農業協同組合新聞 JACOM
   

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新しい時代を創造する生協の活動と商品戦略

組合員のくらしに最大貢献する事業を展開
生活協同組合連合会ユーコープ事業連合専務理事 丸山基雄氏に聞く

   
聞き手  田代 洋一横浜国大教授
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 神奈川・静岡・山梨をエリアとする生協連合会ユーコープ事業連合は、174万人2144億円の事業高をもつ。事業面での機能を事業連合に集中し、事業面では1つの生協のように運営することで一定の成果をあげてきている。事業連合として独自のPB商品を開発していることでも知られるが、小売業界の寡占化がすすむなか、組合員のくらしに最大貢献するためには、新たな事業連合の枠組みを検討する必要があるとし、コープネット事業連合との協議を開始した。最近の消費動向などを含めてユーコープ事業連合の 丸山基雄専務理事にお話いただいた。聞き手は田代洋一横浜国立大学教授。


コープネットと新たな事業連帯の枠組みを構築

丸山基雄氏
丸山基雄氏

◆事業連合に機能を集中し成果をあげる

 ――会員生協やユーコープの総代会・総会が終わりましたが今年の特徴はどういうところにありましたか。

 丸山 ユーコープについていえば、ここ3年間の流れが理解され、具体的には事業連合に機能を集中して、事業分野では1つの生協として運営してきたことが、数字面でも成果として表れていますので支持をいただいていると思います。

 ――総会での意見で特に印象的なものは。

 丸山 日本生協連が全国共同開発商品として「新・低価格商品」を展開します。これは日本生協連の組合員調査で、安全・安心については概ね満足しているが、「コープは高い」という価格に対する不満が出ていることに対応するものですが、「低価格」というと「安かろう悪かろう」という商品ではないかという印象をもたれる。それはいかがなものかというご意見がありました。
 価格は品質との見合いで決まるわけで、「安いもの」と「悪いもの」はレベルの違う問題なので、そのことをもう少し理解してもらう必要があると思いましたね。一番比較しやすいのは、NB商品との比較だと思います。これは価格戦略の問題もありますが、突き詰めれば事業体の経営体力で価格が決まりますので、私たちが持っている販売管理費の高さといった課題を解決しないと組合員に満足してもらえる価格設定がしにくいということはあります。

◆少量希望のニーズに応えた商品政策・売場づくり

 ――最近の家計支出の減少とか消費不況の継続などによる組合員の消費動向への影響はどうですか。

 丸山 ここ1、2年の特徴ですが、組合員1人当たりの利用高が低下傾向にあります。店舗での買上げ点数も低下しています。無店舗では前年度対比109%と伸びていますが、これは新規拡大つまり人数増加でカバーをしているわけです。
 農産物の品目別に見ると、果物はずうっと下がっています。野菜も含めていえることですが、カットフルーツとかカット野菜に、傾向として移ってきています。家族構成人数も少なくなってきて、半切りとか4分の1のウエイトがどんどん増えていますから、少量単位にしていくことが必要だと思います。とくに大根とかキャベツなどでは、1個売りは難しくなってきています。だからますます1点単価は下がらざるをえない。ですから、点単価を上げる商品政策をとると間違えると思います。
 そうした動向に応えられる売場をどれだけつくれるかが課題だと考えています。今年度に入って15週経過して13週は計画を上回っています。既存店ベースでは、多くの会社で前年割れをしているなかで、良い数字が作れていると思います。

 ――来店数は増えているわけですね。

 丸山 神奈川で6店舗、静岡で2店舗閉店していますが、計画比では100を超えています。
 いままで10しか売れなかったものを100仕入れて全部売り切るという単品プロモーションを実施し、それが成功した店は伸びています。そうした事例をみていると、大きな経済的な環境変化がなければ、相当な改善ができると考えています。

◆300〜450坪のミア・クチーナ型店舗へ集約化

 ――店舗の場合、規模による動向はどうなっていますか。

 丸山 ユーコープ全体の店舗事業は、つい最近まで1100億円でした。そのうち50坪〜300坪の中型店で約500億円、それより大きい大型店で500億円。そして小型店が120〜130億円という割合でした。ところが15〜16年前には小型店でも450億円ありましたが、店舗数が減り1店舗当たり供給高も減ってきましたから、小型店の業態としての寿命は終わったとみています。

 ――小型店は閉鎖していくわけですか。

 丸山 生協は組合員組織ですから事業ベースだけでやめますというわけにはいきませんので「近くにあって不便な店」というように思い切ってコンセプトを変えていかないといけないかなと考えています。

 ――具体的にはどういうイメージでしょうか。

 丸山 不便だけれども近くにあってちょっとしたものは買えて、価格的にはそこそこの価格ということですね。いずれにしても小型店は統廃合を含めて縮小していく業態ですね。

 ――中型店はどうですか。

 丸山 普通は300〜350坪がSMでいう中型店ですが、私どものところでは100坪から300坪の店があるわけです。ミア・クチーナ型といって部門構成や品揃えを含めて標準化されたパターンをつくっている店と従来型のものが並存しているのが現状です。店舗数からいえば従来型の店が多いわけですから、これはリニューアルなりスクラップアンドビルドをかけて、300とか
450坪に集約していかないといけないと思っています。

◆鮮度を重視する宅配事業「おうちCO−OP」

 ――無店舗はどうでしょうすか。

 丸山 「おうちCO−OP」という事業ブランドを昨年下期に立ち上げ、これを徹底的にアピールしています。

 ――これは個配のブランドですか。

 丸山 ユーコープでは、個配という言い方は一般的ではないと考え「宅配事業」と呼んでおり、そのブランドです。

 ――会員数は増えている?

