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コラム
砂時計

悪夢

 久しぶりに怖い夢を見て寝汗までかいた。夜の海岸で、真っ暗闇のなかを無理やりに、数人の男たちに手足をつかまれてボートに押し込まれそうになっていた。眼がさめて考えて見ると、夏休みに絵をかきにいった佐渡ヶ島の暗い寂しい海岸と北朝鮮による今回の拉致事件がダブったものだった。島にいると不思議なもので、対岸がアジア大陸であることが実感できる。実際に昔からミシハセなど大陸の異民族が来て集落をつくっていたことが日本書紀の記録にもあることをバスガイドさんがおしえてくれた。
 鎌倉時代には、モンゴルが勃興して元寇があった。室町時代には、逆に、和寇が大陸沿岸を荒らした。秀吉の朝鮮征伐では、陶工をはじめとする当時の先端技術者等がわが国に拉致されてきた。江戸時代には、鎖国政策もあり大陸との関係は、表面的には大きな波風の記録は無い。明治以降の近代史や特に太平洋戦争前後からの現代史は、まだ血生臭さが消えていないために、今のところ客観的な観察や分析には適さない。すぐにどちらが善でどちらが悪か、謝ったら得か損かすぐに計算がはたらくからである。
 もっとも、この点では、わが国政府は、対外的には謝罪してきた。しかしながら、これは、道義的に心から謝っているというよりも、先方が謝れと言うから仕方が無いので口先で謝っているだけと思われがちで、いくら謝ってもけりがつかない。今回、金総書記が謝罪したのは、口先だけのことかどうかこれからの交渉で、分かってくるでしょうが、アメリカは北朝鮮に対する不信感をまだといていないようです。
 当初、ブッシュ大統領が、北朝鮮をイラクとともに悪の枢軸と決めつけた時には、わが国は、ものごとをあいまいなままにしておくのが好きですから、ブッシュ大統領への共感は生まれずに、むしろ余計なことを云ってくれたと当惑気味ではなかったかと思います。これからの交渉で、わが国がこのテロ政府を支援してテコ入れをする結果にならないとはいえない。そんなことになれば、なんの罪もなくある日突然拉致されかの地で亡くなった方々に対し申し開きがたたないし、さらに、北朝鮮にすむ善良な人々に対しても間接的に被害をあたえることになりかねません。問題は、だからといって、触らぬ神に祟りなしとして交渉に蓋をしてしまっても、問題が自然治癒することは無いことです。問題はさらに大きく成長し、いずれ爆発すると認識するべきです。
 それは、よど号乗っ取りの犯人が今回の拉致事件にも関与していることでもわかります。従って、わが国は非常に難しい局面に立たされています。昔流にいえば、ここは挙国一致で交渉相手に隙をみせないようにしたいが、わが国は民主主義国である以上、議論百出はやむをえないところ。せめて、外交問題を国内の政争に利用する愚は避けて欲しい。
 国の平和や国民の安全は、平和憲法があれば護られるるわけではないし、超大国アメリカの核の傘の下にいてもテロ攻撃には極めてもろいことも実証された。国民の安全は、わが政府が責任をもって対応しなければならないことは論ずるまでもない。長期的な究極の目標としては、日本海を戦争の海ではなく海賊の横行する海でもなく平和の海にしたい。すなわちこの海を囲んで昔から関係が深い地域とわが国が一体となった経済圏を構築する。この平和の輪の中に北朝鮮も取り込む努力を忍耐強くしていく。それが、わが国の国益にも合致するし、また、今回、犠牲になった方々への慰霊ではないかと思うのです。(ジョージ)


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