農業協同組合新聞 JACOM
   

生協との事業提携と全農の役割

生産者と消費者を結ぶ懸け橋に
第3回 コープネット事業連合

新鮮で美味しい青果物を提供し続けるために


 安全・安心は食べ物である以上、当たり前のことで、これからのキーワードは「新鮮・健康・美味しさ」だといわれている。野菜や果実でそれを実現するためには産地から食卓まで温度管理されたコールドチェーンの実現が必要だともいわれている。全農首都圏青果センター東京は、いち早くそれを実現した施設として注目されている。そして、その機能をもっとも活用しているのが、生協連合会のコープネット事業連合だといえる。長い間、全農との提携を担当してきている深澤米男コープネット農産部長に、これまでの取り組みとこれからの期待を中心に聞いた。

◆全農の商品調達力に期待し30年余の関係が

深澤米男農産部長
深澤米男農産部長
 全農の青果物直販事業の拠点施設である首都圏青果センター東京(以下センター)の年間販売高は647億円(17年度計画)。そのうちの47%強が生協・Aコープとの取り引きだ。そして生協の取り引きの中心は、コープネット事業連合と生活クラブ生協連だ。
 コープネットとの取り引きは、センターが昭和43年に全販連東京生鮮食品集配センターとして設立された2年後の昭和45年の都民生協、その2年後に東京生協(両生協が合併しコープとうきょうに)がセンター内に事務所を設置してからと長い歴史がある。
 当時の生協はまだ鮮度管理や商品調達力が弱かったこと。産直も適地(季)適作ではなく、生協組合員などの紹介で付合いが始まった地域で採れるものを「顔が見える・履歴が分かる」ということだけで、すべて「産直」として仕入れるなど「一極集中していたので、時期がくるとまったく商品がなくなる」という事態になった。しかし、共同購入では事前に注文をしていることを前提に、組合員は今日は何を作ろう・食べようと決めているのに、その食材が届かない(欠品)ことは許されないことだ。こうした「欠品を絶対に起こさない」これが「全農と付き合うキッカケになった」と深澤部長は振り返る。
 現在、センターは全国約400JAから生鮮野菜や果実が入ってきているが、そうした商品調達力が評価されたわけだ。
 コープネットの農産商品政策の基本的な考え方は、「ごく普通の消費生活をおくるために、必要に応じて“より良い商品を少しでも安く”提供し組合員のふだんの暮らしに役立つこと」だ。そのために「全農の強いところはやってもらうが、全農の弱いところは他のパートナーとやる」という。果実では、リンゴは全農だが愛媛のミカンは仲卸からというようにだ。

◆10年以上前からトレーサビリティを 全農の協力を評価

 深澤さんは平成3年にコープとうきょうの農産部長に就任(11年にコープとうきょうはコープネットに加入)するが、まず取り組んだのが「産直だからといって安全でおいしくとはいえない」ということから、残留農薬検査を売上げの0.1%の経費をかけて始める。そのために、東京農大や理科大に聴講生として通い農薬の正しい知識を学ぶことから始めた。そして、農薬が残留するのは、散布機のノズルに問題があるとか、ドリフト(飛散)、あるいは畝ごとに別の作物を植えつけていることなど「原因を知ることで、その対応ができる」と考え、産地に対策を提案していく。
 その一環として「栽培記録を書いてもらう」こともあった。ただ、「徹底はしなかったが、事故を起こした産地には必ずやってもらう」ことにした。それを継続することで「コープとうきょうから継続している産地では、ここ5〜6年事故はない」という。
 履歴記帳のフォーマットも生産者が記帳しやすいような工夫をした。それは品目別にその年の計画で使っていい農薬名と原体名を並べ、その横に使用できる回数、収穫何日前まで使用可能か、希釈倍数を明記。そして使用日を記入する枠を設けたが、使用回数3回の農薬の場合、4回以降は記入できないように黒く塗り潰した。これはJA全中の提案した記帳フォーマットの原型ともなっている。
 こうした提案は、全農や仲卸を通じて産地に伝えられるが、「全農は生産部会にまで入って生産者に説明し、時間はかかったが産地の取り組みを変えてくれました」と評価する。90年代半ばからすでにトレーサビリティに取り組んできており、全農もそこで一定の役割を果たしてきていたということになる。

