◆瀬戸際に追い込まれた韓国農業
変化する環境への対応が不足 → 変化すべき方向やビジョンに対するコンセンサスの不在 → 変化をリードする手段の脆弱 → 農業政策の効率性と効果性の不十分 → 農業競争力の低位。
これが今の韓国農業が抱えている問題点である。
このような危機をもたらした原因として三つの点が取り上げられる。
まず、輸入農産物の増加による国内市場の撹乱要因の増大である。1993年90.7%であった農産物輸入自由化率は2002年現在99%まで伸びた。市場開放で国内農産物と輸入農産物間の競争が激化しながら競争力の弱い国内農産物の被害が拡大している。これを裏付けるように1994〜2002年間の農業所得(名目)は年平均1.3%の増加に止まった。
次に、政府の農業投融資事業の効率性及び効果性の欠如である。過去10年間(1992〜2001)農林部門に投入された総投融資額は76兆7748億ウォンであった。しかし資金分配及び支援体系など政策資金の統合管理体系が不十分な中で事業進行過程の非効率とトラブルが発生した。
しかし何より大きな原因は、開放シナリオに対応するための政府及び農業者自らの変化が不十分だったことである。農業関係者たちは政府の農業投融資事業を「冷徹な経営事業」と認識するのではなく、貧しい農業者を助けるための「人気取り」の政策として認識した。したがって農業が市場で競争する新しい与件で一番重要なことは「競争することができるマインド」であるにもかかわらず、これに対する意識転換が不足した。
◆“0.5次プラス”による韓国農業のアップ-グレード
韓国の社会は市場開放の加速化、科学技術の発達、情報化社会、経済発展による消費パターンの変化、生活環境や暮らしの質を重視する新しい価値観の拡大が進行している。その流れの中で韓国農業に求められる役割と機能も多様化しつつある。このような時代を迎え韓国農業の自立性と競争力を回復するためになにをすべきか。
今、韓国では岐路に立った韓国農業を立ち直すために、農業に対する考え方を高めて新しい農業を始めようとしている。これは1次産業である農業に新しい分野を0.5次付け加えて1.5次産業に格上げさせるという動きである。
0.5次プラスというのは農業問題を農業の内部を超えて、1次産業である農業に他産業との融・複合化を通じて0.5次をつけ加え、農業の新しい可能性を創出することである。これは単純な生産という次元を超えて、農業・農村が持っている特有の文化要素及び伝統・風習などアメニティ資源(美・感・快・緑)も農業発展の要因として活用することである。また、関連産業との連携はもちろん芸術、文化分野とも連携して新しい市場を新たに創出しようということである。1次産業である農業と2・3次産業の融・複合及びデジタルの接木など与える機会を戦略的・実践的に活用して農産業の再跳躍を模索することを意味する。
◆農業の新しい“業の概念”
新しい事業機会の創出と絶え間ない革新誘発が‘0.5次プラス’のポイントであるが、そうするためには先ず、‘農産物=食べ物’という固定観念を超える新たな発想が必要である。農業が持っているこれまでの通念を超えて新しく農業の‘業の概念’を定義することである。すなわち、農業は単純に‘食べ物(eat)
’産業から‘面白さ(entertainment) ’が結合された‘食べて・面白い(eatertainment) ’産業に変わっているからである。その意味でこれからの農業の重要な一つの側面は‘Eat(食)
’に ’Entertainment(楽) ’をプラスした‘Eatertainment’産業になるかもしれない。
これは、農業に対する概念を今までのように‘Within Agriculture’ではなく、食品、製薬、流通、観光、レジャーなどを含んだ関連産業との連携はもちろん、芸術、文化などの分野をも取り入れて拡大することである。
既存のゲーム法則(政府依存)と固定観念を乗り越え、新しい市場を創出しないと今後の農業の生存と繁栄は不可能である。飛躍的革新の大部分は同種業界ではない外部で発生するからである。
◆競争力ある商品
韓国農業が新しい競争力をもつためには顧客の変化に富んだ多様な要求を素早く感知し、それを製品開発に反映できる体制を作ることが重要である。そのためには、農業者は日々発展している自然科学や社会科学、人文科学などの新しい知識体系を積極的に活用しなければならない。
新技術を開発して消費者の好みに合う新商品を生産し、マーケティング革新を通じて新しい市場を開拓することによって需要基盤の拡大ができるのである。価格よりは商品の差別性と多様性で高付加価値の農業を実現する時、初めて韓国農業の競争力とブランド価値が高められるのでる。消費者が喜んで買いたくなるほどの競争力ある農産物を生産する産業、これが21世紀の韓国農業に求められている新たな競争力である。
◆人の変化が核心
人の競争力が核心である。その人が韓国農業の変革者である。政府の支援一辺倒の政策も問題であるが変化に鈍感な農業者自身も問題であるからである。農業者自ら経営マインドと企業家精神、そして革新的力量をもって変化を引っ張って行かないといけないのである。農業者自らの革新する意志が前提されないと政府の支援もそれほど効果は出ない。政府の支援金と補助金を待つだけで農業の発展は期待できないからである。
韓国農業が新しい競争力を備えるために必要なものは、厳しい経済環境を克服していこうとする自らの姿勢である。意欲と能力を持った農業者がいないと‘競争力向上及び農業の価値極大化’を実現できない。自主的かつ積極的に絶え間なく研究し、新技術を取り入れ、いつも世界でトップに立つ商品を生産するというプロとしての精神をもたなければならない。「変化」と「競争力」これが今、韓国農業発展のキーワードである。
◆韓国農業の生態系の創出
これまで、農業の競争力は「合」の概念であった。土地、労働、資本などを足した場合、その大きさがどのくらいかによって競争力が決まっていた。しかし、これからの競争力は、このような固定的要素に、情報、アイディア、サービスなどの新しい知識が乗じられる「乗」の概念に変わりつつある。
今後の韓国農業は種々な他分野とのネットワークを通じて、韓国農業が持っている潜在的な経営資源を見つけ出し、新しい市場を作り出さなければならない。このような努力の結果、成功事例が拡散されるとき、はじめて韓国農業のブランド価値が上がり、21世紀にふさわしい韓国農業の生態系を創出することができるのである。
生産者が農業を職業として選択したくなるほどの魅力的な産業、かつ、消費者がその生産物を支持する産業、これが21世紀の韓国農業に求められているすばらしい農業のイメージである。
これが可能であれば農業は従来の斜陽産業や脆弱部門ではなく、高付加価値を創造する革新的産業部門として生まれ変わることができるのである。
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