「シリーズ・JA米事業改革の現場から06年版」ではこれまで各地JAの「JA米」の取り組みをレポートしてきた。JAグループにとって「売れる米づくり」が課題となっているなか、JA米は安全・安心の米のスタンダードだとして、いずれのJAでも販売戦略の核であり、米産地づくりの要と位置づけていた。
この取り組みは19年産米から4年目を迎えるが、JA全農では19年度事業計画のなかで、JA米シールを表示した消費者向け精米販売を掲げている。今回はこれまでの取り組みから見えてきた「JA米」ブランド確立のための課題などをJA全農米穀部事業対策課の荒井幹雄課長に聞いた。 |
安全・安心のブランド米としてより一層の信頼と評価を
◆販売方式の見直し進む18年度
――最初に、米の需給環境など最近の情勢についてお聞かせください。
18年産は作況が「96」でしたから本来であれば需給はタイトになるはずでしたが、実際は均衡しました。これは18年産米の生産目標数量833万トンに対する適切な作付けが行われず過剰作付けとなっていたことが主要な要因です。ですから、19年産では過剰作付けの解消をはかる計画生産の徹底がJAグループとして大きな課題になっています。
――18年産米の集荷実績と出荷状況はいかがでしょうか。
連合会委託された数量は2月末現在で344万トンで最終の集荷見込みは345万トンと見込んでいます。
一方、2月末時点での契約数量は195万トンで販売実績(2月末現在)は104万トンとなっております。契約数量では昨年より57万トン少ない状況ですが、18年産は契約手法を大幅に変えたため単純に比較することはできません。
出荷進度も昨年にくらべて上がっていませんが、要因のひとつとしては政府米の売却が昨年より多いということがあげられます。背景には実需者・消費者の低価格志向があり、それが政府米の販売が進んでいることにつながっていると想定しています。
とはいえ、JAグループが出荷した米も最終的にはきちんと契約されていくとみています。販売進度が昨年より遅れていますが、先ほども申しましたように、18年度からは数量と価格、引き取り期限もセットにした契約方式に変えているからです。昨年までは数量だけ先に契約し、価格は後の入札価格相場などで決めていたわけですが、今年度からはそういった契約方式を見直したため、実際は販売進度を昨年と単純に比較することは適当ではありません。
◆「JA米」集荷量の7割に
|
JAのオリジナル品販売も(JAふくおか嘉穂) |
――さて、JAグループの「JA米」への取り組みは16年産からスタートしました。これまでの経過とどう評価しているのかをお聞かせください。
「JA米」は(1)品種が確認された種子による栽培、(2)あらかじめ定めた生産基準に沿って生産されたことが生産履歴記帳によって確認されている、(3)登録検査機関での農産物検査受検、の3つを要件としてスタートしました。
これまでの経過を振り返ると、初年度の16年産では29県で取り組み、生産数量は当初の目標を大きく上回る178万トンでした。17年産では34県に拡大し生産数量も246.5万トンにまで増えました。
18年産は県の数は変わりませんでしたが、今年2月末現在で昨年度を上回る247.6万トンとなっています。この結果、現在は連合会出荷米のうち約70%が「JA米」になり、コメ価格センターの上場銘柄はほとんど「JA米」になりましたから、この間のJAグループの取り組みは大変評価できるものと考えています。なお、県単位でみると進んでいる県ではその県の米は100%近く「JA米」になりつつあります。
JA米の精米販売に向けた生産現場の課題
◆創意工夫ある米づくりの土台
――JAによっては、「JA米」の3要件に加えて独自基準を設けているところも多いですね。
つまり、「JA米」の3要件はJAグループとして守る共通のルールであり、この取り組みは安全・安心な米のスタンダードだということです。ですから、「JA米」というスタンダードな米づくりの要件のうえに、農薬や化学肥料を削減したり残留農薬分析などの要件を加えるということです。
逆にいえば、特別栽培米などの生産を行っても、使用した種子の品種や生産履歴の確認などがあってはじめて安全・安心な米といえるわけですから、「JA米」はそうしたJAの創意工夫ある米づくり、売れる米づくりの土台だといえると考えています。
――JA全農の19年度事業計画のうち米穀事業では「JA米マークを表示した消費者向け精米や加工品販売も含めたJA米のブランド化の推進」があがっています。生産現場には何が課題となりますか。
「JA米」の取り組みをはじめて4年目を迎えます。これまでもまったく小売販売がなかったわけではありませんが、もっと店頭で販売されていれば、生産者にも一層意欲を持ってもらえると思いますから「JA米」マークを表示した消費者向けの精米販売にも取り組み、ブランドとして確立することが課題です。
卸などの取引先は、低価格の米を求めている面はまだありますが、取引の中心となる商品としては消費者に関心が高まっている安全・安心な米を供給したいというニーズがあります。たとえば、量販店などへの品揃えの新規提案の際には「JA米」を推奨したいという声も聞きます。
こうしたニーズに応え、たとえば量販店の店頭で、選ばれる「JA米」にならなければいけませんが、そのためにも「JA米」の要件確認は重要となります。
|
米の検査風景(JAみな穂) |
食味分析とカドミウム分析を実施するJAも |
◆より質の高い取り組みを
具体的には、これまでの3つの要件が変わるわけではありませんが、種子の品種確認で、19年産からはDNA鑑定による方法を認めないことにしました。
DNA鑑定は広く認知されていますが、実は鑑定方法に公定法というものがないんですね。検査機関によって方法が異なります。
また、あくまでサンプリング調査にならざるを得ず、そうなると使用する種子の量全体として、その品種で間違いないかどうかを保証するのには不十分ではないかということです。
したがって、品種が確認された種子を使用した栽培という要件を満たすには、指定種苗業者が発行する「種子証明書」を提出することになります。指定種苗業者が販売する種子は主要農作物種子法で定められている審査によって品種が明確にされているからです。
――生産履歴の記帳内容のチェックも重要でJAでもさまざま努力、工夫をしています。
そうです。生産履歴の記帳確認はより徹底する必要があります。とくに大規模JAでは生産者の数も多く記帳内容の確認は大変な作業ですが、販売した米について何か聞かれたときに応えられるようにするためにも確認の徹底が求められます。
JA全農としても生産者がJAに生産履歴記録簿を提出する際に自己点検するチェックシートの様式を県段階に示して活用を促しています。
「JA米」の精米販売に向けては、販売力の強化も重要ですが、生産現場では「JA米」の要件の確認が重要となります。
|
検査証明とともにJA米のシールが貼られる
(JAいしのまき) |
生産者ごとにバーコードを貼り管理する
JAもある(JAあきたふるさと) |
|