◆支援と激励を活力に追い打ち被害にも対応
JA越後ながおか(新潟県)
田井忠榮 経営管理委員会会長
旧山古志村にはまだ無許可では入れないためJA共済としても損害の調査・査定は、これからですが、すでに調査準備は始めました(5月11日現在)。
それ以外の管内では、すでに建物更生を主体とした共済金約152億円の支払いをすでに終わっています。支払件数は約1万7700件にのぼります。
JAは地震の発生(昨年10月23日)直後から「被災者の一番身近な組織はJAだ。とにかく組合員宅の全戸を回って被害を調査し、救援しよう。喜ばれることはすぐやろう」と、役職員たちは自宅がつぶれたのを顧みないで活動しました。因みに長岡市内にある私の家も半壊となりました。
しかし避難所生活の組合員も多く、その後は仮設住宅に移った人もいます。共済ではLAたちが、そこを訪ねて当面の相談に乗り、被害状況を調べました。さらに共済契約者の心痛を軽減するため積雪前の査定終了と可能な限りの年内支払いを目指しました。
その結果、共済金を手にした組合員からは「助かった」「ありがたい」「共済に入っていてよかった」などの声が聞かれます。
このため今年の普及推進は例年より進度が速く、また新契約の約7割が建更です。目標は750億円(保障額)ですが、この分なら800億円以上は達成できると思います。員外の地域住民の加入も増えています。
とにかく損保との比較では、JA共済の支払対応が評価され員外の方にも広がっています。
しかし今回は余震の頻発で追い打ち被害があり、JA共済は、これをきちんと追加査定したため終了が遅くなるケースもありましたが、結果的には1回の査定で打ち切った損保よりも、支払額がぐんと増え、こうした点も喜ばれています。
私どもは、今回のような大地震は初めてなので当初は、どこから手を付けようかと困り果てましたが、全国から支援の査定員が多数駆けつけてくれて大助かりでした。改めて心からのお礼を申し上げます。
JAグループを挙げての救援物資や多額の義捐金もいただき、これらは精神的な支えともなり、復興への活力源となっています。
いただいた活力と、支払い共済金などをバネに今度は農業復興です。その1つとして、米3万俵が入るJAの低温倉庫を自前で建設することになり、4月29日に起工式を挙げました。
これは2万5000俵収容の倉庫が地震でダメになったためです。うちは30万俵を集荷するので、農家の不安を解消しようと秋の集荷に間に合うように急拠、着工したわけです。今後は田植えの遅れを取り戻すとか作業体系の調整など営農指導に力を入れていきます。
管内の農地は8000haあり、うち600haが土砂流入などの被害を受けましたが、復旧を急いで水路を直すなどし、すでに水が張れる水田もあります。しかし300haは作付不能です。
またJAの施設被害はカントリーエレベーターなど約4億4000万円にのぼってます。
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◆「早い! 助かった!」 改めて共済の使命痛感
JA京都にのくに(京都府)
高橋秀文 常務
昨年10月20日の台風23号による由良川沿いの水没では、バスの屋根に上って救いを求める乗客の映像が記憶に新しいと思います。
JAでは加佐と大江の2支店が大きな被害を受け、窓口端末機などもすべて麻痺してしまいました。このためJAグループ京都やJA共済連の支援を仰ぎました。
職員の中には自分の家が水没したため放心状態で仕事が手に着かない者もいたので、この応援は大助かりでした。2支店はまず営業再開を急ぎ、ずぶ濡れの書類を1枚1枚はがして会議室にずらりと並べ、アイロンで乾かしたりしました。
その中には共済関係の書類や用紙も多く、こうした地味な復旧作業が支払い共済金請求を早める準備となって、被災組合員への早期対応に貢献しました。
一方では「うちの家を見に来てくれ」「壊れたハウスの処理を手伝ってくれ」など組合員からの電話も相次ぎ、営農の職員はハウス処理に回り、全職員が休日返上で活動しました。
