JA全国女性組織協議会は平成16年度からの新3か年計画「JA女性 かわろう かえよう宣言」を策定、その実践に向けて今、全国のJA女性組織で運動が進められている。宣言の柱は「いのち」、「自立」、「共生」、「組織」。座談会ではこの宣言の実践に向けた思いを出席者に語ってもらった。峰島会長が強調したのは「女性自らの意識改革」だ。その改革も自分たちの幸せにつながるよう既存の価値観や習慣を見直していくことだと訴えた。フレッシュミズの立場から角田理事は「宣言の実行が私たちの農業を守ることになる」と語り、地域でのさまざまな活動が自らの生き方や夢を広げることになると呼びかけた。また、小林氏は地域での地道な活動と同時に100万人という組織の力を生かして消費者と連携して日本の食と農を守る運動を起こすことへの期待を寄せた。
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■自ら変わり、そして成果を出そう
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峰島歌子
JA全国女性組織協議会会長 |
野口 今日の座談会はJA全国女性組織協議会の新3か年計画「JA女性 かわろう かえよう宣言」の実践をめざしてをテーマに話し合っていただきたいと思います。
最初に峰島会長からこの新3か年計画策定の経過と会長の思いをお聞かせください。
峰島 世のなかどんどん変わってきまして、私たちはこのままでは流されてしまうような不安を覚えているなかで、この新3か年計画を検討したわけです。そのなかで改革、改革と言われても何をどう変えればいいのか、という気持ちがありました。
そこで、私たちJA全国女性協としては、まず自分たちの意識を変えていこうということを考えたのです。自分が考えていること、気がつくことをもう一度自分なりに見つめ直して意識改革しようということを一つの大きな柱にしました。
変わるということは、既存の概念を変えることだと私は思っていますが、ただ、全部が全部だめなのではなく、やはり変わるといっても、自分たちの幸せにつながっていかなくてはならないということです。何でもいいから変わればいいというのではなくて、自分たちの幸せにつながるように変えていく。そしてこう変わりました、という成果が出て評価されるように取り組んでいこうというのがこの新3か年計画です。
野口 フレッシュミズの立場から角田理事は、この計画をどう受け止めていますか。
角田 今、世の中は変わってきて便利な世の中になっていますが、いちばん大事なものは何かということを新3か年計画の具体的なテーマ「いのち」、「自立」、「共生」、「組織」は思い起こさせてくれると考えています。フレッシュミズの立場でこの4つの柱について改めて考えてみると、私たちはこれから次世代へこの4本柱をつなぐ架け橋にならなければならないなと思っています。
それからこういう計画のもとで女性組織が活動していることが農村地帯での毎日の生活の楽しみ、いきがいを生むことにつながっているのだなと地元での活動を見ていてつくづく感じます。
■社会参画を進め地域づくりに貢献を
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小林綏枝 元秋田大学教授 |
峰島 そうですね。私たちが農村で生活しているということは農というなりわいのなかにいるということです。そこがいちばん大事なことだと私は思っています。この宣言によって、私たちが農というもののなかにいるということに改めて気がつき、それが各地でいろいろな取り組みの広がりになってきているのだと思います。
ただ、それぞれの活動もやはり社会に貢献していくこと、社会参画していくことが大切です。自分たちも成長していくとともに地域を変えていく、そんな活動に結集し発展していけばすばらしいことだなと思います。
野口 小林先生はJA女性組織の外部の立場から、この新3か年計画についてどう思われますか。
■JA女性組織から新しい経済システムをつくる
小林 JA女性組織は今、100万人という大組織ですね。各地での地道な活動も大切ですが大組織という利点を生かす活動も重要ではないかと私は期待しています。
