JAグリーン近江の概要
・代表理事理事長:村地佐紀雄
・組合員数:正9763人、准1万563人
・購買品供給高:83億円
・販売高:119億4000万円
・貯金:1902億6000万円
・貸付金:455億2000万円
・長期共済保有高:1兆908億円
・年金共済保有高:63億9000万円
◆供給種子はJAが確認
|
大林茂松営農事業部長 |
JAグリーン近江は平成6年、滋賀県の東近江地域(2市7町)のうち、2市6町の9JAが合併し、県内最大規模の大型合併JAとして発足した。琵琶湖の北東に位置し、管内の水田面積は1万1479ヘクタールある。JAの集荷率は65〜70%で、毎年約3万トンがJAの取り扱い量だ。
JA米には16年産から取り組んだ。15年産から取り組んだ栽培履歴記帳は99%以上の実績だったが、生産者の種子更新率は70%を下回り課題となった。
「農家が種子更新をしやすい仕組みを考えている。管内にも採取ほ場はありますが、全体をまかなえる規模ではなく、種子更新100%の目標を達成するためには、ほ場の整備が必要。
ただ経済的な負担もあり、自家採取で栽培する生産者に対して、確認をどうするかという問題がある。DNA鑑定での確認をしているJAもあると聞いていますが、我々としてはJAから種子を買うなど、あくまでJAが直接確認できる形での更新をめざしたいと思っています。生産者が納得する形で、確実に種子更新100%に向けた方策を検討中です」と大林部長。生産者とJAが協力しながら種子更新100%達成をめざしているという。
17年の見込みは、JAが直接確認できる形での更新を基本としていることから、まだ100%達成とはいかない。自家採取で栽培する生産者にも、JAから種子を買うことなどに理解を求めたいとしている。
◆管内は標高90―400m
管内の水田は琵琶湖に近い「湖辺地帯」、東側の「山間地帯」、その間の「中間地帯」に分けられる。3つの地帯は標高90m〜400mと差があり、それぞれの地形や気象に合った米づくりを行ってきた。
それぞれの条件を生かした生産
湖辺地帯は、大中の湖干拓地を中心とした肥沃な土壌だが、琵琶湖に近いため登熟期の夜間の高温など気象条件により品質的には多少難がある。しかし、管内生産量の47%を生産しているため、低コストの米づくりを進め確実な販売を睨んだ栽培技術の統一をめざす。
一方、山間地帯は、粘土質土壌と冷涼な気象条件で、反収は比較的低い水準にあるが、品質や食味については高い評価を得ている。管内生産量の21%を生産。施肥・防除基準の統一と、地元生協の産地指定を生かしながらカントリーを中心とした大ロットの需要に応えられることをめざす。
また、中間地帯は、反収、品質など2つの地帯の中間的な状況にあり、管内生産量の32%を生産。環境にこだわり、安全・安心な米づくりをめざす。
「特徴を持った3つの地帯で生産された米なのにこれまでは、JAグリーン近江の米として一括して販売してきた。
しかし、それぞれの地帯で生産した米は、それぞれの特徴が生きるような個別の売り方をするべきと考え、販売目標に応じた栽培ガイドラインをそれぞれ設定しています。もともと違う米が取れていたのに、一緒にして売っていたことに問題があったので、本来の形をめざすということ。実需者や消費者のニーズも多様化しており、我々もそれに合わせて生産することが求められていると思います」と大林部長は語る。
JAグリーン近江の売れる米づくりに向けた戦略は、こうした地域条件に合わせて生産する米をまずはJA米とすることが基本だが、さらにトレーサビリティシステムを付加した「とれさ米」の取り組みを管内一円で広く進めている。また、農薬の使用量を減らして上質な米を生産する(超)環境こだわり栽培米『ヒノヒカリ』を、湖辺地帯の大中の干拓地地域で生産している。
生産情報を積極的に公開 攻めの姿勢で信頼を確立
◆インターネットで履歴確認できる仕組み
「とれさ米」とは、JA米の用件に生産情報の公開を付加したものだ。
JAが、種子購入データ、肥料・農薬購入データ、農産物検査データ、作付面積データ、作業工程データなど生産者からのデータを蓄積・一元管理する。そしてすでに構築されているトレーサビリティ対応システムにより、その情報に検査情報、入出庫情報、精米・袋詰情報など倉庫や精米工場からの情報を加え、インターネット上で総合データベース化する。
消費者はインターネットを通じて欲しい情報を入手することが可能で、生産者から消費者に届くまでの流れが確認できる。 今年3月、管内8基目となる新しいカントリーエレベーター(CE)が完成した。このCEは「環境こだわりCE」と名付けられ、JAが推進している『とれさ米』のみを受け入れる。本格的運用は17年産から。売れる米づくりに向けて、「とれさ米」の生産比率を高めることと、消費者にいかにアピールするかが今後の課題だ。
◆(超)環境こだわり栽培米『ヒノヒカリ』は特許出願中
同JAではこうした地域の特性、生産者の創意工夫を生かした米づくりを実践しているが、近年『カメムシ』被害の増加が問題となっている。
1等米生産のためには化学農薬の使用は必須の条件になっているが、農薬使用は「安心・安全」面で問題があるため、できる限り使用量を減らし上質な米を生産する技術を、以前から滋賀県と共同で開発してきた。
滋賀県農業総合センター(現農業技術振興センター)が開発した新技術「畦畔2回草刈技術」と「額縁別収穫技術」がそれで、JAがカントリーに導入した色彩選別機利用技術を加えた3技術をシステムとして運用して生産しているのが(超)環境こだわり栽培米『ヒノヒカリ』だ。
カメムシは水田周辺のイネ科の雑草に生息しているため、時期を決めて2回、畦畔などの草刈りを行うことで、カメムシの密度を減少させ、水田への飛び込み数を減らすことができる。また、カメムシが水田に飛び込む場合、ほとんど縁部分にしか飛び込まないことが分かっているため、カメムシ被害が予想される縁部分と、被害がないと予想される中央部を分けて収穫し別々に保管することで、中央部の米は1等に格付けされる可能性が高くなる。これらが「畦畔2回草刈技術」と「額縁別収穫技術」。加えてカメムシ被害が予想される縁部分を、JAの色彩選別機利用技術を用いて処理することで、効率的で効果的な選別が行えるというシステムだ。
現在、この技術で米を生産しているのは湖辺地帯の大中の干拓地地域で、ほ場面積の平均が1〜1.5haと大規模で、技術導入に最適の条件を備えている。(超)環境こだわり栽培米『ヒノヒカリ』は特許出願中で、生産者の利益を守ると同時に、「安全・安心」を全面に押しだし、JAの“売り”として消費者にアピールし、販売拡大をめざす。
「売れる米のために、生産者はまじめに取り組んでいる。我々の仕事は、生産者の思いを伝えることだと思っています。生産と消費の現場が離れすぎているのが問題で、もっと近づける努力・工夫が必要。食の問題は生産者だけの問題ではなく、みんなが同じ土俵で語り合えます。そのために、我々は多くの情報をもっと積極的に提供したいと思っています」と、大林部長は話している。
|
JAグリーン近江の本店 |
|