農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

頼りになった農協の直売所

 平成16年の秋は忘れられない秋になりました。立て続けに上陸した台風と秋の長雨の影響で野菜の価格が高騰したからです。
 テレビのニュース番組では、都内のとあるスーパーでレタス1玉が1050円になったと報じられました。いったい誰が1玉1050円のレタスを買うというのでしょう。始めのうちは「青虫じゃあるまいし、他にも食べるものはあるさ」とうそぶいていたものの、これからが旬で、値段も安くなるはずの大根や白菜の値段が上がるにつれ、次第に不安になってきました。当てにしていた生協の野菜は、値段こそそれほど高くはないものの、品質がだんだん低下してきました。葉先の枯れたほうれん草、まだ結球しきっていない白菜など、普段なら店頭ではお目にかからないような品質の野菜が売られていました。
 それでもないよりはましということで、辛抱して買っていたのですが、さすがに白菜に虫のフンが残っていたのを発見したときには、天候不良の影響の深刻さを実感しました。
 こんな時、頼りになったのが農協の直売所でした。もともと地域の市民に人気の店で、9時の開店から1〜2時間であらかた売れてしまうのですが、その日は開店の30分以上前からお客さんが詰めかけ、それに野菜を搬入する農家さんが加わって大変な混雑でした。開店時間を繰り上げたため、9時過ぎにはレジの前に長蛇の列ができ、狭い店の中はレジに並ぶ人と買物をする人がぶつかり合うほどの賑わいでした。野菜の品質低下は否めないものの、価格はスーパーの半値か3分の1程度ですから皆よろこんで買ってゆきます。レジの前に並んでいるかごは、どれも野菜でいっぱいでした。
 思えば、平成16年の夏は好天続きで、キャベツが豊作。値段の暴落を避けるために収穫間近のキャベツが大量に捨てられました。浅間山の噴火で火山灰をかぶったキャベツを50円で売ったスーパーがニュースで話題にもなりました。その数ヵ月後には品不足による価格の高騰です。農業は自然を相手にしているので、「しょうがない」のでしょうが、野菜の値段の乱高下にはとても矛盾を感じます。単作、大規模生産によって野菜の価格は本当に安定するのでしょうか?消費者にとって困ったときに本当に頼りになるのは、地域に根ざした小規模・多作物生産ではないでしょうか。
 農協の直売所に出品するようになると、他の出品者と重ならないように栽培作物を選ぶようになります。自然に栽培する作物数が増えるそうです。これがリスクの分散にならない訳がありません。もともと、「百姓」という言葉は、「百の作物を育てる人」という意味だそうです。多作物栽培によるリスク分散は、不確実な自然と戦ってきた先人達の知恵だったのかもしれません。(花ちゃん)

(2005.1.28)


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