私は今の日本の大きな問題は、経済民主主義がないことだと考えています。具体的な例として数年前、NREという企業が米国から駅弁を輸入することが発覚しましたね。そのとき、みんな怒りました。国民のための鉄道だといいながら、その系列企業が駅弁を輸入して売るということはどういうことだと、JA全国女性協も抗議しましたよね。私はあれが今どうなっているのかと思います。
私はあの出来事以来、絶対にNREのものは買わないと決めた。こういう宣言をJA全国女性協が行い、そして心ある消費者団体と共同で不買を訴えたら、すごい政治的なアピールになったのではないか。
しかし、あのときは怒ったけれども、今では旅行のときにはつい買ってしまうということになっているかもしれません。でも、まだJA女性組織として怒っているのであれば、やはり女性は財布を握っているのですから、たまの旅行とはいえ、自宅で弁当を作って持っていきましょうよ、というかたちでわいわいと闘うということもできるのではないか。外国から輸入してレンジでチンして食べるような弁当はよしましょう、という運動を大組織として考えていただけないかと思うんです。
一方で地元密着型の取り組みとしては、産直運動や直売所などへの取り組みがなされていると思いますが、生産者のみなさんは、消費者をどうしてもお客様として捉えてしまっていることが問題ではないかと思います。
私も実家が農家ですからこの年末も豆をもらい自分で選別したわけですが3分の1ほどはいわゆる不良品です。もったいないと思いながらもこれが現実です。しかし消費者は市場で売っているぴかぴかでまん丸の豆しか知りません。いびつだったり黒くなっているものがたくさんあって、それは捨てられているということは知らない。
ですから、もし消費者と交流するのであれば、消費者をお客様としてだけ考えるのではなくて、たとえば、豆でいえば選別せずにそのまま売ってしまう。その代わり価格は安くするから自分たちで食べられるものを選んでくださいという形にする。そうすればどれだけ豆というものが大変なものか、作る過程も大変だけれども市場に出てくるまでにも苦労があることが少しは分かると思います。
学校給食への食材の提供でも、ほうれんそうも小松菜もそのまま持っていって、子どもたちに洗ったり選別させたりしてはどうでしょうか。おかあさんたちが全部きれいにして出荷するのではなく、教育としてこういう体験を入れていけるように教育委員会に働きかけるといったことも実は地元密着型の活動ではないかと思いますね。経済の民主化というとおおげさに思えますが、こういう活動から経済民主主義もできていくのではないでしょうか。
このように大組織の利点を生かした活動と地元での地道な活動の両方の面から攻めていければこの新3か年計画の具体的な中身が濃いものになっていくのではないかと思います。
峰島 たしかにあの輸入弁当問題のときには私も街頭に立ってアピール活動をしましたが、そのときには燃えて運動しても運動を継続すること、そしてそのやり方を考えなくてはならないと改めて思いますね。もう買わないようにしましょうという話も出ましたが、それに組織全体で取り組まなかったことは反省点かもしれません。
ただ、買わないという運動だけではなく、私たちは何をしたらいいのかということもやはり考えるべきだということもありました。あのときも私たちの運動のなかから地域の食材を使った地産地消のお弁当をつくろうという話になり、起業して今や自分たちがお弁当屋さんになったJA女性部もあるんですね。
ですから、小林先生のご指摘から考えるのは、こういう地道な活動と同時に外国からの輸入が増えていて日本の農業はどうなっているのか、つまり、農政はどうなっているのかという点についても絡めて学習し、運動につなげていかなければならないと思います。
野口 あのときはみなで輸入弁当を試しに買って食べてみましたが、こんなおいしくないものは消費者は買わないだろう、やはり私たちの作る国産品のほうが支持される、という自信を持った面もありました。しかし、先ほど小林先生が言われたように消費者は農業のことを知らないのだとすると、もっと生産者がアピールすべきだったかもしれません。
こういうご指摘もふまえながら、峰島会長から今後の活動で重点的に取り組みたいとお考えのことをお話しいただけますか。
