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トップインタビュー・農と共生の世紀づくりのために |
生産現場の情報を伝え、消費者ともっともっと交流を |
生産履歴の記帳は信頼感を醸成する
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日和佐信子 雪印乳業(株)社外取締役に聞く 聞き手:北出 俊昭 明治大学教授 |
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生協や消費者団体の活動を経験し、食の安全性やこれからの食品行政のあり方について、消費者の立場から提言をされ、現在は食品メーカー・雪印乳業の社外取締役としても活躍されている日和佐信子氏に、今日における食の安全と安心や農協組合が考えなければならない問題を率直に語ってもらった。聞き手は北出俊昭明治大学教授。 |
◆安全性確保のルールはできた だが、守らなければ安心はない
日和佐 よく食の安全・安心とひとくくりでいわれますが、食品の安全を確保するために、さまざまなルールや法律、公規制がありますが、それらが適切に設定されていることが、まず前提になります。従来は、食品衛生法が主な安全性確保の法律だったわけですが、「時代錯誤の法律」と私たちが指摘してきたように大きな問題がありました。それが改善され食品安全基本法ができ、整合させる形で個別法も改正され、安全性を確保するために法はかなり高いレベルで整備されたと思います。 北出 だけど、国民の間には安心できないという意見がありますね。 日和佐 それは、ルールができ罰則も強化されたけれど、そのルールがキチンと守られているという確信を持てないからです。いまだに表示の偽装があるように、ルールはできたけれど「守っていない。だから信用できない」「安全性に対する信頼が持てない」というのがいまの状況だと思います。 北出 法整備ができたのにいろいろ問題が起きている要因は何でしょうか。 日和佐 事業者の意識が変わっていないからだと思います。表示偽装問題をみていると、いま急に悪いことを事業者がし始めたわけではなくて、いままでずうとやってきたことに対する反省がないから、世の中が厳しくなっていることに敏感でないから、「いままでやってきたんだから」という感じでやり続けて、暴露され糾弾されているケースが多いですね。 北出 企業倫理が欠如しているわけですね。 日和佐 「いままでもやってきた」「他所もやっている」というこの二つを見直さなければダメですね。
◆食べる技術、食事を楽しむ技術がなくなってきている
北出 消費者の健康に対する不安感も強いですね。 日和佐 知識のキチンとした受け継ぎがなくなっていますから、食べる技術がなくなってきています。だから、健康に対する不安を補填するためにサプリメントに走るわけです。 北出 食べる技術がなくなってきているのはなぜでしょう。 日和佐 一つは、核家族化だと思います。食べることの知識や経験が、親から子へ伝わっていないんですね。たぶん「腐った味」を知らないので、腐っているかどうかの判断ができないから、賞味期限が切れるとパッと捨ててしまう。
◆農業体験をすると子どもの顔つきが変わり目が輝く
日和佐 食品安全基本法の制定で生産現場に対する責任追求が非常に強くなり、生産現場も安全性の確保に努めなければいけないという枠組みが強化されました。そして生産記録をつけることも取り組まれています。これは大変なことかもしれませんが、何かあったときに説明の根拠になります。これを有効に活用すれば自分の農業経営の見直しにもつなげることができますし、そのことが生産現場に対する信頼感を徐々に醸成していくことになると思います。 北出 農産物は天候に左右されますが、産直などの場合、約束したものがなぜ定時・定量こないのかといわれますね。 日和佐 それは流通の責任ですね。流通は約束した量は、どうしてもといいます。しかし、生き物を相手の生産現場はそうはいきません。生協のような組織は、天候不順で収穫できないので欠品になるということを組合員に伝えることです。それは流通を担う人たちの責任です。そうすれば消費者は納得します。 北出 生産者ももっと消費者に働きかけをしないといけないわけですね。 日和佐 現実を突きつけられた方がいいと思いますね。 北出 そのほかに、生産者団体として何が必要ですか。 日和佐 消費者ともっともっと交流をして欲しいですね。そのときのターゲットは、私は子どもだと思います。農業を体験して楽しさを知ると顔つきが変わり目が輝きます。給食を地産地消でやるのはとてもいいことです。そして給食の時間に生産者にきてもらって話をしてもらうと、子どもは変わります。そういうプログラムに農協が協力してくれるといいですね。 北出 農協組織は購買や販売だけではなくて、そういう方面にも事業の幅を広げていかなければいけないわけですね。
◆自給率向上は食生活を見直しお米中心の食事から
北出 輸入農産物の問題についてはどうお考えですか。 日和佐 いまの生産能力からいえば、一定、輸入に頼らざるを得ないわけですから、しかたがない部分があると思います。しかし、カロリーベースの自給率は一つの指標にすぎないと思います。自給率の高い野菜はカロリーが低いから、かなり食べてもカロリー自給率に貢献しません。そういう矛盾もあるので、自給率は多角的に見て、どう考えたらいいのかというような提案をした方がいいと思います。
◆問題をいち早くキャッチするために内部告発制度の導入を
日和佐 先駆的な全農安心システムを開発したり、表示問題が起きたときには全商品をチェックして公表され、ずいぶん変わってきていると思いますね。しかし、協同組合組織というのは、みんなで考え、みんなでやっていくという共有化が良いことである反面、甘さにつながったり意思決定が遅いという問題がありますね。
◆消費者基本法をキチンと受け止め考えて欲しい
日和佐 消費者基本法ができましたので、これをキチンと受け止めて欲しいと思います。従来は消費者保護基本法だったから「保護」が抜けました。保護基本法のときには、行政がルールを決めて事業者をコントロールするので消費者は安全ですという枠組みでした。それが、消費者には権利があります。消費者は自立してその権利を確立していけるように、消費者がまず頑張らなければダメですよ。行政や事業者は消費者の権利を尊重して、その権利が実現できるように援助していく責任があるという枠組みに変わりました。 北出 どうもありがとうございました。
(2005.1.11) |
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