 丸山 前年比で108.8%と増えています。共同購入は子育て世代が中心ですが、その8割は宅配です。まだ受け口が狭いのですが、インターネット受注はこれから伸びると考えています。通常の1回当たり利用高は7000円くらいですが、インターネットの場合は1万円を超える人もおり、平均でも8000円程度と高くなっています。

 ――農産品の仕入れの基準はどういうことですか。

 丸山 前提として安全がありますが、価格そして鮮度ですね。「おうちCO−OP」のキャラクターはトマトですが、これはトマトが可愛いからではなく、鮮度の良いものを届けることに努力するし、それを事業のコンセプトにしたいという思いがあってトマトにしたわけです。全国の生協で農産生鮮品を共同購入で取り扱っているところより、収穫から組合員に届くまでのリードタイムは半日から1日短いと思います。
 そういうシステムをつくりましたからできたわけです。しかし、店舗はシステム化しずらい面がありますし、コールドチェーンが完全にはできていませんから鮮度をあげるために工夫が必要だと思いますね。

◆地産地消の促進、トレーサビリティを全農に期待

 ――そうした商品はどこから仕入れているのですか。

 丸山 一番は全農ですね。共同購入の5割以上は全農です。インストア・MDで調達する部分が増え、農家が直接店にもってきて販売する地産地消タイプも増えていますから、やや依存率は下がってはきていますが、全体では3割が全農ですね。

 ――全農に対して要望したいことは。

 丸山 「おうちCO−OP」では全農と提携して南町田にセンターをつくったからできたことです。そのおかげで利用点数が増えてきています。そのうえでさらに要望すれば、地元の海老名のトマトが非常に良いわけですが、6月にならないと出てこない。それを今年は2か月前倒しして4月からだしてもらうようにしました。そういうことを全農と組んで、地産地消の生産サイクルまで変える取組みをもっと主導権をもってやってもらえればと思います。
 それからなんとしてもお願いしたいのはトレーサビリティですね。ロット単位で判れば、何かあったときに全品を対象にしなくてすみますからね。

◆商品開発は全国連帯で、組合員の願いを活かす仕組みを

 ――商品開発への組合員参加などはどうなっていますか。

 丸山 組合員の直接参加型の商品開発としては「マイコーププラン」というのがありますが、今後の方向性については現在検討中です。事業連合PBをこれだけ開発しているところはユーコープだけだと思います。安全・安心をいままで以上に担保するためには、科学的で高度なレベルを求められますから、この事業ベースでつくるには限界があると思います。今後については全国連帯のなかでやっていきたいと考えています。

 ――今後は日本生協連と提携して商品開発していくということですか。

 丸山 ユーコープのPBについては今後、日本生協連の全国共同開発のなかにユーコープのPBを収斂していって、突合せをしていいものは全国化すればいいし、現在ある日本生協連コープ商品の方がよければそれを扱えばいいと思っています。組合員が開発に直接加わるよりも、IT技術などを活かして組合員の願いを科学的にくみ上げて商品として具体化してつくりあげる仕組みを構築していきたいと考えています。

◆コープネットとの連帯で流通寡占化に対抗

 ――それと関連しますが、首都圏における事業連合の再編についてお聞かせください。

 丸山 コープネットとの連帯については、2月に連帯の可能性について協議することを発表しました。この9月には具体案をまとめる予定です。
 なぜそうしたかというと、流通の再編は究極的にはセブン&アイとイオングループに集約されると思います。全国の地域生協が一つのグループとして対抗しなければ、生協そのものだって存在が危ぶまれると思います。そういう意味では首都圏で500万人7000億円という事業体ができれば全国の生協の一体化にとって大きな力になるではないかと考えたからです。
 そのことで、組合員の思いを大切にする地域生協の良さと事業面でダイナミックな展開をするその両方の良さを活かせたらいいなと思いますね。

 ――お忙しいなか貴重なお話をありがとうございました。

インタビューを終えて
  ユーコープグループはコープかながわを中心に店舗比率が高い。それゆえ最も早く事業連合化を図ったが、今日では事業面の事業連合への統合度が最も高いグループである。そしてPB開発も進んでいる。そのユーコープがコープネットとの何らかの統合に踏み切った。実現すれば組合員500万人、供給高7000億円のマンモスグループになる。これでもなおセブンアイやイオンとは桁が違う。スーパーチェーンとして新たな挑戦への果敢な取り組みが始まったわけである。秋に具体化される統合案を期待して見守りたい。
 しかし何といっても組合員あっての生協である。事業の適正規模を追求するだけでは組合員から乖離する。その点で価格、安全、新鮮が勝負である。最大の仕入れ先は全農であり、全農と組んで南町田にセンターをつくることによって宅配に最も新鮮な農産物を供給できるようになったという。産地開発とトレーサビリティが最大の期待である。トップレベルでの協同組合間提携が正念場にきたというべきである。(田代)
(2007.7.31)


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