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《書評》 今野 聰 (財)協同組合経営研究所元研究員

狂牛病時代に何をどう食べるか

              マリッサ・クラウテイア・著 1,400円+税
              発行所:
KKベストセラーズ 03-5976-9121
              発行日:2002.3.5
狂牛病時代に何をどう食べるか

 今日では「BSE(牛海面脳症、俗称狂牛病)」という。アメリカの食事研究家である3人の女性、マリッサ・クラウテイア(栄養学修士)、デボラ・ロメイン(健康ライター)、イブ・アダムスン(健康ライター)の共著である。明らかに時の話題を狙って出版された。ただし、なにしろ類書と比較するとすぐ分かるが、総論ではない。原書名「脱牛肉生活」の通り、「緊急避難計画(パート1)」、「予備作戦(パート4)」、「本作戦(パート4)」と階段を上っていく。本作戦のメニュ−プランを大約紹介すると。
ステップ1:「減らす」レシピ。ステーキ100g、挽肉赤身100%などに替える。
ステップ2:「代用する」レシピ。鶏肉、魚肉などに中心料理を替える。
ステップ3:「組み入れる」レシピ。米農務省の食品ピラミットにある植物性基礎食品を大幅に増やす
ステップ4:「やめる」レシピ。植物性食事で大満足。
以上である。勿論女性ライターらしくメニュー内容は細かい。即実行の実践書でもある。
 紹介は以上の通り。以下気づいたことに触れる。第1に牛肉メニュー中心の生活をしていない日本人の実感からは、大幅にかけ離れていることだろう。または現実の西欧・アメリカ食事が、いかに牛肉中心であるかを立証してもいる。早い話、我が国では、昨年9月下旬からの「BSE騒動」で、確かに店頭食肉種区分が著しく豚肉・鶏肉売り場拡張に変わった。焼き肉屋から客が消えた。それくらいの急変があったことは事実だ。そうすると、日本人の日常生活が牛肉なしにはあり得ないのかとなる。例えばどの生協でも、牛肉を食べるのを抑制しようというキャンペーンに出合うことはなかった。普段通りの牛肉消費を訴えるのが圧倒的だった。むしろ事業上、急激な供給減現象に頭を痛めたのだった。だから極端に「脱牛肉生活」志向でない限りこの本にヒントを求めることはあるまい。
 第2に日本型食生活の評価である。著者等はステーキハウスとハンバーガーショップが一番人気だという。そこが牛肉消費のたまり場となっているのだろう。だから容易ではない。そこで、ヘルシー料理なら日本料理を選べという。他にイタリア、中華、メキシコ料理等もあると。かって1977年、マクガバン報告がだされ、日本型食生活が評価された。ここぞとばかり、JA全中から、米中心の風土に合った食生活運動が展開された。一方同じ頃、ファーストフード等洋風外食産業が花盛りだった。ビーフ・ハンバーグ、ハンバーガーなど、洋風メニューをどんどん採用、若者が飛びついた。その結果は止めようもない米消費減退であった。だから、こうしたファーストフード世代にはヒントになるかもれない。ともあれ「BSE」本質論だけで終わらない食生活実践論なのが良い。


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