■女性の力が評価される時代のなかで
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角田佐知子
JA全国女性組織協議会理事 |
峰島 やはり女性参画ですね。思い返せば私が女性部活動に参加した年はちょうど国際婦人年でした。それからずっと女性参画が重要だと考えてきましたが、今は、女性の力を社会がある程度必要としていて、しかもそれを評価するようになったと思います。やはり女性が参画しなければ社会が成り立たないよ、という考えが出てきたのは一つの進歩だと思います。
ですから、そのためには女性も意識改革を進めなくてはならないということです。自分たちも農業経営に関わるとかですね。実権は握っているけれども弱いところがまだあり、何かにつけて「お父さんが…」という言葉が出てしまう。そのすべてが問題ではありませんが、やはり自分が経営に関わるという農業の姿を組み立てていくことは大事だと思いますね。ただ働けばいいということではないということに気づかなければなりません。
それからJAへの参画も課題ですが、今はどういう会議に出ても女性は一人です。そういう会議に出て思うのは、議論されていることは私たちがついていけない内容ではなく、むしろ自分たちのことなんです。それなのになぜ女性が一人しか出席できないのか、と思います。もっともっと女性が意見を出して一緒に考えていかないとと思います。
角田 私も全国女性協の理事になって全中の畜産・酪農対策本部委員会に出席しています。最初は難しい数字がびっしり並んでいて面食らいましたが、実際に私は養豚をやっているわけですからだんだん自分のこととして分ってきました。ただ、そういう場に出席する機会がこれまでになく、地元でも勉強会がありますが、やはり出席するのは夫でした。
ですから、私たちもそういう場で勉強ができればもっともっと自信が持て、いろいろな場に出ていけるようになると思います。夫に対して、今日の会合には自分が出席するから、と言えるぐらいになればもっと力が出てくると思います。でも、まだまだ地域では女性は一歩下がって、という感じがあります。
峰島 確かにそうです。だからそこから変えていかなくてはならないと思います。
小林 でも、農村地域の女性は家のなかではみなさん女王(笑)じゃないですか。だんなさんはエジンバラ公のような方ばっかり(笑)。ただ、それは家のなかでは、ということかもしれませんね。そこが不思議で、むしろ女性は利口だから家の外のことはエジンバラ公にやってもらえばいい、ということかなと思っていますがどうですか。
角田 私のまわりでは本当は外に出たいけれども出られないという雰囲気があると思います。周りがそうだから自分も、とどうしても考えてしまう。
■農業者としての自立と自然体の共同参画
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野口洋子
JA全中女性組織活性化対策室室長 |
峰島 兼業農家では、たいてい夫が勤めていて女性が農業をしているわけですが、いざ農家組合の会合なんかがあると男の人が出席してしまう。でも私はそれではおかしいんじゃないのと言って出席してきました。農業をしているのは私ですから、と。しかし、出席してみると女性は私だけ。そうすると、今度すごく生意気なお嫁さんが来たぞ(笑)、というようなことが当時は言われたものです。
ただ、少しづつ変わってきて自分の意見を言う女性が増えてきているとは思います。
そういう変化のなかでの成果ですが、最近、地元JAの合併で支所が空くので、そこを学童保育施設にしようということになりました。学校と町とそして私たちJA女性部も関わって2か所つくりました。女性部ではボランティアでいろいろな食べ物をつくって提供しようと考えています。
小林 それはすばらしい取り組みですね。今後は男性、お父さんもその学童保育の活動のなかに巻き込めれば、もっと大きな活動が期待できるのではないでしょうか。
峰島 そうですね。実際に男性も変わってきていると思います。今、女性部では地産地消の運動に盛んに取り組んでいますが、直売所活動にしても男性が後押ししてくれるといいますか、見ていられなくなって、そんなにやるんなら俺も手伝うよ、という形になってきています。
