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コラム
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消費者の目
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三菱自工の問題から何を学ぶべきか |
1990年代以降、三菱自動車工業が製造したトレーラーなどの大型車で、走行中にタイヤが脱落する事故が50件も起こりました。7万6000台も生産された欠陥車両のうちの1台は、2002年1月、横浜市でついに一人の女性の命を奪いました。4ヵ月後の2002年5月には三菱はハブという部品に重大な欠陥があることを把握していました。しかし、三菱は一貫して車両の整備不良が事故の原因という姿勢をとり続け、リコールの対象となるような欠陥はなかったと説明してきました。
トラックに限らず、自動車はメーカー独自の販売会社を通じて販売されており、また車両には一台一台、認識番号が刻印されていますので、いつ誰が生産したものかすぐにわかります。そういう意味では、トレーサビリティが確立された商品といえます。三菱側がその気になりさえすれば、リコールは比較的簡単にできたはずです。現に三菱は横浜の事故の後、自主対策として7万6000台の98%にあたる7万5000台のハブを無償で交換しています。にもかかわらず、リコールの対象となる欠陥はないという姿勢をとり続けたのでした。事故の背景には、安全を軽視する三菱の姿勢がはっきりと見て取れます。消費者の安全よりも自社のブランドを守ることを優先させた罰は、とてつもなく大きかったと言わざるを得ません。 農産物のトレーサビリティの整備が急ピッチで進んでいます。近所のスーパーの店頭にも栽培情報をインターネットで公開する農産物のコーナーができました。トレーサビリティの確立は着実にすすんでいるな、という感じがします。生産にかかわる情報を消費者に公開することは大変結構なことです。 しかし、それ以上に大切なことは農作物の安全そのものを確保することです。三菱の例を見るまでもなく、トレーサビリティが確保されていることと、安全性が確保されていることはまったく別次元の問題なのです。どうすれば安全な農作物を生産することができるのか、真剣に考え始める時代が来ています。農薬の使用方法を間違えて基準値以上の農薬が残留してしまうことばかりがクローズアップされますが、微生物(たとえばO-157)による汚染の問題の方が深刻な問題かも知れません。農業という産業が環境に与える付加のことも考えなくてはならないでしょう。肥料の与えすぎは近くの河川や湖沼の富栄養化を進行させ、水質を悪化させることにつながります。多くの企業が安全基準、環境基準を遵守しながら経済活動を行っています。農業だけが例外というわけにはいかないでしょう。 「自分さえ良ければ」、という姿勢がどういう結果をもたらすかは、三菱自動車の例を見るまでもありません。(花ちゃん) (2004.7.13) |
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