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農業の新世紀を創る担い手たち |
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1.「担い手」議論の見事な取りまとめ
その際、農村の現場に大きな混乱をもたらすことがないよう、たとえ小規模の農家であっても、いわゆる排除の論理ではなく、あらゆる農家の意欲と活力を引き出す形で担い手づくりを進めていくことが重要であるとの基本認識。」 「本PTとしては、具体的にどのような担い手を対象にすれば望ましい農業構造の実現ができるのかという観点から、引き続き議論することとする。 また、新たな米政策の中で、地域水田農業ビジョンの推進を通じ、担い手の育成に努力しているところであるが、本PTとしては、小規模な農家は政策の対象外となり、切り捨てられるという不安の声があるが、これらの農家すべてに対して、集落営農に参画することにより担い手を目指すことについて門戸を開けておくこと、その場合、現在実施中の米政策改革の実施状況を踏まえ、適切な要件を定めることとするとの考え方の下に、農林水産省及び農業団体に対して、農地制度の見直しや運用面での改善を行い、担い手の育成にさらに徹底的に取り組むべきことを要請する。」 これが平成16年12月8日に取りまとめられた自民党経営対策PT(プロジェクトチーム)の途中経過報告の核心部分の文章である。まさに現段階での議論状況を見据え、的確な判断をくだした見事なとりまとめである。 農水省は食料・農業・農村政策審議会の企画部会や、自民党農業基本政策小委員会などの議論において、新たな品目横断的経営所得安定対策の対象経営は、認定農業者である個人・法人と特定農業団体に限定するとし、さらにこのうえに経営規模要件を一律に課し、その水準は米政策における担い手経営安定対策の要件である都府県4ha、北海道10ha、集落営農20haを上回るものが適当であり、平成27年には都府県の2年3作経営で14ha、集落営農で40haを展望できる水準でなければならないといった基本的考え方に固執し、繰り返し、繰り返し主張していた。 16年度からスタートした米の担い手経営安定対策の加入者は個別経営で約3万、集落営農で約200しかない実態や、田のある集落12万のうち水田面積10ha未満の集落が全体の約43%を占め、5万1000集落もある現実からみても、農水省の主張する考え方は実態をあえて無視し、何が何でも対象者を絞り込まなければならないという意図しか感じられないものである。
農水省が、担い手や経営所得安定対策は、産業政策としての農業という考え方で割り切る一方、農業・農村の多面的機能に着目した、新たな農村地域政策の構築が必要と言いながらいっこうに、その農村地域政策の具体的な内容を明示しないで、逃げ回り、農政転換の政策の全体像を見せない中で、この担い手要件だけに争点を絞り、ここだけ先にピン止めしておこうとする意図的な悪い思惑を持っているのでないかと感じ、JAグループは、現場実態に即した多様かつ幅広い担い手、地域が特定した担い手であるべきと、繰り返し、繰り返し主張し、反論してきた。 そして冒頭にあるような自民党のとりまとめである。両者の言い分や意図を真摯に受け止め、現場が今、何に取り組み、どうなっているのかを見据え、政策に責任を持つ与党としての、現局面における見事な取りまとめであるので、冒頭にあえて核心部分を出したわけである。
2.担い手づくり取り組み方針
担い手の高齢化と減少はJAグループにとって極めて深刻な事態であり、特に水田農業における担い手づくりは喫緊の課題である。 JAグループは平成16年5月に「地域水田農業ビジョン実践強化全国運動方針」を設定し、全力で取り組みをすすめているところであるが、今後、農地の利用集積の推進や、地域実態に即した担い手づくり対策の取り組みを、より一層推進して行くことが急務である。 認定農業者の数は18万、うち稲作中心が5万5000程度。農業生産法人の数は約7000、うち米麦主体の法人は1500程度。約1万集落で集落営農の取り組みが行なわれているが、うち協業経営を行っていると見られる集落は約1700程度である。こうした担い手の現状をふまえ、JA自らが地域農業の司令塔として担い手づくりに取り組まなければ、組織の将来はないという危機意識が必要である。 ◆担い手対策取り組み方針ポイントは7点。
(1)担い手づくり戦略の策定
3.中央会として指導の「基本方針」策定
初めての「基本方針」は17年3月の全中総会で決定することになっているが、三本柱を考え検討をすすめている。一つは「経済事業改革」二つは「JA経営の改善対策」そして三つは「水田農業における担い手づくり対策」である。 担い手基本方針は、県中・全中の共通認識のうえに立って、JAグループの全国運動の徹底した取り組みの決意を組織の内外に打ち出すとともに、その実効を期して取り組むものである。 指導に関する「基本的方向」としては、地域・集落等が自らの課題として農業・農村の将来像を描くことを基本に、集落営農等を含む担い手づくりや農地利用について、合意形成をはかる地域の主体的な取り組みを促進するとともに、これを支える行政などの関係機関と連携した下で、担い手づくり対策とJAによる事業支援対策の強化に取り組むとする。 「指導に関する実施方法」は、担い手取り組み方針の7つのポイントの内容を盛り込むことにしている。 米政策改革の推進と徹底した地域における担い手づくり対策は、これからの農政転換における新しい品目横断的経営所得対策の対象要件を設定する場合の、宿題にもなっている。 全中は平成17年1月早々にも、こうした担い手づくり対策の担当部署を明確にする組織機構の改定を実施する方向で検討をすすめている。 そして3月の全中総会での担い手対策の「基本方針」決定を経て、都道府県中央会と一体となって徹底した取り組みを展開して行くことになる。まさに組織の将来の命運をかけて取り組む重要な課題である。 |
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(2005.1.13) |
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