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シリーズ・どっこい生きてるニッポンの農人(1) |
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◆経営として成り立つ農業
出身は東京都板橋区。農業には無縁の環境だったが31歳のときに新規就農で始めた。大学を卒業後、塾講師などの仕事をしながら生活していた木村さんは20代の後半につくば市を拠点にする土壌改良剤の製造会社に勤務、そこでセールスのために出向いた有機栽培に取り組む生産者と知り合ったことが農業経営を志すきっかけになった。 「自分も勉強しながら土づくりの指導をしてました。みなさん農業はおもしろいというし、野菜を食べさせてもらうと非常にうまい。しかし、経営は厳しい、成り立たないという。どこかおかしくはないか、経営として成り立つ農業ができるはずと考えました」。 めざしたのは、経営として成り立つ農業と作物づくりは無農薬、無化学肥料にこだわること。生産者との付き合いから出会ったカット野菜を扱う東京都内の業者に聞くと、業界では国産のベビーリーフを供給したいという動きがあることを知った。外食産業はもちろん量販店でもサラダ人気の高まりからベビーリーフ需要は高まっていたが、当時は多くを輸入に頼っていたのだ。
営農を始めたのは平成10年の4月。30アール作付けした。最初は1種類の野菜だけを妻と2人で栽培した。初出荷を迎えたのは6月だった。 ところが想定したような量は収穫できない。 「海外で研修したといっても日本では役に立たないことが分かった。1日30kgの出荷を約束していたのに、半日、幼葉を摘み取っても5kgにしかなってなくて愕然としました。それでも約束は約束。一日中収穫して夜になって出荷先の業者にようやく届けたことを思い出します」。 知り合った生産者にも声をかけて出荷量の確保を図ったのだが、求められた量の確保に根を上げる生産者が半分出た。かれらも有機栽培に長く取り組んできたのだが、ベビーリーフづくりはまったく新しい試みなのだということが身にしみた。 収穫量を上げるにはまず発芽率が高くなければならないし、作付け面積は決まっている以上いかに密植させられるかも重要になる。そしてなによりも「約束した出荷量は毎日確保する」ことが求められる。 「今日は雨だったので収穫を休みました、雪で収穫できませんでした、では契約はストップしてしまいます」。 木村さんがもっとも重視したのがこの約束どおりの出荷だ。「逆に言えば売り先が決まっていないものは作付けしていないということです」。これが経営として成り立つ農業の基盤だと考えてきた。
出荷を安定させるには栽培面積の拡大が必要だと2年目からは借地で作付け農地を増やしていった。ベビーリーフづくりでは幼葉の摘み取りが終わればすぐに耕してまた新たな種をまく。しかし、冬の間はハウスでも発芽まで時間がかかる。そのためほ場の拡大で補うしかなくなる。
平成16年3月には有限会社T.K.Fとなった。そして7月には地元JAの推薦をバックにJA全農茨城県本部が出資を決めた。
今後の課題は、出荷のための時間ではなく野菜づくりがきちんとできるようほ場管理に時間を取ることや良質のたい肥を土に入れることなど。また、経営面では種子代や包装資材費などの抑制だ。こうした課題についてはJA全農茨城県本部との連携が徐々に進んでいる。 |
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(2005.1.12) |
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