これを私は、自然体の男女共同参画、だと言っています。ですから男女共同参画とは、この会の役員に女性が何人なるべき、ということだけではなくて、やはり男女が一緒に農という営みをやっていく、この姿が、自然体で男女共同参画が進んでいくということだと思いますし、それが「かわろう、かえよう」ということだと考えています。
■問われる家庭力――。 助け合いの精神で支えよう
小林 少し角度を変えて学生に教えていた立場から問題提起をさせていただくと今の若者たちは一日中かったるそうにしているんですね。一時限目の授業からもう寝ていたり。それはなぜかと思って生活時間を調査しようと朝ごはんを何時に食べるかを聞くと12時ごろまでにばらついたんです。昼ごはんとなると夕方まで時間がばらつく。世間一般が考えるような時間のリズムが今の若い男性にはなくなっているのではないかと思いました。
これは食生活の乱れというようなものではなく、お腹が空いたら何か食べたい、という欲求すらなくなりつつあるのが、今の生物としての若い男性なのではないかとさえ感じます。
そして日本の食事という文化がなくなってしまって、食べたいときにいつでもコンビニに行けば食べられるということではマナーも文化も何もなくなってしまう。その点でもJAの女性組織と消費者団体が連携してお米を炊いておにぎりにして若者が食べられるようなことを地元でなんとか実現できないかと期待したこともありましたが。
峰島 先生の言われたことは深刻だなと思います。ただ、私は子どもの食事を家庭のなかできちんとするということも本当は男女共同参画の問題だと思っています。女の人がいつも台所に立たないといけないとは限らないし、やれる人がやればいいということにならなければいけない。
この20年の間に女性が社会に進出して女性が家を空けるようになったわけですが、子どもはもちろん夫が食事を作るということになったわけではありませんよね。核家族も増え、こういうなかで家庭の力がなくなってきたことが小林先生のご指摘のような問題を生んだと私は思います。そこがこれまでの男女共同参画の問題だったのではないか。
まず家庭のなかで男女共同参画が進まなければ、いくら共同参画と叫んでもやはりひずみが出てくる。そのひずみが子どもたちが朝食事をしないとか、犯罪の増加などに現れてきたと思います。
ですから、男女共同参画を進めるときには、まず家庭から始める、ということと、家庭力を落とさないように参画できるよう、みんなが支援していく社会制度も考えていかなければならないと思います。
男女共同参画とは、ただJAの理事に女性が何人登用されるかということだけでは決してないと思います。家庭のなかでの男女共同参画が根底にあることが重要であって、ただただ女性が社会進出していけばいいということではないことを、これまでを振り返ってつくづく思いますね。
■組織は仲間 農村女性の子育て支援も課題
野口 ここで女性農業者にとっての女性部活動について考えてみたいと思いますが、角田理事は夫と養豚業をやりながらJA女性部の活動にも参加してきました。自分の農業と組織活動について振り返ってみていかがですか。
角田 主に夫と2人で養豚業をやっていますが、やはり子育て時期がいちばん大変でしたね。幼稚園では午後早くに家に帰ってきてしまいますから保育園に預けなければ働けませんが、どこもいっぱいで、やっとの思いで預けられました。
私は農業を知らなかったものですから、養豚も一から始めて、今は一通りスムーズにできるようになったんですが、それは夫がケガをしたり病気になったりして全部自分でやらなければならない時期があったからです。それでどんと来い、という気になった(笑)。そういう意味では、自分で何でもやらなければいけない時があったことで、私も認められるようになり、外にも出ていけるようになったということですね。あと、家族の協力がなければだめです。
野口 ピンチをチャンスに変えたということですね。大変な時期は女性部の活動はどうだったのでしょうか。
角田 舅の協力はありましたが、主に1人で1500頭の面倒をみるわけですから、活動に参加するのはまったく無理でした。女性部ではホームヘルパー活動などもやっていましたが大変な時期は休ませてもらってました。ただ、仲間がいるから励ましにもなるしがんばれてこれたと思います。
