農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

農村は住みやすい国への原動力


 兵庫県川西市で平成17年3月18日、成立すれば全国初となる、ある条例案が否決されました。その条例とは、同市内で包丁を購入する際に住所、氏名、購入目的を記載した書類を販売店へ提出することを購入者に義務付けるというものです。大阪府寝屋川市の小学校内殺傷事件をはじめ刃物を使った凶悪事件が全国で相次いでいることが背景になっています。
 市民の安全を守るために何ができるのか、模索している自治体の苦悩が感じられます。この条例の実効性があるのかないのかは別にして、問題は包丁が簡単に買えることではなく、それを使う人間の心にあることを忘れてはなりません。心の問題を解決しなければ、違う凶器を使った同じような事件が繰り返されることになるでしょう。

◆  ◆  ◆

 では、どうしたら心の問題を解決できるのでしょうか。ある人は、子供が子供らしい遊びをしなくなった、あるいはできなくなったことが精神の荒廃を招いていると指摘します。豊かな自然の中で一日中遊んで、疲れたら寝るというのが昔の子供でした。草や木や土や水が遊びの道具でした。時々、子供達の好奇心を満たすのに昆虫やカエルが犠牲になりましたが、生身の人間で好奇心を満たそうとする子供はいませんでした。
 自然の中で遊んでいる内に、自然の厳しさや恵みの豊かさを経験し、自然への畏敬の念が育まれたと考えて良いのではないでしょうか。農村の持つ豊かな自然は、人間が人間らしさを取り戻すための資源として今後ますます見直されてゆくと思います。

◆  ◆  ◆

 一度失ったものを取り戻すのは容易ではありません。だからこそ、農村の人たちは自分達の持っている良さを大事にする必要があります。しかし一方で、中にいるとその良さになかなか気がつかないのも事実です。人間というものは、すぐそばにいる青い鳥になかなか気がつかないものだからです。都市の人たちと積極的に交流を深めることで、農村の人たちはそのことに気がつくでしょう。
 農村が農村らしくあるためには、そこに住む人たちが自分達の村を好きでなければならないと思います。村の自然や風土を愛し、自分だけでなく村全体のビジョンが考えられる人材を育てられるかどうかも重要なポイントです。一人よりも二人、二人よりも三人。大きな流れを作るには仲間が必要です。もし農協が持てる力を結集すれば、やれることは沢山あるはずです。都会が失ってしまったものを農村が提供する。そして、日本を住みよい国に変えてゆく原動力となれるのです。 (花ちゃん)

(2005.6.10)


社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。