農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

「ちょっとぐらい…」が大問題


 「発掘あるある大辞典II」というテレビ番組で、納豆を朝晩食べるとやせるという話が放送されました。最近ふとリ気味の私は「これは朗報だ」と思い、朝晩納豆を出すように妻にお願いしました。この番組の影響力は絶大で、放送のあと近所のスーパーでは納豆が姿を消したと妻に聞きました。その矢先、この番組の中で紹介されていたデータが捏造されたものであることが明るみにでました。私同様、「ちょっと試してみようかしらん」と思った方は、「やっぱりそんな上手い話は無いのか」とがっかりなさったことでしょう。
 テレビの影響力の大きさに驚くと同時に、いいかげんな情報を流した放送局には責任の大きさを感じて欲しいと思います。妻は同じ番組で紹介されたチョコレートダイエットに挑戦していましたが、この事件の後、止めてしまいました。

 食べ物に対する消費者の反応は極端です。1996年には、大阪府堺市で発生した学校給食による学童の集団感染が発生。疫学調査によりカイワレ大根が原因食材として疑わしいという当時の厚生省(現厚生労働省)の中間発表により、カイワレ業者が壊滅的な打撃を受けました。しかし、カイワレ大根を含め遡り調査を行ったものの、カイワレ大根からO157は検出されず、結局感染源は特定されませんでした。風評被害という言葉がメジャーになったのは、このカイワレ大根の事件がきっかけだったと思います。
 現在、鳥インフルエンザの問題に世の中は比較的冷静に反応していますが、関係者は風評被害を食い止めるのに必死だと報道されています。宮崎県の東国原知事がテレビで鶏肉の安全性を一生懸命アピールしている姿をご覧になった方も多いでしょう。食品に係わる報道はその影響が半端ではないだけに慎重になされるべきです。

 一方で、2000年6月に当時の雪印乳業大阪工場の引き起こした、1万人を超える日本最大級の集団食中毒事件は、衛生管理に対するモラルの問題に焦点をあてました。マスコミは連日このニュースを大きく取り上げ、雪印グループは解体に追い込まれました。
 あれから6年。不二家が消費期限切れの牛乳を使うなどして健康被害を出しただけでなく、マスコミに知られたら雪印乳業の二の舞いになると社内文書で隠蔽を指示していたことが公になりました。雪印乳業の食中毒事件が社会の仕組みとして食の安全性の確保に全く生かされていなかったばかりか、逆に隠蔽に走ったことに心底がっかりしました。
 食品は人間にとって身近なものであるがゆえに、私たちの心のどこかに、「(厳密な管理をしなくても)」ちょっと位なら大丈夫だろう」という隙ができやすいのかもしれません。しかし、食品が安全であることは最低限の要件です。安全が当たり前だからこそ、食品の生産に係わる方々のみならず、社会の仕組み作りに係わる方々にも一層の努力を期待します。(花ちゃん)

(2007.2.9)



社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。