JACOM ---農業協同組合新聞/トップページへジャンプします

コラム
消費者の目

思い込みや感情ではなく
−食品の安全性議論−


 平成14年はBSE(いわゆる狂牛病)に端を発した不正表示問題、中国産ほうれんそうの残留農薬問題、無登録農薬問題など、食の安全性に関わるニュースが新聞の紙面を賑わしました。私達が口にする食品に関わることだけに、農薬取締法の改正など監督官庁の対応も非常にすばやく行われ、皆さんもご存知の通り平成15年3月には改正農薬取締法が施行されることになりました。
 しかし消費者にとって農薬の安全性に関する問題は、必ずしも科学的な根拠に基づいて議論されてきたとは言えません。現在農林水産省に登録されている農薬は、その安全性が国際的な基準に準拠してきちんと評価され、国民の健康に何ら被害を及ぼさない使用方法がきちんと定められています。
 しかし、「農薬は虫を殺したり、草を枯らしたりするから人にも危険だ」という思い込みや誤解は後を絶ちません。少々乱暴な言い方ですが、「農薬は危険だ」と言うのは、「農薬が安全だ」と言うのと同じく間違いなのです。この世の中に100%安全なものは存在しないし、100%危険なものも存在しないのです。猛毒で知られるトリカブトの塊根は、リウマチ・神経痛などの鎮痛や胃腸の機能亢進に用いられ、烏頭(うず)あるいは附子(ぶし)という生薬として知られています。この場合猛毒か生薬かの違いは「量」や「使用方法」によって決まるのであって、同じ事が天然物、人工物を問わず全ての物質に当てはまります。
 百薬の長と言われる「酒」は短時間に大量に飲むと急性アルコール中毒を引き起こします。また、「酒」をある一定量以上、長期間にわたって飲みつづけると肝臓を壊す場合があります。物質によって量の差こそあれ、どんな物質でもその物質の安全な量の範囲内であれば安全、それを超えれば危険であるということです。それは自然物だろうと人工物だろうとまったく違いはありません。
 今必要なのは、思い込みや感情に支配された行動ではなく、科学的な根拠に基づいた冷静な判断ではないでしょうか。そのためには、情報は隠さずに公開してゆく姿勢が行政・企業ともに求められるでしょう。と同時に、分かりにくい安全性担保の仕組みを消費者に分かりやすく説明することが求められるでしょう。消費者の方も感情論的な批判をやめて自分達が口に入れる食品の安全性がどうやって担保されているのか理解を深めてゆくときにあると思います。その上で、きちんとした議論がなされることを望みます。(花ちゃん) (2003.2.13)


農業協同組合新聞(社団法人農協協会)
webmaster@jacom.or.jp