◆JAの米集荷率は90%
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小舘長純
二子中央営農組合長 |
JAきたかみ管内の水田面積は5800ha、16年産の作付け面積は3800ha。17年産も前年度と同規模の作付けとなった。作付け品種の90%以上が「ひとめぼれ」で、その他は「ササニシキ」「あきたこまち」などとなっている。16年産の生産量は1万6000トン(作況指数102)で、JAの集荷率は約90%と全国平均に比べかなり高くなっている。JA集荷分以外はほとんどが自家消費で、業者による集荷はわずかだ。管内は北上平野の中央部に位置し、海抜50m〜100mで、米づくりの自然条件、地域的な違いはほとんど見られない。
JA米の取り組みは、16年度ですでに100%実施となった。以前から、栽培履歴記帳などを行う生産基準や、種子更新100%目標の品質基準をJA独自に設定していたこともあり、JA米の要件をクリアしていた生産者はもともと多かった。
17年度以降も引き続き、100%JA米の達成に取り組む。安全・安心に向けた取り組みのなかでは、JA米の取り組みはあたりまえで、それに“美味しい”などの付加価値をどのくらい付けられるか、今後取り組むべき課題だとしている。
◆消費者に良い米を届けるのがJAの役目
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元氣館内に積まれたフレコン |
販売力の強化に向け、同JAは平成11年9月に、米品質向上物流合理化施設“元氣館”を新築した。4800トン収容の全自動ラック式フレコン倉庫で、コンピューター制御によって完全自動化され、人が倉庫内に入る必要がない。なによりも清潔感に溢れている。
元氣館の内部は、パレットを乗せる棚が15〜16段に積み上がり、5〜6階建てビルに相当する高さだ。棚は4列で、スタッカークレーン2台が棚の間を移動してパレットを搬入出する。「先入れ先出しが確実に行えるようになりました。移動は庫外にある操作盤からの指示で、スタッカークレーンと自動搬送台車が行うので、人手が節約できます。また、フレコンごとに品種、食味、等級などを管理し、とても効率的。常に最適の状態を保って、消費者に良いお米を届けるのがJAの役目だと考えています」と、担当者は語る。管内の米の約3割は、元氣館に集約できる。
管内産は「きたかみ米」としてブランド確立めざす
◆管内生産米は「きたかみ米」で統一して販売
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本所に隣接する直売所
「あぜみち」 |
JAきたかみは、管内で生産された米はすべて「きたかみ米」として統一して売っていくことを方針としている。
「きたかみ米」としてのブランド力を高めるため、独自の生産基準と品質基準、栽培方法を定め、安全・安心にこだわった米づくりを行ってきた。
生産基準は、▽堆厩肥10aあたり1200kg、▽有機質入り肥料、▽JA指定薬剤で統一した農薬、▽ほ場一筆単位の栽培登録、となっている。
一方、品質基準は、種子更新100%、整粒歩合80%、1等米など。また、栽培方法は特別栽培(減農薬減化学肥料)、基本栽培(農薬使用10成分、化学合成肥料50%削減)、一般栽培(種子生産ほ場やほ場条件等により特別栽培、基本栽培ができないところで適用)の三つの方法に分けている。
16年実績では、特別栽培は498ha(274戸)、基本栽培は2153ha(1912戸)、一般栽培は1127ha(1170戸)だった。17年度は、特別栽培580ha(279戸)、基本栽培3000ha(3300戸)、一般栽培200ha(150戸)の計画。一般栽培から基本栽培へと移行する農家が1100戸程増えているように、この間、安全・安心への認識が浸透した。
◆生産者を地区ごとに組織化 指導的役割を果たすグループも
管内には約4000戸の生産農家がある。JAは生産者を集めて各地区ごとに“指導会”を組織し、JAからの伝達事項、地区内の懇談会など年に5〜6回の会合を持っている。その他に、米づくりを中心とした生産グループがある。JAはそれら営農の中心的役割を果たす指導会や生産グループを通じて、JA米づくりに向けた意思の統一などを図っている。