また被害のなかった支店のLAたち全員を2支店に投入し、被災者宅のお見舞い訪問をさせました。
面識のない農家を訪ねるとあって、JA職員であることを認識してもらいやすくするためにイベント用の派手なブルゾンを着用させ、被災の書類の書き方なども説明しました。
こうして共済の査定が進みましたが、自動車の水没も多く、これは自動車課の査定係が対応しました。
査定件数は建更だけで約2500件、支払い共済金は約23億円にのぼっています。
これに対し被災組合員からは「農協さんは早く来てくれた」「支払いも早かった」「こんなにもらえるとは思わなかった」などの声が聞かれます。
今回のような家屋倒壊とか埋没といった大きな災害は初めてなので、付き合い程度で契約していた被災者としては「助かった」「大いに役立った」という思いがひとしおではなかったかと思います。
私としても、JA共済が生命と財産を守っていく大変な事業であることを改めて痛感しました。
「ひと、いえ、くるま」の保障は今の時代になくてはならないものであり、この保障の輪をもっと大きく広げていく運動をさらに展開させる必要があります。
建更には昨年からの新しい「むてき」と、従来の仕組みがあり、今回、支払額に差がついたため「むてきに切り替えていて、よかった」という声と「そんな良い仕組みを、なぜ、もっと早く知らせてくれなかったのか」という苦情も出ました。
これは「むてき」の推進がすべての契約者に行き届いていなかったり、説明不十分だったためです。これを反省して今後の推進では全契約者に「むてき」を知らせ、切り替えだけでなく新規契約も拡大します。また員外にもアピールしていきます。 一方、水田に泥が入ったり、農機の水没やハウスの倒壊から、今年の作付を断念する人や、農業をやめるという人もいます。課題としては、こうした農家への今後の対策が必要であります。
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◆被災者の心情汲んで相談受ける姿勢で査定
JA福井市(福井県)
山田俊臣 経営管理委員会会長
昨年7月12日の集中豪雨が100年に1度といわれる大災害を管内にもたらしました。山崩れで立木や間伐材を巻き込んだ土砂が濁流となり、足羽川の堤防が切れて氾らん、橋や施設を破壊し、民家や自動車を押し流すといった状況でした。 田畑も砂利や泥で埋まりましたが、さらには、保管していた米を納屋もろとも流された農家もあります。
とくにひどかったのは、朝倉氏遺跡で知られる一乗谷で、ここには全国から復旧支援のボランティアが駆けつけてくれ、また自衛隊も出動しました。
JAでは、すぐに全職員を集め、私の陣頭指揮で復旧作業にかかり、ねじり鉢巻きで奮闘しました。
組合員個々の建物被害は全壊よりも、多かったのは半壊と床上浸水でした。といっても徐々に水かさが増す浸水ではなく、濁流が飛び込んでくる状況でした。被害状況を写真に撮ったりする調査の仕事は、共済以外の職員もやり、災害対応の迅速化を図りました。共済の査定では担当職員が一軒の家に何度も足を運び、納得づくの査定を進めました。これは「どんなことでもJAに相談して下さい」という基本姿勢によるものです。顔見知りの職員との対話なので、組合員のほうもムリなことをいう人はありませんでした。
ほかの保険では何度も足を運ぶのは非効率ですし、会社側の立場で対応しますが、JA共済としては、組合員とJAの気持ちのつながりを大事にしました。
一方で、私は、査定が済めば「共済金を即時支払うように」と指示し、騒ぎが落ち着くと同時に、県本部の協力で支払いを済ませ、被災者から大変喜ばれました。支払いは早ければ早いほどありがたいのが人間の気持ちですから、これを大切にしたわけです。
建更は件数で約2000件、支払い共済金は約12億円ですが、自動車の損害も大きく、自動車共済の支払いが1億2000万円以上あります。
