このところすっかり春めいた陽気に誘われて、若洲海浜公園内のゴルフ場を訪れました。
ここはかつて夢の島というゴミの埋め立て場でしたが、今では立派なゴルフ場に生まれ変わって多くのゴルファーで賑わっています。しかし、緑の芝に覆われた1〜2mほどの表土の下はゴミの山で、工事のために掘り起こすとちゃんと(?)ゴミが出てくるそうです。
ここに埋まっている何万トンというゴミも、元はといえば私たちの暮らしが生み出したものなのです。
近くのスーパーでは発泡スチロールのトレイ、牛乳パック、ペットボトルの回収をしています。ゴミを新たな資源に生まれ変わらせるのです。このようなリサイクル運動を推進するため、ゴミの分別収集を行う自治体も増えてきました。
いまや常識になってきたリサイクルですが、環境問題という大きな視点に立って疑問を投げかける人たちもいます。多くのスーパーや自治体ではペットボトルの分別回収にあたって各家庭でボトルの中を洗浄するよう指導していますが、洗浄の際たくさんの水が汚されています。回収したペットボトルをリサイクル工場まで輸送するトラックは窒素酸化物や二酸化炭素を排出します。ペットボトルを細かく裁断する機械を動かすのには電気が必要ですが、その電気は重油などの燃料を燃やして蒸気タービンを動かしていますから、発電所は大量の二酸化炭素が排出しています。
このようにリサイクル活動ですら環境への負荷がかかっています。人間の営みはそれ自体、環境に負荷をかけないでは成り立たないものなのです。農業もまた然りです。環境への負荷をできるだけ少なくすることが私たちの使命だと思います。
環境にやさしい農業のヒントはGAP(Good Agriculture Practice)、すなわち適正な農業規範にあるのではないでしょうか。GAPは安全な農作物の生産のため農業者が行うべき行動を定めたものですが、環境への負荷を減らすために行うべきことについても触れています。
食品の安全のための基準としては食品の製造業者が守るべき基準であるHACCP、環境保全の基準としては多くの製造業で取り入れられているISO14000シリーズが知られていますが、例えば、ヨーロッパで生まれたEUREPGAP(ユーロギャップ)はHACCPをベースに、農業がもともと持っていた知恵を取り入れて作られており、農家の目から見ても極めて合理的な基準だそうです。だからこそ農家に受け入れられているのでしょう。
消費者の信頼が揺らいでいる今、食の安全という観点から、日本でもGAPへの取り組みは急がれるべきでしょう。農業とて懐古主義的、情緒的な運営だけでは許されない時代が来ています。中国ではすでにGAPへの対応が急ピッチで進められています。日本の農業が国際化の波に飲み込まれずに生き残ってゆくためには、国際的に通用するGAPの普及が不可欠だと思います。(独白:ゴルフの話がどうしてGAPの話になるのか自分でも不思議です。それは別にして、GAPはこれからの農業のキーワードになる予感がしています。皆さんも注目していてください。) (花ちゃん) (2003.5.8)