農業協同組合新聞 JACOM
   
コラム
消費者の目

リサイクルの街、ロンドン


 5年ぶりにイギリスに行ってきました。イギリスの経済は好調で、それを反映してロンドンの街は活気に溢れていました。ロンドンといえば「霧のロンドン」という言葉が有名ですが、現在のロンドンには腕を伸ばして指の先が見えないほどの深い霧は出ないそうです。それというのも、ロンドンの霧をひどくしていたのは石炭を燃やした時にでる煤だったからで、1952年に英国政府が工場や家庭で石炭を燃料にすることを禁じたことによって、空気がきれいになり、霧が出にくくなったのだそうです。
 ちなみに、この法律ができた1952年以降に立てられた家には煙突が無いそうで、煙突を見れば築年数が分かるのだそうです。とは言え、ロンドン市内の家にはたいてい煙突がついますので、それらは皆築55年以上経っていることになります。

 イギリスに限らずヨーロッパには古い建物がたくさん残っています。古い家を改装して住むのが一種のステータスになっています。ロンドンから北西方向に車で2〜3時間ほど走ったところに広がる丘陵地帯はコッツウォル地方と呼ばれ、築300〜400年という古民家が残されています。
 これらの古民家の外観を変えることは法律で禁じられ保護されていますが、内装は割と自由にリフォームできるそうで、ロンドンの金融街の大立者(この表現自体が古い!)やムービースター達がこぞって移り住んでいるのだそうです。維持管理には莫大な経費がかかるそうですから、お金持ちでなければできないですね。

 リサイクルといえば、ロンドンの地下鉄の中で面白い光景に出会いました。乗客達が読み終えた新聞を、空いているシートや窓の下のスペースに置きざりにして下車するのです。そしてその新聞を次に座る人が何事も無かったように拾い上げて読み始めるのでした。
 中には隣の人が新聞を置いて降りるのを待ちきれずに、読み終えた途端「新聞をくれ」と頼んでいる人もいます。頼まれた方も当たり前のようにその人に新聞を渡すのでした。かくして1冊の新聞は、リレーのバトンのように何人もの人々の手の中を通って、くしゃくしゃになりながらも味わい尽くされるのでした。何という合理性でしょう。

 昔の日本は高度なリサイクル社会でした。穴のあいた鍋釜を修理した鋳掛屋、茶碗や陶器の修理をした焼継屋、古くなった傘のリサイクルなら古骨屋など、今ではなくなってしまった職業の多くはリサイクル関連の職業でした。物が少なかった時代は「家財」という言葉が意味する通り、日用品の換金性も高かったそうです。モノを大切に使うことが財産を守ることに直結していたのです。
 しかし、現代のような大量生産、大量消費の時代では、中古品の価格は一部のプレミアム品を除けば暴落し、一歩間違えばゴミとなってしまいます。モノを大切にしようといってもなかなか難しいかもしれません。だからといって何もしないわけにはいきません。
 「もったいない」を合言葉に、自分にできることから生活を見直してみよう。ロンドンの街を歩きながら、そんなことを考えていました。(花ちゃん)

(2007.8.17)


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