パルシステム生協連は、「24時間で読み解く、食卓の社会情報誌」をキャッチフレーズに「POCO21」という月刊生活情報誌を発行し、幅広いジャンルの社会問題を独自の視点で分析し、同生協組合員に提供している。同誌で掲載された記事を1つのテーマに絞りさらに詳しくまとめブックレットとしてシリーズ化をはかったのが「POCO21ブックレット」(愛称:ポコ本)だ。
その第1弾が、同誌の編集長でもあるノンフィクションライター橋本克彦氏の「農は甦る」だ。
橋本氏には、戦後農政が行き着いた現場の問題点を報告した「農が壊れる・われらの心もまた」(講談社 1997年)があるが、「日本農業が壊れて後、再び甦るとしたら、どのような道筋を通るのか。という問題意識はなお残った。それならその道筋を追うのが当然の行為である」と、農業の現場を歩き同誌に連載してきたものをまとめたのが本書。
「農業が甦ることを信じる者」という橋本氏が報告するのは、JA広島市の行なっている熟年者を対象にした農業塾を卒業した人たちが設立した農園。大学の哲学科を卒業してサラリーマンになるがその職を辞して奥羽山脈の山里で農業を営む人。深刻な冷害のなかでも平年作を達成した「北の名人」。200年続く山葵田の8代目で組合青年部長として活躍する後継者。紅いもを特産品にしようと頑張っている沖縄の読谷村。まるでSF映画の一シーンのようだったというキノコ工場などなど、北海道から沖縄まで、取り上げた作物もさまざまで、さらに栽培技術から加工まで、日本の農業のさまざまな場面だ。
本書を読むと、一口に日本農業といっても、その地域地域で風土が違い栽培技術も異なることが分かり、農家の表情も違う。そして食べ物がどのような人たちの努力と献身によって作られているかを、消費者が知る手がかりになるのではないだろうか。
パルシステムは産地との交流を大事にする生協だが、生協組合員のすべてが、あるいは日本全国のすべての産地を訪ねることはできないだろう。そういう意味でも日本の農業のさまざまな場面を紹介する本書の意味は大きいだろうし、それが消費者側からなされたことは意味深いといえる。
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