それからこの組織はすごいなと思うのは、全国にいろいろな農村女性がいてそれを知ることが自分にとって大切なことになってきたことです。たとえば農家レストランなどをはじめている女性がいることを知ったりすると、すごいな、私もやらなきゃな、と力が出てきますよね。自分の生き方も夢も広がってくるということがあります。
野口 ところで、角田理事の体験からも、女性農業者として自立するためにも子育て期に何らかの支援がないと継続して農業者として営農していくことは難しいですし、農業者ではなくても、小さい子どもを抱えて家のなかで悩んでいる女性もいると思われます。今後の課題として出産・子育て期にある女性に対して何らかの支援ができないかと女性協としても考えています。まず峰島会長からお考えを聞かせてください。
峰島 私たちの子育て時代は農業をやっていますと隣近所と密接な関係が保たれていますから、ちょっと買い物に行くからお願いね、と子どもを預けていくことはしばしばありました。
しかし、今は子どもを育てる不安もあるし、地域にとけ込めるのだろうかという不安を抱えている若いお母さんもいると思います。
だからやはりどこまで支援できるかということは難しいですが、組織があるのだからあなたも組織に入って一緒にやりませんか、と呼びかける活動から始めることでしょうね。私の地元でも、フラワーアレンジメントの教室に、お子さん連れてきていいですよ、教室の間は私たちが子どもをみててあげるから、という形で支援しています。JA女性部というものがあるから、私は子どもを連れても出かけていける、という評価につながっていくような活動ですね。
そういう活動から、若い女性たちにもJA女性部の部員になってもらうということもあります。やはりJA女性部というものがあれば、子どもも安心して育てられるんだという大きな役割を果たしていければなと思っています。
角田 私たちの地域ではお嫁さんがくれば、必ず女性部が声をかけていてこれまではみなさん入部してくれました。ただ、最近の問題はお嫁さん自体が来なくなってしまったことで、その点では魅力ある農村づくりから始めなくてはならないと思っています。
女性農業者たちが生き生きとして農業をしていなければ、後を継ごうという子どもも育ちません。私は楽しく農業をやっている、はつらつとしている、どこにでも出ていくという活動をしていたいと思っています。そういう女性農業者が育つためにも子育て支援は重要だと思いますね。
■農政にも女性の力を発揮しよう
小林 先ほど峰島会長からJAの施設を使った学童保育の取り組みが紹介されましたが、ぜひともJA仕様の学童保育を実践してもらたいと思います。たとえば、木登りができる子どもは、今は尊敬されるといいますから、そういう体験をさせるとか、マキ割りが上手になるとか、今や多くの家庭や地域では危険だといって子どもにやらせていないことをやるなど。農業体験だけでなく地域の文化も含めて伝える場にしてもらえればと思いますね。
峰島 まだ始めたばかりですが栗の落ちる時期には栗拾いに出かけたり、落花生の収穫をさせたり、すぐそばにある農地を学童保育が利用するというかたちができればいいと思っています。今までは農業体験教室、というかたちで子どもたちを集めていましたが、いつも子どもたちが集まっている場所があって、そこでさまざまな体験をするという取り組みにしたいです。
小林 そういう場ができて普通の学童保育では利用できないような低年齢の子どもも集まっていいということになったら、子育ての支援の場にもなると思いますね。
楽しい場所、幸せになる時間、そういう体験が全国各地から多様にわき出てきたら子どもたちも農村に育ってよかったなということになると思います。
峰島 そうですね。子育て支援をすることも大事な課題ですが、その農村を守ることも基本になければならないと思います。
私は農政関係の会議に出席して、日本の農業、農村はどうなってしまうのか、兼業農家や小さな農家はどうなってしまうのかという不安を感じます。今は担い手を育て、そこだけを支援していくということが言われていますが、やはり兼業あり零細ありで地域の農業があって、それで自然も守られてきたわけですし、歴史のなかで受け継がれてきた人間らしさもある。そういう大事なものを今は壊そう、壊そうとしているのではないか。そこを非常に不安に思うんですね。日本は小さな国だから、外国の農業のような仕組みじゃなくて、日本の風土にあった農業をやっていけるような農政にぜひしてほしいし、私たちががんばってそうさせていかなくてはいけないと思っています。
