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コラム
消費者の目

「モラルの向上なくして安心なし」


 相次ぐ不祥事に、企業の信用が失墜しています。企業は、いや日本人はいつからモラルをしまったのでしょう。「渇しても盗泉の水を飲まず」あるいは「屋漏に愧じず(おくろうにはじず)」という言葉はもはや死語となってしまったのでしょうか。「こんなことをしちゃあ、お天道様に顔向けができねぇ。」と長屋の熊さんだって言ってるじゃありませんか。そう、昔から「お天道様」はどこかで私達のことをちゃーんと見ていて、悪いことをした人には「天罰」があたることになっていたはず。と言うことは、今回の一連の不祥事が明るみに出たのは、「お天道様」の仕業でしょうか。天網恢々、疎にして漏らさず。遠山の金さんなら、「やいやいやい、この桜吹雪を見忘れたか!」と見栄をきって見せるところでしょう。

 不祥事を起こした企業はまさに「言語道断」と言うことになるのですが、「過ちては改むるに憚ること勿れ」と言うではありませんか。「粉骨砕身」企業体質の改善に努めていただきたいと思います。決してやさしい道のりでは無いでしょうが、「石の上にも三年」、「雨が降ろうが槍が降ろうが」実行あるのみ、何はともあれ「善は急げ」で、「禍を転じて福となす」といきたいものです。

 一口に企業の不祥事と言っても、企業という怪物が悪さをするのではありません。全て一人一人の人間がやったことです。コーポレートガバナンス(企業統治)は大切ですが、その前に個人のモラルが問われるべきでしょう。永六輔さんの「職人」という本の中にある職人さんの言葉が出てきます。
 「職業には貴賎はないと思うけど、生き方には貴賎がありますねェ」
 同感です。賎しい生き方はしたくないものです。しかし、「言うは易し、行うは難し」です。
 何故なら、人間はもともと弱いもの、瀬戸内寂聴さんの言葉を借りれば煩悩にとらわれた「おばかさん」なのですから。だからこそ、昔から日本人は「故事」や「ことわざ」を自らの戒めとして、モラルを維持してきたのではないでしょうか。

 食の安全性への信頼が揺らいでいる昨今、ITを駆使した様々なシステムの試験が行われています。圃場にカメラを設置し、インターネットを通じて消費者に作業状況を見てもらおうとする試みや、店頭に設置したパソコンで販売している野菜の栽培履歴や生産者のプロフィールを公開しようとする試みもあります。しかし、残念ながらどんなシステムもそれ自身が消費者に安心を与える事はできません。なぜなら、安心は人と人との信頼の上にこそ成り立つものだからです。システムはそれを使う人間のモラルがあって初めて機能するのです。つまり、「モラルの向上無くして安心なし」です。今こそ、「故事」や「ことわざ」にこめられた先人の知恵にもう一度目を向ける時ではないでしょうか。「千里の道も一歩から」と言うではありませんか。 (花ちゃん)


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