◆生産方法は生産者の自己責任で

 深澤部長は「野生の植物を人間が食べるために品種改良してきたのだから、弱いのは当たり前。野菜などが病害虫に犯されたときに農薬を使うのは、人間が病気になったときに薬を服用するのと同じだ。人が食べるための最終商品に農薬が残らないようにする」ことだと考えている。ただ、発がん性が強かったり、残効性が長いジチカーバメート系農薬や有機塩素系農薬など13の農薬については、使用実態を把握するために使用の報告義務がある「管理農薬」としている。
 そして「同じ作物でも、土地によってもっとも適した栽培方法は異なり、そのことはプロである生産者が一番よく知っている」から作柄とか生産方法についてはいっさい口をはさまず、生産者の自己責任に任せることにしている。そうでないとムリがでて、隠れて農薬を使ったりすることになるからだ。さらに「農薬に一番“被爆”しているのは生産者だから、生産者がそのことを自覚することで農薬は減らしていける」と、安全性は消費者のためだけではなく、生産者自らの問題だと強調する。

◆関係を強めた包装加工センターの運営

 センターとの関係を強めてきたもう一つの要因として、包装加工センターの運営がある。
 包装加工センターは都民生協時代に始まるが、共同購入の取扱量が拡大するとともに拡大し、平成11年には川口に、入り口と出口を別にした「ワンウエイコントロール」、温度管理ができる施設を設置。さらに15年に茨城・石岡に北関東への供給拠点として石岡センターを設置。さらに今年4月には全農千葉県本部と提携して柏にセンターを設置する予定になっているなど、全農との協力関係が一段と強まってきている。
 深澤部長は店舗も含めて「集中させるメイン施設は、集荷する産地が確認でき、入荷から出荷まで保冷管理され、加工・分荷」でき、「24時間荷受けできる」全農首都圏青果センター東京の機能を高く評価している。
 それは、産地が冷蔵庫や予冷庫で保管し保冷車で運送しても、温度管理がされていない市場に置かれたり、センターで冷蔵庫などで保管しても分荷段階での温度管理がされず、商品が劣化しクレームになることが多かったからだ。

◆旬の野菜の鮮度・品質・美味しさを安定化させる

 全農首都圏青果センター東京の岩城場長は温度管理がキチンとされなければ、美味しさが失われるだけではなく栄養価も逃げると指摘する。例えばほうれん草のビタミンCは10℃で2日経つと30%減少するが、3℃なら20%減に抑えられるという。だからセンターのシステムは「栄養価があって、食べて美味しい野菜を届けられるシステム」だという。
 コープネットは、野菜や果実の「旬・最盛期の商品を提供する」ことにこだわっている。それは、「旬の野菜は病気などに強く農薬などをあまり使わなくていい」ことを経験から学んだことと「美味しいから」だと深澤部長。その鮮度・品質・食味を安定化して提供するには、収穫から食卓までコールドチェーンが完結している必要があるからだ。
 これからのキーワードは、安全は当たり前で「健康と美味しさ」ということだ。それを実現できるセンターとの関係はますます強くなっていくといえる。

◆全量を集荷しロスの少ない多角的な活用を

 これからの全農やセンターに期待するのは、一つは、現在、全農茨城県本部のVFと提携して進めている休耕地を借りて、ほうれん草や小松菜などの生産コストは従来より3分の1落とし、収量を増やして農家手取りを確保するというような取り組みを全農が組織的に取り組んで欲しいということ。
 そして、産地で生産された全量を引き取り、生鮮の規格から外れるものを加工や業務用にするなど、生産された野菜などをロスなく多角的に活用することで、地域に仕事を創出できるし、生鮮のコストを下げることができるのではないか。センターが株式会社になるのだから、「今以上に産地と我々のニーズのコーディネートができる」ようになって欲しいという。

(2006.3.23)


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