シリーズ 消費最前線 ―― 全農直販グループの販売戦略 ―― 最終回
提案型営業で 国産農畜産物の売場確保を |
◆トレサビリティーの時代に
――これまでの取材で関係者の方々からは食品流通をめぐる動きとして、牛丼やハンバーガーの思い切った値下げや輸入農産物増大にに象徴される「価格競争の激化」と、量販店のみならず生協ですら再編が迫られているほどの「厳しい生存競争」などが指摘されたほか、意外性のある商品が好まれるなど消費者のライフスタイルの変化がもたらす商品ニーズの変化、さらには富士山型から鉛筆・茶筒型へと形容される「商品のライフサイクルの短期化」といった動きがあることも分かりました。 河村 まず付け加えたいのがJAS法改正などによる「表示への関心の高まりと品質対策」ですね。 ◆提案型営業で伸びている直販事業 河村 このように、消費・流通サイドから安全や安心の科学的根拠を示せる国産物への期待が高まっている一方、反面で価格面での厳しさも増大していることも認識しなければなりません。 ――直販事業としては、チームMDをはじめユーザニーズに応える事業を展開してきていると思いますが…。 河村 ここ数年、事業拡大に直結するようかなり意識的にそういう活動をしてきました。その結果、全農全国本部の販売事業に占める直販比率は、11年度の9.9%から12年度には12.6%、金額ベースで3000億円近くになっています。 ◆商品・仕組みに消費者に訴える「物語性」を
――そうしたなかで、これからどのような事業展開を考えているのでしょうか。 河村 いままでの段階からもう一歩でも二歩でも前進して、ユーザニーズ、消費者の動きをキッチリととらまえて、国産物の売場をどう確保し常置していくかだと考えています。一律一価で全国のどこかで買ってくださいということはなかなか通用しません。いろいろな業態の商品政策、経営方針を十分把握して、それにあうような国産物の提案をしていかないと、売場は確保できません。 ――提案型営業をするときのポイントは何ですか。 河村 どの業態のトップにお会いしても、必ず異口同音にいわれることは、先程述べたトレサビリティ、すなわち「商品の履歴」を明確にすることに加え、「国産物に何か物語が欲しい」ということです。この品物はどういういわれがあり、どういう地域特性をもち、どういう作り方をされたのか、そしてどんなキャッチフレーズがあるのか。つまり、消費者に訴えるものが何かを、具体的に分るように提供してくれ、ということです。それを個々の取引先のポリシーやニーズに合致した内容でどう応えるかが、売場を確保する前提条件だといえます。 ――それが、輸入物と対抗する手段でもあるわけですね。そのためには、いま何をしなければならないでしょうか。 河村 輸入物と対抗するにはコストダウンは大きな課題ですが、一方でこうしたユーザーニーズをふまえた「物語性」とか「地域性」をよく認識して提案していかないと売場を失いかねません。われわれは直販事業強化のため(1)総合販促、(2)商品開発、(3)品質管理、を3本柱とする取り組み方向を打ち出し中期構想でも随所に折り込んで事業を展開しているところです。 ◆地域特性にあわせた品目横断的なエリア別営業を強化 ――エリア別営業機能の強化とはどういうことですか。 河村 ユーザーは生協の地域事業連合化のように、県域を超えたブロック単位の事業体が流通の主役になりつつあります。 |
農業協同組合新聞(社団法人農協協会) |