■JA改革 意思決定に女性の参画が不可欠
野口 課題も含めてJA女性組織の活動について話しあっていただきましたが、最後にJAに対しての要望などがありましたらお願いします。
峰島 長く女性部活動をしてきて思うのは、やはり私たちがJAのことを思うのですから、言葉は悪いかもしれませんが、JAも女性部の力を利用してもらいたいですね。その利用の仕方ですが、やはり一緒に計画を立てて決定していくというように、もっと自然に意思決定の場に私たちが参画していくような方法をとってほしいということです。
■社会を変える力もある――。 農の豊かさを自信に
峰島 私たちも男性に任せておけばいいと思ってきたところがありますが、やはり自分たちも変わって、どんどん意思決定の場に出ていかないと本当に変わっていかないんです。
たとえば、学童保育施設にしても、農産物加工所の設置にしても、JAの意思決定の場で私たちはそれを主張していかなければなりません。そしてJAも意思決定の場に女性を参画させるべきだということです。そうしないと女性組織から、もうJAに頼らなくて自分たちでやりましょう、という話が出ることにもなります。実際、部員のなかからそういう意見が出てくるんです。それで私のほうが、ちょっと待って、私たちはJAの女性部よ(笑)と言わなければならないほど。そこにはやはりJAも気がつかなくてはいけないと思いますね。
野口 さきほど、小林先生はJA女性組織に対して、消費者団体などと連携した運動の大切を強調されました。改めてJA女性組織に期待することお聞かせください。
小林 ぜひみなさんに指導力を発揮していただきたいと思います。消費者団体に加入している人もたくさんいますが、ほとんどの消費者はばらばらです。ぜひリーダーシップを発揮して中核になってまとめていただきたい。母親であること、地域住民であること。農業者も消費者でもあるわけですね。そういう意味で共通項がたくさんあるわけですから。峰島会長の話に関連づけていえば、JAがはっきりしなければ私たちは消費者と一緒にやっていくわよ、というぐらいのことがあっていいと思います。
角田 「変わろう、かえよう宣言」をすることが自分たちの農業を守ることにもなっていると思いますね。私は養豚農家ですから野菜農家が直売所に出荷するように自分たちで価格を決めることができません。そこが寂しいのですが、最近はいろいろな加工所の話を聞いて、私も何かやるぞと考えています。たとえば、ウインナーを作って売る。そのための加工施設とか免許などをとって売り出すぞ、という気持ちが全国女性協に出てきてわいてきました。
峰島 変わろうよ、何かを変えていこうよ、という波は確かに全国で起きています。それもみんな農を大事にしていることがJA女性組織のすばらしいところだと思います。やはり農に携わっていることで、生きていくことに対して安心感があると思いますし、運動の仕方によっては本当に世の中を変えることができると思うすばらしい組織です。
野口 今日はありがとうございました。
座談会を終えて
峰島会長と角田理事のお話を聞いていると、農業の豊かさ、可能性がびんびん伝わり、生産手段を持たない消費者の悲哀をつくづく感じました。今までは農業の強さ、すばらしさは、「いぶし銀」のように発揮されていましたが、これから女性がもっと前に出るようになれば、「ダイヤモンド」のように光り輝くイメージで表現されるはずです。
小林さんのご指摘にあるように、JA女性組織メンバーは、農業者、母親、消費者、地域住民、女性と様々な顔を持っています。これは個人として当たり前のことですが、メンバーはこれに加え、JAの組合員組織である女性組織という活動の舞台を持っています。
マンネリ化、メンバー減少などマイナス要素ばかりが目につきがちですが、メンバー自身が自分の位置づけの優位性を発見し、そこを起点に柔軟に広く社会と手をつないでいけば、「こわいものなし」の勢いだと、力をもらいました。(野口) |
(2005.1.19)