JAが生産者として指導的役割を期待しているのが、生産グループの一つ「二子中央営農組合」である。組合員45名で構成され、平成13年度に設立された。集落内の高齢化や後継者不足などで米作りができなくなった生産者から委託されたものを含め約70haのほ場で米づくりなどを行っている。しかし、米価の低迷から、米づくりだけでは望む所得が確保できないため、転用作物(さと芋など)の計画的な生産に取り組むことにした。70haのほ場を1年ごとにローテーションしながら米、さと芋などを生産し、特にさと芋は、『二子さといも』の名で、地域で高い評価を得ており、評判を聞いて問い合わせも多いという。「米の値段が上がらない。さらに減反で、なんとか収入を得る道を探ろうと、試行錯誤でやってきました。作業配分や収入配分はみんなで話し合い、納得づくで決めている。組合員以外からの委託も含め、大きな土地が確保できたことと、組合員の労働力を無駄なく配分できたこと、などから効率の良い経営を行うことができ、将来の見通しも立てられるようになりました」と、小舘長純組合長は語る。
他の生産者グループも大なり小なり同じような試みをしているが、なかなか収入の増大には結びつかないなか、同組合の今後の動向は他の生産者グループの模範となるだろう。
◆JA直売比率を高め、生産者手取りを多く
すでに撤退しているが10年程前、JAきたかみは独自に東京に連絡事務所を置き、米の販売活動を行っていたことがある。現在、JAと直接取引がある関東地方の小売りや卸などは、当時の営業活動の成果で、その後も取引が継続している。
JA集荷分1万6000トンのうち、7〜8割が全農県本部委託分だが、残り2〜3割がJA直売分となっている。「直売分は卸中心の取引です。直売比率を上げたいと思っていますが、結局は、品質の良いもの、安くて美味しいお米が欲しい、ということです。これにどう対応するかが求められている。食味計で生産者ごとに食味値を測定し、美味い米作りを進めていますが、正直言ってこれだという決め手がないのが現状。量販店や卸の人と話をしますが、―こういう規格で、このくらいの価格の米が作れますか。作れるのだったらうちで引き受けます―といわれる。こちらの努力はなかなか報われない。最後は価格の話になる。レストランなどの業務用や一部の卸には、『きたかみ米』にこだわってくれる人がいますが、量的にはまだまだ僅かです」。
米穀営農部米穀流通課の伊藤喜信氏はこう語る。米価の低迷が続く中、直売等生産者の手取りを少しでも増やす試みを続けているが、それが、いたずらに産地間競争を激化させ、価格の更なる低迷を招くようなことは避けたいという思いもあり、関係者の胸中は複雑だ。
◆県産米は『いわて純情米』として出荷
岩手県は県産米について、JA米の要件を満たしたものを『いわて純情米』として、全国の消費者に届けている。JA全農岩手県本部は県内18JAの米づくりを支援する立場から、生産目標数量をベースにして需要動向を考慮した17年度の販売計画を、JAの担当者と協議し策定した。「ひとめぼれ」「あきたこまち」「いわてっこ」など主食うるちで18万2800トン、16年度実績とほぼ同量の集荷販売計画を策定した。
県内の米の生産量は32万トン、うち約6割にあたる20万トンが全農集荷分となっている(16年度実績)。集荷率を高めることが、『いわて純情米』を消費者にアピールするために必要だとの認識で、県本部は今後も集荷率向上に全力をあげる。なお、米価の価格低迷が続く中、特別栽培米(減農薬+減化学肥料)の18年度以降の取り扱いをどうするか、今後の検討課題となっている。
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JAきたかみの概況
・組合員数:7364人
(正:5281人、准:2083人)
・職員:276人
・水田:5754ha
・普通畑:1311ha(果樹地含)
・草地:248ha(放牧地含)
・総販売額:65億3000万円(16年度) |
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