こうしてJA共済が生活面の復旧に貢献したことを受け、今は農地の回復や営農指導に努めています。
しかし一乗地区の水田には砂利がたくさん流入し、農業機械が使えないため今年は作付できません。
JAの被害では一乗支店と本郷支店がとくにひどくやられました。
最後に1つエピソードを申し上げますと、一乗の支店長は女性ですが、豪雨の当日、川を歩いて渡り、支店に駆けつけて、書類その他の重要なものをすべて高いところに上げました。
そこへ川の堤防が切れて濁流が押し寄せたため2階に避難し、安否を気遣う夫と携帯で連絡を取り合って水が引くのを待ちました。支店に向かう時に「危ないからやめろ」と止める人もいたのですが、彼女は職場の保全に命を張ったわけです。組合にとって貴重な物を少しでも救おうとした献身的な使命感と、その根性にはびっくりしました。
そこで、今後の災害対策の教訓にもなることだと考えて今春、役員会で決めて、この支店長を特別表彰してその奮闘を称えました。
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◆地球温暖化が追い風?今年の推進も出足好調
JAあまくさ(熊本県)
武部満 組合長
天草は台風の常襲地帯ですが、昨年はまた格別で、とくに9月5日の台風18号と、26日の台風21号がひどく、秋雨前線をともなった21号は大雨となりました。このため主産のカンキツ類は5、6割の玉が落ちました。パイプハウスもたくさんつぶれました。
また野菜ではインゲンやオクラが潮風の塩害で半分ほどやられました。
建物の被害は建更の査定で約4800件に及び、支払い共済金は15億5000万円にのぼっています。
全壊も半壊もありますが、猛烈な風で屋根瓦が吹き飛んで家の中の家財道具や畳などが水びたしとなるケースが目立ちました。ひどいのは屋根が丸ごと吹っ飛んで車を押しつぶした被害なども出ました。畜舎もやられています。車のほうは自動車共済で支払いました。
そうした被害に対してはJAの全職員が自分の家の心配をそっちのけで調査に回りました。また畑を回って壊れたハウスの修復を手伝ったりもしました。
職員は台風がくるとなると、前の晩から当番制のような形で、JAの事務所に泊まり込んで台風情報を聞きながら警戒に当たる体制をとっています。
共済金は早く支払っていますが、受け取った組合員から非常に感謝されています。というのは、昨年発売された新しい仕組みの建更「むてき」に切り替えた人が多く、そのあとすぐ支払いを受けたからです。
「むてき」は、以前からの建更の仕組みに比べ保障内容がぐんと充実しています。このため契約者の25%ほどが切り替えており、この共済金の支払いを機にJAへの信頼が一段と高まった形です。
こうして、16年度の推進は約500億円(保障額)が新契約の目標でしたが、3月末の実績は、これをはるかに上回る652億円を達成しました。その約9割は建更の新契約です。
これでは、ほかの共済に影響するため今は生命系を3割にという目標の堅持を強調しています。
しかし地球温暖化という大きな問題を考えると、昨年のような矢継ぎ早の台風襲来が今年もくり返される恐れがあります。そんな心配からも建更の人気は高く、地域住民の契約もあって、今年の推進も建更を中心に出足は好調です。
天草では、台風が1つ来ると農業所得が半減するとまでいわれています。このため後継者が減り、耕作放棄地が増えています。
農作物がダメになった上に、家屋まで被害を受けるとなれば二重三重の打撃です。それが建更の保障によって、住むところだけは何とか修復できるというのは心強い限りです。
耕作放棄地については、これを借りて集積し、整備をするJAの生産法人をつくり、認定農業者や法人などの担い手に貸す事業を起こしたいと、準備を進めています。
こうして農地保有合理化事業の中で耕作放棄地対策を、担い手対策と併せて進めていきたいと考えています。
またパイプハウスは台風に弱いので耐候性ハウスへの転換も進めています。