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自著を語る  元秋田県仁賀保町農協組合長 (社)農協協会副会長 佐藤喜作
自給自立の食と農

 自給自立の食と農

  健康な生命と身体は健康な農がもたらす
    −自給運動展開して40年

    佐藤喜作 著  B6判 192頁 定価1800円(税別) 創森社発

(さとう きさく) 1927年秋田県生まれ。宇都宮農業専門学校(現宇 都宮大学)卒業、獣医師となる。1953年から1年半、 農業実習生としてデンマークへ。帰国後、仁賀保町 役場吏員を経て農業自営。1963年、仁賀保町農協 参事、1973年から同農協組合長理事などを務める。 現在、日本有機農業研究会会員。秋田しんせい農 協理事、秋田いのちと農を考える会会長、(社)農協 協会副会長などを務める。 著書に『村と農を考える』『手作りの幸せ』『農協が築 く自給自立運動』『農業を守る意味』など。


◆健康を考える人の読み物

 ローマは1日にしてならず、我らが身体も精神も、1日にしてならず母の体内で受胎し成育を続け20歳までは成長すると言われるから約21年の歳月となる。
 その身体は食によってのみ完成するのであり、またその身体の維持も食によってのみ可能である。それほど重要な食を、どれだけ注意を払って材料を吟味し、調理を行い食しているだろう。

 まさに近代は「食は命懸け」の時代になってしまった。もちろん古代でも食の確保のために命懸けではあったが、今日では質の安全性での問題なのである。その証拠は毎日の新聞に、健康食品と健康薬の宣伝記事が満載されているし、一方消費者は薬で健康になれると言う、恐るべき迷信をもっている。この誤りを指摘し、その対策を提言したのが本書である。

◆自給の意味と自給運動

 かたや生産者にも重大な責任がある。それは命を蝕むような資材は排除しなければならないのに、大量、広範に使用しているのだ。ただしこれらの資材を、生産者が製造して使用しているのではない。
 健康な生命と身体は、健康な食材により可能であり、健康な食材は健康な農によってもたらすことができる。だから農することは生存の為なのであり、農業となると生活のために農畜産物を生産し、これを販売してお金に替えることになる。

 しかし農業となっても原点の生存のための農畜産物の生産でなければならない。特に日本農業は自食する農業である。その産物が不安のあるものであれば、農家は食べないであろう。だから自給運動を展開して約40年にもなる。その経過も紹介している。

 今は国をあげて自給率向上が叫ばれている。しかし数量だけが先行して、その中身は吟味されていない。名実ともに日本人の生存の食たりうる農産物を自国で自給する事である。それをマクロからの視点で全体をコマ切れにして計画しても、減反政策のごとく失敗する。ミクロの戸毎の農家が自給の心で生産してこそ、はじめて国と量と質の伴った自給率も高まるのである。そしてその自給は単に農産物に止まらず、食衣住の暮らしとエネルギーにも広げることだ。

◆稲から眺めてみる

 日本人の真の健康を取り戻すには、本来の長い歴史に育まれた日本型食生活の復活以外その道は無い。米と穀類、野菜に魚、そして主食と副食の姿こそ、理想的食体系として、アメリカを始め外国から注目されている。その優れぶりの中心である米と稲の一部を紹介している。それは単なる米イコールご飯でなく、稲にも焦点をあて、そして米全体を見る、即ちマクロで判断することである。それはとりもなおさず本来の日本と、日本人になることである。

 この本は誠に平易で、学術的な内容は全くない。出来るだけ事実による記事にしている。願わくは特に消費者の方々に読んで頂き、食に対する認識、そして自然を相手の農の実態を理解して、農業者と共に、世界的規模で進行している健康破壊、農の消滅、離脱農に歯止めをかける起爆剤の役割を願っている。



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