農業協同組合新聞 JACOM
   

シリーズ 私のビジネスライフ―DREAM・VISION・ACTION・ROMAN―

民族の感性が園芸に反映
新しいビジネスの創造を

(株)サカタのタネ 須田o一郎専務


 (株)サカタのタネの須田o一郎専務はさきごろ、世界の園芸業界の殿堂である2005年度オール・アメリカ・セレクションズ(AAS)「メダリオン・オブ・オナー」を受賞。園芸にかける夢を聞いた。


(株)サカタのタネ 須田o一郎専務
すだ しゅんいちろう
 昭和18年3月千葉県生まれ。62歳。41年3月東京農工大学農学部卒。4月坂田種苗(株)(現・(株)サカタのタネ)入社、平成9年8月常務取締役国際事業本部長、12年1月専務取締役管理本部長、14年8月代表専務取締役経営企画室長、17年3月代表専務取締役品質管理本部長(現在に至る)

――千葉県のご出身ですね。

 須田 安房郡の鋸南町です。鋸山、南には富山が聳えています。この辺りは馬琴の『南総里見八犬伝』の舞台として有名で、伏姫と八犬士たちが織りなす壮大なロマンに惹かれます。実家は農家です。
 
――この道へのきっかけは。

 須田 もっとも影響を受けたのは祖父です。祖父は、神奈川県庁で農業技師などに従事していましたが、理由あって田舎に引っ越すことになり、趣味で品種改良などを行っていました。祖父の後ろ姿を見て園芸への夢が拡がり、農工大に進みました。

 ――1966年の入社ですね。

 須田 入社直後から13年間品種改良などをやり、その後の19年間は外国部で海外への種子の販売に取組みました。毎年7〜8月頃になると大きなスーツケースをもちヨーロッパに向かい、南はイタリアから北はスウェーデンまでの10カ国余り、額に汗してお得意先を行商して歩いたんです。この体験が私を形成する母体となりました。

 ――欧米のガーデニングは。

 須田 ヨーロッパで園芸が盛んで市場が大きい国はイギリス、オランダ、フランス、ドイツの4カ国です。民族的にはアングロサクソン、ゲルマン、ラテンで、民族の感性がものすごく園芸に反映されているんです。

 ――具体的には。

 須田 ヨーロッパに行ったら、まず「お墓」を見ることです。そこに園芸が凝縮されており、民族の感性があるんです。

 ――「お墓」とは面白いですね

 須田 イギリスは園芸の発祥地ですが、お墓には何の花もなくそこにあるのはただの石碑だけなんです。彼らは、園芸は自然に密着すべきものであり、自ら庭園で育てた宿根草等を自宅で楽しんだり友達に贈ることなどが園芸の真骨頂だと思っています。ドイツのお墓は周囲に樹木が高く茂っていて正門、裏門があり、そこには必ず園芸店があります。スイス、オーストリアもそうです。ラテン系の人たちは楽天的で、特別の宗教行事にはお墓にも驚くほど多くの花を飾りますが、それ以外の時はほとんどお墓のことは忘れています。アメリカは民族の坩堝のようなところがあります。改めて民族の感性が園芸に反映されていると思います。

 ――将来に向けた戦略は。

 須田 従来と同じ姿勢では世界に通用しません。サカタがどう世界の園芸をリードしていくかが課題で、有機的な戦略を通し新しいビジネスを創造していかなければなりません。

 ――ありがとうございました。

(2005.9.27)


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