間の戸配の伸長度は高いです。利用者の年齢層は二極化されます。一つは、団塊の世代とその上の年齢層です。もう一つは、仕事をしながら子育てをしている方やお子さんをつくられたばかりの方ですね。 田代 マーケットが変化してきているわけですね。 浅田 本部のある神戸市東灘区では、この少子化時代に、子育ての拠点になる保育所や小学校のクラスが足りません。それくらい組合員やマーケットは変わってきていますから、私たちのマーケットを見る目を素直に押さえ直す方がいいと思っています。 ◆加工度の高い商品で需要を開拓――店舗事業 田代 5割がインターネットでの注文というのは驚きというか、新鮮です。ところで、店舗事業の方はどうですか。 浅田 店舗の方は、主力の業態は食品中心のスーパーマーケットに置き換えてきていますし、着実に進展していることが一つです。現在ある店舗も、時間の便利さ、商品構成の便利さにきちんと応えていないと、市場競争に負けてしまいますが、いまは少しズレていると感じています。営業時間の拡大も、全店一斉にということではなく、高齢者の多いところは朝10時開店を9時に早める、駅前店は夜遅くまで開けるとか、それぞれの店のマーケットにジャストフィットしていくことにしています。 田代 商品構成では…。 浅田 もともと素材型のスーパーマーケットが得意でしたし、組合員も伝統的な手作り派の方がたくさんいますので、それはそれで大事にしていきますが、加工度の高い商品をどれだけマーチャンダイジング(MD)に入れるかが大事になってきています。例えば、カット野菜とかカットフルーツは、まだマーケットは小さいですが、130〜140%も伸びています。こうしたもののマーケティングがまだちゃんとはできていません。店として進めると同時に、本部としても新しい需要開拓をしなければいけないと考えています。 田代 職員のマネージメント力が問われますね。 浅田 人材の活性化と教育にはかなり力を入れないといけないと考えています。店舗職員も高齢化しているので、1年に80人程度共同購入センターの若手の職員を店舗に回しています。 ◆組織の顔「コープス」商品――PB商品 浅田 「コープス」というPB商品が2323品目あり約740億円供給しており、26%のシェアになります。農産品はそのうちの183品目、供給高が78億円です。農産品全体の売り上げがだいたい260〜270億円ですから、農産品全体に占めるコープスの割合は3割くらいで、7割は市場流通品ということになります。 田代 「フードプラン」というのもありますね。 浅田 フードプランが通常のコープスと違うのは、全部国内産地のもので、残留農薬が国の基準の10分の1以下とか、環境基準など独自の厳しい基準を設けていることです。そういう商品ですから供給側と生産側の交点に対する組合員自身の参画を深いものにしていこうと考えています。これ以外のコープスについても、肥培・肥育管理について基準を設けています。供給高は、78億円のうちの33億円です。 田代 産地に地域性はありますか。 浅田 基本は産地リレーで通年供給することですから、ニンジンですと長崎から始まって北海道までリレーしていく形にしています。と同時に地産地消についても大事にしています。 田代 産地同士が連携する仕組みはありますか。 浅田 「フードプランフェスタ」という集いを2年に1回開いて、生産者の方に来ていただきますので、神戸で出会うことができますね。 ◆産地とは五分の関係―同じ方向をどう向くか 浅田 私たちと産地の方は5分5分の関係で成立していると思っています。つまり向かい合うのではなく、同じ方向をどう向くかが問われるわけです。そういう意味では、一つは、信頼関係と同時に緊張関係をどう持つかが私たちの最大テーマです。信頼関係をどう持つのかは大事にしますが、それだけだと内向きになってダメですから、そのなかでどう緊張関係を持てるかを互いに創造していかなければいけないと思います。 田代 最後に農業・農協へ期待というか注文を。 浅田 基本的には、頑張っていただきたいですね。強い商品がたくさんありますから、目前の問題解決も大きな課題でしょうが、チャンスに焦点をあてれば十分にやれると思います。まだまだ開発できる市場はあると思います。私たちは消費者である組合員に利用していただくのが仕事ですから、その強みを出すお手伝いを精一杯やらせていただきたいと思います。 田代 お忙しいなか、今日はありがとうございました。
(2004.3.22)
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