農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

勝負の分かれ目決める感性


気象庁は、桜の開花予想日を算出するプログラムに一部誤ったデータが読み込まれたため東京、静岡、高松、松山の開花予想が正しく計算できなかったことを公表し、それらの開花予想日を修正するとともに謝罪しました。桜の開花予想が外れたぐらいで何もそこまでしなくてもと思った方も多かったのではないでしょうか。私もこのニュースをテレビで見ながら、最近では天気予報をもとに弁当の生産数量を決めるなど、気象情報がビジネス化していることもあって、異例の謝罪となったのだろうと考えました。
 しかし、台風の進路予想や地震による津波警報など防災分野で果たす気象庁の役割の大きさを考えると、小さな穴でも見逃してはならないのでしょう。

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 「コンピューターはミスをしない」というのは間違いで、どんなコンピューターのプログラムにもバグと呼ばれる何らかの不具合があることは常識です。もちろん、バグは何度も何度もテストをすることで極限まで減らすことができます。しかし、仮にバグが無かったとしても、人間がコンピューターを誤って操作すれば、コンピューターは間違った結果を出してしまいます。
 その事を一番理解して安全性の確保を行っているのは航空業界ではないでしょうか。最新の飛行機は着陸まで自動でやってのけます。実際その心臓部はコンピューターの塊です。これらのプログラムの安全性は厳しいチェックを経て確認されています。しかも、パイロットはフライトシュミレーターによるトレーニングを繰り返し、機種ごとに資格をとります。コンピューターが故障した時の二重三重の安全対策も取られています。そして一番感心するのは、最終的には人間の判断を優先させる精神です。

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 気象庁につとめている知人から、気象庁には天気予報を行うコンピューターが複数あると聞いたことがあります。それぞれのコンピューターには作った人間の予報ロジックが組み込まれており、同じデータをインプットしても微妙に違う予報を出すそうです。
 例えば、あるコンピューターは明日の天気を「曇りのち晴れ」と出したとすると、別のコンピューターは「曇りときどき晴れ」と計算するという具合です。意見が割れた時には多数決を取るのだとか。ずいぶん人間的なのだなあと思いました。桜の開花予報を計算しているコンピューターは複数無かったのかもしれませんね。
 しかし、いくら多重化してもコンピューターも間違う時は間違います。「何か変だ」と思えるか思えないかが勝負の分かれ目になります。今後、コンピューターのはじき出した答えを鵜呑みにせず、おかしいと考える人間の感性がますます必要とされる時代が来ると思います。(花ちゃん)

(2007.4.16)

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