農業協同組合新聞 JACOM
 
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コラム
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食 育

 自民党の総裁選の時、小泉総裁候補は、教育問題に触れ、知育、体育とともに“食育”の必要性について説いていた。あまり耳慣れないコトバですが、後で調べたら、食育とは“食物と栄養の知識を深めて食についての自己管理能力を高める”ことだということです。最近、食物について話題になるときは、“安全性”についての心配であったり、産地やブランドの“表示問題”であったりすることが多いが、もっと基本的な問題として、“過食”による“肥満”が糖尿病をはじめとする諸々の成人病の原因であり、しかもそれが若年層にまで広がってきていることは周知のとおりです。
 若いとき、アメリカに駐在した時には、アメリカ人の体格の良さが印象的でしたが、だんだん慣れてくると腕の太さなどブルーカラーのヒトを中心に肉塊としか言いようがない異常な肥満が目に付くようになった。2回目の駐在のときには、若い人までがブクブク不健康にふとりはじめていた。それからまた4半世紀近くがすぎて気がついてみると、わが国でも昔アメリカで見たことが再現されつつあるどころか、我とわが身にも起こっていた。就職した時には、45キロしかなくて、やせてはいましたが健康でした。それが数年前のピーク時には72キロを超えました。それから努力して、現在やっと68キロ。昔の体になるまでには、“日暮れて道遠し”です。
 肥満者の数はここ10年足らずの間に世界中で50%増えて、途上国にも広がり、いまや地球規模の“疫病”だとニュースウイーク(9月10日)は断じています。同誌によると、アメリカの肥満率は、20年前が14.5%、現在31%つまり3人に1人が肥満であるの対し、日本は10年前2%、現在3%とされています。わが国についてはちょっとあまい感じがしますが増加率は世界水準であり大きい。
 肥満の原因は、単純ではなく運動不足や“個食”などライフスタイルの変化が複合的要因としてあるのでしょうが、アメリカ型のカロリー過多の食生活、具体的には、ファスト・フードやジャンク・フード、インスタント食品などを“主犯”とする見方が有力です。その反動としてか、最近、はやり始めたスロー・フードはヨーロッパで始まったようですが、わが国の伝統的な家庭料理、郷土料理はまさにコメ・野菜・魚中心の健康的なスロー・フードです。
 畜産の場合は、使用する飼料対比で生産する畜産物をできるだけ大きくするために、コスト効率を追求しますが、それとおなじことが、家庭でも、外食でも起こっているのではないでしょうか。つまり、料理をする手間・時間・費用を節約するために食事ではなく“飼料”が与えられているような気がします。家庭や、社会のありかたが変わったからと言ってしまえばそれまでですが、昔から医食同源といわれ、食事は健康の源であることは今も昔と変わりません。得たものとそれによって失ったものとどちらが大きいのでしょうか。
 首相が“徳育”と言うならまだわかりやすいが、どういう意図で“食育”が必要だと述べたのか肝心な部分を聞き漏らしましたが“肥満病”をこれ以上進行させないためにも“食育”は必要だと思います。
(譲二)(2003.10.24)

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