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シリーズ 深化させよう!
地域水田農業ビジョン −産地づくりの視点から考えるJAの担い手育成・支援の課題−(1) |
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農地の一元管理で新規作物づくりが実現 ◆トータルアドバイザー JA独自に7名を配置 JAいわて花巻が中核となった花巻地方水田農業推進協議会が策定した地域水田農業ビジョンは、(1)JAと行政が一体となった推進体制、(2)155の農家組合(集落)でのビジョン策定とその積み上げ、(3)集落営農の組織化、法人化への取り組み、(4)雑穀や園芸作物など米以外の作物振興の積極化、などの特徴が高く評価された。 ◆品目横断加入を活用したビジョンを実践 16年度に策定した集落ビジョンで担い手として位置づけられたのは個別経営、生産組織を合わせて1300ほど。18年度はこれらの担い手に対して、認定農業者や集落営農への誘導を図るための研修会やトータルアドバイザーによる現地での説明会に力を入れた。 ◆4つの一元管理の理解促進で苦心 その気運がそがれないようにするため、もっとも苦心したのは「一元化」への理解だった。 「集落の農地は法人が守る」 ◆地域に雇用を生み出す新規作物づくり
花巻市の遊子、新屋地区の農家65戸のうち53戸が参加して17年2月に設立された。母体となったのは転作の受託組織。集落ビジョン策定を機に、集落型経営体へ発展させることを決めた。 19年度は利用権設定した水田面積は稲作も含めて約19ha、昨年度より3haほど増えた。作業受委託実面積と合わせた経営規模面積は集落の水田面積110haのうち80haまで広がった。 経営品目の柱としているのが小麦と種子用小麦で利用権設定面積19haのうち、11haと米の作付け面積6・5haよりも多い。作業受託分も含めて20年産秋まき麦は35haを計画している。そ他に大豆の作付けも。オペレーターは6人の役員。そのほか常時雇用に近い形態で2名を雇用、農繁期は組合員の出役で農作業をこなす。 「米に代わる収益を上げる品目が課題。主力品目は小麦だが、ほかにどんな作物が有利か設立以来模索してきた」と「遊新」の高橋新悦代表理事組合長は話す。 今年は初めて加工用トマトを約1ha作付けした。JAが食品企業と契約をまとめ、生産者には買い取り単価を保証した。収穫は5月末から9月まで。早朝からの作業は集落の法人参加組合員が担った。時給800円。80歳近くの高齢者でも月20万円もの支払いになった。 作業料金を差し引くとトマト生産自体は結局赤字となったが「これは収益が目的ではなく雇用機会をつくるための取り組み。
集落営農に参加すれば農作業で所得が得られることも知ってもらいたかった」と高橋組合長。 こうした米に代わる新規作物の導入から雇用が生まれればいずれは後継者も出てくるというのが高橋組合長の考えだ。「自分はその準備をしていけばいい」農地の利用集積を拡大するとともに、産直や施設園芸にも取り組みたいという。 同法人のように稲作も含めて組織化した集落営農経営体は37あり、米作付け面積の加入申請割合は32%と全国平均を上回っている。 ◆ポイントの見直しで園芸作物を振興 利用集積をした経営体を作りあげても米で収益を上げるとなればさらなる面積拡大が必要で、それは限られた農地の奪い合いになりかねない。そのため収益の上がる雑穀や野菜など園芸作物の振興を図ってきた。 取り組みを促進させるためにビジョンで示したのが、産地づくり交付金単価に作物別に差をつけること。たとえば、「雑穀日本一」の目標を達成するためヒエ、アワなどの栽培には他作物よりも交付ポイントを高くした。 そのポイントも年度ごとに見直しを行ってきた。野菜ではネギ、アスパラなどの振興に力を入れてきたが、今年からは先にも紹介した加工用トマトも交付金の対象とした。また、雑穀では交付基準となる最低作付け面積に引き下げなども行い生産誘導を図っている。雑穀の作付け面積目標は22年度に320haとしており、18年度では238haまで拡大した。集荷と乾燥調製まではJAが担い、レトルトの雑穀粥などへの商品化と販売は(株)プロ農夢が行うという事業方式が定着している。需要に生産が追いつかない状況だが、栽培技術と需要に合わせた品種のバランス調整などの課題もある。 産地づくり交付金による新規作物への誘導とともに、JAにとって重要になるのが確実に販売に結びつける取り組みだろう。 加工用トマトの生産・販売はケチャップ、ジュース製造などを行う大手企業への販売が見込めたことからスタートした。 米に代わる園芸振興は集落で取り組める作物が基本、だとして今後も推進していく。「遊新」のモットーも「集落の農地は法人が守る」だ。 そのためにも「JAが実需のニーズを掘り起こし、生産者に新たな作物提案をしていくことがビジョン実践のうえでいっそう重要になる」と阿部次長は話している。 |
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(2007.11.20) |
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