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そういう視点に立ってみると、ここに取り上げられている事例は、実に多様性に富んでいる。地域をとりまく自然条件や社会・経済的諸条件の違いだけでなく、地域の活力を生み出している人々がそれぞれ個性に充ちあふれた人材の集まりであるというところにある。活き活きとした農業と農村を創りあげるには、人材が必要であるということ、それに加えて閉ざされた農村ではなく、広く都市や他分野の人々との交流を含めた開かれた農村であること――こういう2つの大切なことをこの特集でとりあげた4つの地域の事例は教えてくれている。 私が数十回となく訪ねたのは三春町である。今から20年前に三春農民塾の塾長となり、その一期生から五期生の塾生たちが中心となって、「貝山プロジェクト21」を立ち上げ、耕作放棄地の解消とその有効活用の道を求めて活躍している。その活動方針の基本に、「農地は単に先祖から受け継いだ財産ではなく、まだ生まれてこない子孫から借り受けたものであるから良好な状態に維持して返さなければならない」という思想を高らかにうたっている。そのことを日本中の皆さんに知ってもらいたい。 世羅台地では個別経営から法人経営や集落営農に至るまで多様な農業生産者が結集するだけでなく、女性が主力となりより多くの所得と雇用の場を地域にもたらし、地域を丸ごと都市や消費者に売り込み、かつ交流の場を広げようと、地域農業の六次産業化を推進してきた。そのしなやかなネットワークがとりたてた観光名所もない世羅台地に年間120万人もの都市の人々を呼び込んでいる。世羅台地では、六次産業に取り組む女性たち――若い人からお年寄りまで――の活き活きとした顔が地域の活力を象徴している。 松本集落はイモリの形をしたイモリ谷と呼ばれる以外は、かつては何の変哲もない村だった。それが平成12年度から大変身する。営農組合の設立、大豆の徹底した集団転作、六次産業化の推進、アンテナショップやホームページの開設、異業種交流と定住希望者の都市からの受入れ。高齢者や女性の顔が輝くようになり朝市は盛況となる。集落の中堅としてのリーダーに荷宮英二君がいる。彼は私が塾長をしていた大分農業平成塾の二期生であった。 茨城の(有)T・K・Fは以上3つの事例とは異質である。木村誠さんという農業経営者への転身を熱望する都市出身の青年がベビーリーフ中心の農業へ新規参入し、有限会社にまで成長する過程と、それを多面的に支援してきた全農茨城県本部の支援・指導体制の苦心談を通して、これからの日本農業の担い手問題の一端を指し示している。 以上の新年を飾る4つの事例を通して、国、県、市町村の農政は何をなすべきか、またJAグループは何をなすべきか。わが国の農業と農村の明日の姿に大きな一石を投じているように思う。 |
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(2005.1.12) |
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