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風向計 |
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◆温室栽培に先端技術
――泉谷さんが昨年書かれた「電子材料王国ニッポンの逆襲」という本は読者を元気づけています。農業と関わる最先端技術の話題もあるかと思いますが、いかがですか。 「一例としては温室栽培での発光ダイオード利用があります。作物にその光を当てると成長速度が非常に早まるといいます。最初は観葉植物で実験に成功し、今は何軒かの農家が他の作物で試みています」 ――交通信号機に使われ始めていますね。 「そうです。LEDは電力消費が少なくてすみ、蛍光灯よりも寿命がぐんと長いため、家庭用照明でも今後10年ほどで蛍光灯に取って代わるだろうという見込みも出ています」 ――でも値段が高いのでは? 「いえ安いものは1個2、3円くらいですよ。秋葉原で売っています。代表的な半導体物質はシリコン(珪素)ですが、今日ではシリコンウエハに電子回路を焼き付けた製品も半導体と呼ばれています」 ――半導体メーカーは苦境から抜け出せないけれど、電子材料の分野では日本の重化学工業が“逆襲”に出て、世界シェアの6割、7割を取ってしまう製品を次々に出しているとのことですが、電子材料にはどんなものがあるのですか。 「半導体の材料で一番の主役はシリコンウエハ(チップ)です。素材のほかに製造工程で使う材料も多く、クリーン度の高い超純水なども含まれます」 ◆開発は長い目で見て 「製造装置のメーカーも含めると半導体生産に関わる企業は約3000社にのぼります」 ――裾野が広いですね。 「自動車の数百社に比べ、大きく差をつけていますね。半導体が高付加価値産業といわれるゆえんです」 ――ところが日本の半導体は台湾、韓国に追い越され、米国に巻き返されました。 「1989年には世界シェアの53%を握っていた日本ですが、今は22%程度に凋落しています」 ――結局、電子材料は日本から買うことになりますね。ところで米国企業の風土についてはいかがですか。 「これはもう分秒刻みでマネートレード、マネーゲームを展開している感じで、ものづくりには余り向いていません。金融、証券、軍事だけで生きているような国ですね。じっくりとものをつくる性向は、あえていえば独仏など欧州に見られます。農業をベースとしたカルチャーを残しているのですよ」 ――次にニッポンの“逆襲”の先陣を切るプレーヤーたちについてお話下さい。 「電機業界からではなく、素材産業からプレーヤーが出てきたということが重要です。化学、鉄鋼、非鉄金属、繊維などの各社は早くから10年20年の先行きを見てエレクトロニクスに着目し、新しい電子材料の技術開発を続けて、目覚しい業績を挙げています」 ◆本業の技術を活かす 「少し社名を挙げてみると、信越化学、新日鉄、三菱マテリアル、住金、東レなどの子会社や合弁会社です」 ――素材産業、百年企業の特徴や体質をどう見るかが重要ということですね。 「そうです。私は農耕民族のカルチャーをそこに見ます。稲刈りまでの1年間、根気良く作業を続けるのが農業です。百年企業もよく似ていて、考え方が長いのですよ」 ――その後、重化学工業が発展し、農村の労働力が工業に流入したという事情も企業風土に影響していますね。 「戦後の高度成長期に集団就職などで大量に農村出身者が流入したことの意味も大きいですね。だから我慢強く技術開発に取り組むという気風も根付いたのです。また農村共同体の集団主義というカルチャーも移入されて製造業にはプラスに働いています」 ◆米国生まれ日本育ち ――百年企業の考え方は長いとのことですが、先を読んで投資するに当たっては経営者の判断が重要になりますね。 「材料メーカーの経営者には我慢強いというある種の農業的マインドを持った人が多いですよ。そして信念を持って技術者に任せています」 ――日本の技術力全体についてはどう見られますか。 「例えば韓国は半導体で強いかも知れませんが、材料産業などは徹底的に弱い。日本の場合は全産業にわたって世界トップレベルの技術を持ち、それがクロスオーバーしています」 ――米国はどうですか。 「日本に対抗できるのは米国だけです。しかし極端な格差社会ですから、各工場ともレベルの高い均質な労働力を確保するのが難しい国です」 ――米国は軍事産業の裾野が非常に広いですね。 「確かに半導体もパソコンもインターネットも航空機も、いろんな重工業も軍需から生まれました。トランジスタの発明も軍事目的に使われました」 |
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(2007.3.30) |
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