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JA米事業改革の現場から |
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◆「100万俵」集荷を目標に JA山形おきたまは、米沢、長井、南陽の3市と白鷹、高畠、川西、小国、飯豊の5町を管内とした県南部の広域合併JAである。正組合員数は約2万4000人、准組合員数は約8700人を数える。 ◆消費地の声を産地に浸透させる
当初は、やはり生産者から栽培履歴記帳運動が必要なことへの疑問や、手間がかかることなどへの不満もあり回収率は低かったという。しかし、集落座談会などで「消費地で安全、安心への関心が高まっている」ことを周知徹底させた結果、記帳運動は広がり回収率も向上した。そのうえで16年からJA米への取り組みをスタートさせることになった。 「消費地の声が徐々に産地に浸透し生産者の意識が変わってくるなかでJA米への取り組みが始まった、ということだと思います」と生産販売部米穀販売課の成田尚課長は話す。 17年産ではJA米の要件は99%以上を満たす結果となった。JA米として扱えなかったわずかな量はいずれも種子更新が確認できなかったケースだという。 ◆販売計画と連動したJA米の取り組み 18年産では100万俵(6万トン)の集荷目標のうち、主力品種のはえぬきが3万9900トンと66.5%を占める。ただ、コシヒカリや新形質米など(ミルキークイーンなど)の固定需要もあるため、JAではそれらの生産増も目標にしている。たとえば、コシヒカリは17年産では1万トンあまりが目標だったが18年産では1万2000トンをめざす。 ◆トレーサビリティシステムと安全自主検査体制
JAが生産者に配付している栽培管理記録簿は、栽培暦とセットになったA4版の一冊の冊子になっている。(写真) ◆記帳が生産者の意識高める
ひとつは栽培暦の見直しだという。全国的にもカメムシ被害粒が多くなっていることが指摘されているが、同JAでも品種によってカメムシ被害に差がみられ、17年産では主力品種であるはえぬきの1等米比率が前年より10%程度も低下したという。こうした点をふまえて発生状況を検証し、品種別にカメムシ対策を栽培暦に盛り込んでいくことを検討している。 もうひとつはコンタミ対策と異物混入防止対策。複数の品種を作付けしている生産者がほとんどのため、品種切り替え時の乾燥機の清掃、点検などをきちんと実施したかどうかを栽培管理記録簿に追加することも検討している。 「生産者には負担が増えるとの受け止め方があるかもしれないが、このレベルまでの栽培管理が産地に求められているということを、記帳することによって意識してもらうことが重要だと考えています」(成田課長)。 ◆実需者との交流で作付けを誘導 こうした高い評価を消費地に発信して産地指定率の向上につなげていく役割を果たしているのが、15年4月に開設した東京営業所だ。この営業所などを拠点とした販売促進活動を展開してきた結果、16年産米の実績では集荷量の約70%を量販店、コンビニ、業務用などと結びついた固定需要が占めるようになった。 毎年、3月には主要米卸業者と産地交流会を開くほか、米生産者代表も参加する消費地での研修会も実施している。はえぬきの認知度については一般消費者にはなかなか浸透していないが、実需者からは高く評価されている「さめてもおいしく業務用にも十分適した、玄人受けする米」であることを、こうした交流の場で知ることにもなる。 また、JAではカントリー・エレベーターなど施設・サイロ単位での実需者との特定契約を結ぶことに力を入れ、これを施設利用率の向上にも結びつけたいとする。「組合員に一方的に施設利用を呼びかけるのではなく、施設で集荷したもの対して需要があり均一的な良質米としてきちんと販売できる、というメリットを示して理解してもらうことが施設稼働率の向上にもつながる」と成田課長は話す。 そうしたメリットを示しながら、食味値、整粒歩合などといった品質のさらなる向上を実現していくことを課題としている。 「生産者にとって自分で作った米がどこに売られ、どういう人が買い、どのような評価をされているか、情報が不足している。固定需要を確保することによって顔が見えてくると、生産者の意識も変わってくる。我々職員もその意識をもって今後、伝えていかなければならない」。恵まれた自然条件、地域の知名度、100万俵という生産量を生かし管内全地域が産地指定を得ることをめざしている。 |
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(2006.3.7) |
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