農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム
砂時計

スキューバ・ダイビング

 最近、スキューバ・ダイビングを始めました。体にピッタリ張り付いたようなウエット・スーツ(潜水服)を着て酸素ボンベを背負って水に潜るスポーツです。私の所属するK―スポーツ・クラブ〈BSAC〉には5段階のレベルがあります。私は上から3番目の“スポーツダイバー”を目指しています。これまでに潜った最大水深は10メートルですが、30メートルまで潜れる訓練を受けています。
 圧縮空気を使うので、潜水病にかからないように潜水時間や水深には細心の注意を払わなければなりません。そのほかにも、いろいろな危険があるので、教える方も、教わる方も真剣です。酸素ボンベを背負っていると陸上ではやたらに重いし、なんでいまさらこんな難行苦行を、と思う瞬間もありますが、一度海に入ってしまうと、それを補って余りある喜びがあります。海中まで入り込んできらめく日の光、ゆらゆらと揺らいでいる海草、色とりどりの大小さまざまな魚、逃げるどころか闖入者を恐れずに向こうからこちらに近寄ってくる友好的な群れもいます。
 陸にいる時は、硬くなってきている身体が、海の中では、上下左右に自由自在に動くというと多少誇張になりますが、それに近い感覚なのです。この感覚や周囲の景色は、全く新しい経験であり驚きと感激の連続です。
 先生も生徒も20〜30代の若い方が大半ですがコトバや態度が、決して堅苦しくはないが、礼儀正しくまた誰に対しても一様に親切なのも印象的です。生徒の中には私のような中高年もいますが、聾唖学校の生徒さんもいて大変に楽しそうにしていました。海の中は“沈黙の世界“ですからハンディキャップはありません。泳ぎを知らなくても老若男女誰でも参加できるスポーツなのです。身近な海の中に自然がこんなに生き生きと残っていることをたくさんのヒトが知れば、海を大切に思い陸のごみを海にすてるようなことはしなくなり、環境問題改善のための意識も高まると思います。さらに大きく言えば、水深200メートルまでの大陸棚はわが国の領土として将来国際的にも認められる可能性が高いが、そうなるとわが国には新たに65万平方キロという領土が増えることになるそうです。
 この面積は、現在の国土の倍近い広さであり資源も豊富にあります。陸の日本は閉塞感が強いが、海洋国家・日本の将来は、まさに洋々たるものがあり希望が湧いてきます。鯨は一度陸上で進化した後、活躍の場を陸から海に変えた哺乳類として有名ですがひょっとすると人類も将来は、などと夢想するのは“窒素酔い”からでしょうか。
 ビジネスとしても、スキューバ・ダイビングは有望な分野だと思います。“学校“であると同時に、装備一式を販売斡旋する“物販業”であり、実習したり、その後の潜水ための“旅行業”の性格もあります。潜水場所には、そのための設備も船も必要です。要するに、総合的なサービス産業であり、付加価値を複合的に高めることができるのです。
 先進国の経済が“ソフト化“していくのは世界共通の流れです。たとえば、“ポケモン“関連のビジネスは”2兆円“を超えている《東洋経済8月30日》と聞くと、わが国のコメの生産額が3兆円にも足りないことと比べて改めて驚きます。農業を取り巻く経済・社会が急流のように岩をも跳ね飛ばしながら音をたてて変化しているのを感じます。 (譲二) (2003.9.9)

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