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生協との事業提携と全農の役割 |
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全農グループの直販事業は昨年度で8300億円強あり、販売実績に占める割合は、全体で22%、全国本部とその関連会社では29%になる。そのうちの35%が生協関係だ。個々の取り引きによってそのあり方はさまざまだが、生協とは同じ協同組合として、共同事業あるいは事業提携とよぶのにふさわしい関係が生まれてきている。その中には地域循環型農業を確立するような事例もみられるようになってきた。そこで、このシリーズではそうした事例を紹介しながら全農が「生産者と消費者の懸け橋」機能を発揮するために何が大事なのかを考えていきたい。 第1回は、生活クラブ連合会との、食料の国内自給の視点から多国籍企業に支配されている「種」にこだわり、生産性が低くコストも高いが、国内で育種改良などができるなど、自らコントロールできる「国産鶏種はりま」の取り組みを取材した。 |
◆外国鶏種が98%占めるブロイラー 私たちの食卓に上がる鶏肉のほとんどはブロイラー(孵化後3ヶ月齢未満の肉専用若鶏)だ。その鶏種は日本の場合、チャンキーが63.7%、コッブが34.3%と98%がこの2つの鶏種で占められている。世界的に見てもチャンキー38%、コッブ40%と約8割がこの2鶏種となっている。こうした外国の鶏種でも国内で生産されれば「国産鶏」と表示され販売されているが、実際にはチャンキーのロス・ブリーダー社(英国)とコッブのコッブ・バンドレス社(米国・英国)という海外育種会社がブロイラー生産を独占的に支配しているというのが実態だ。 ◆01年から始まった本格的な取り組み 鶏肉の共同購入は生活クラブの主要品目のなかでも「開発が一番遅れていた」と加藤好一生活クラブ連合会専務。90年1月に鶏肉専用種を開発することを決めたが、NON−GMO(非遺伝子組み換え)飼料の使用、無投薬飼育など、当時のブロイラー業界では考えられない厳しい条件がつけられていたため、なかなか進まなかったが、「94年に群馬農協チキンフーズと出会い」チャンキー種でのブロイラー事業が始まる。しかし「国産という以上は鶏種まで国産にしたい」ということで、国産鶏種探しがはじまる。そして、家畜改良センター兵庫牧場で育種改良された「はりま」と出会う。 (図)国産鶏種「はりま」が出来るまで!(.pdfファイル 764KB) ◆密飼いしないなど厳しい飼育条件 真正面から受け止めた生産者 「はりま」の取り組みの厳しさはそれだけではない。基本的な飼育条件は、飼料はNON−GMO、全期間無投薬に加えてできるだけ自然な飼育をするために密飼いをしない。つまり開放鶏舎で坪当たり35羽以内(チャンキー、コッブの一般ブロイラーは50羽前後)。さらに、一般ブロイラーの育成率99%に対して「はりま」は90%と飼育期間中のへい死率が9%も高いこと。2.9kgの生鳥体重に一般ブロイラーは50日前後だが「はりま」は60日前後かかる。またその間に与える飼料総量も一般ブロイラーより約35%多いなど、鶏舎の回転率と飼料給餌総量から生産費は約40%高くなる。さらに、群馬農協チキンの鶏肉処理場では、一般ブロイラーの混入を避けるために徹底した分別管理をしなくてはならないので、ここでも生産性が悪くなる。 (図)はりま事業における事業管理体制(.xlsファイル(Excel) 27KB) ◆関係者全員で“あるべき姿”を追求 加藤専務は「全農グループの存在がなければこの取り組みは維持できない」と言い切る。現在の「はりま」の体制は図のようになっているが、この体制ができたのは02年に起きた「全農チキンフーズ事件」がきっかけだったという。生活クラブに大きな損害はなかったが、「はりま」の提携先である会社が起こしたということで「組織内には衝撃が走り、そういうところと提携を続けるのかという意見が組織内にあった」だが「全農グループの機能がなければこの事業はできない」という判断もあったと加藤専務。 ◆生活クラブの共同購入の集大成 事業のあり方を考える核になる取り組み 生活クラブにとって、ブロイラー事業は後発だったが「私たちの共同購入の集大成」だと加藤専務はいう。そして「青果物でも全農グループが持っている機能が重要だと考えているし、豚肉や肉牛そして乳牛でも“はりま”をモデルにした仕組みができないか」と検討しているという。そして「はりま」で成しえたことは「一生協の力だけでは成しえなかった。全農は共同購入の理念や政策にあった重要なパートナーであり、日本農業を考えるときに、全農が持っているあるいは潜在的にあるであろう役割・機能は相当なものがある」と評価する。
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(2005.10.4) |
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