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特集 生産者と消費者の架け橋築く新生全農の役割 |
インタビュー すべての情報を公開することが協同組合の最大の武器 生活クラブ事業連合生協連会長河野栄次氏に聞く |
全農会長の諮問機関である「全農改革委員会」では、現在の全農が抱える問題点からこれからの全農のあるべき姿まで、多くのことが議論され、最終的に「答申」としてまとめられた。同じ協同組合の代表としてこの改革委員会の委員として参画された河野栄次生活クラブ事業連合会長に、全農の改革を成功させるためには何がポイントなのかを、委員会での議論も含めて率直に語ってもらった。この中で河野会長は、協同組合の原則や価値を踏まえて組織運営・事業展開することと、旧来の制度依存ではなく、国民の食料を担っていることに自信をもち、自ら制度をつくり販売事業戦略を構築することが重要だと強調した。 | |||
◆協同組合の優位性が認識されていない
――全農改革委員会でどうのようなことを感じられましたか。 河野 一番重要なことは、日本の食料生産について、JAグループの役割が圧倒的に大きいということを再認識をしたことです。JAグループ全体で基幹の食料生産に関する販売・購買事業で6兆円の規模があります。なおかつ、全中含めて農林中金やJA共済連を含めて、ありとあらゆることをやっていて、これを肩代わりすることは、トヨタでもできないと思いました。 ◆市場経済が前提となっている農協法の改正 河野 三つ目は、この作業をやる中でもう一度、農協法全文を読み返してみました。そのことで分かったことは、農協法の改正は商法に準拠しているということです。だからこの法律を読むためには商法を横に置いて読まないと理解できません。つまり、いつの間にか市場経済が前提条件になって企業活動の仕組みをここに取り込んできている。もちろん、取り込んでいいこともあります。しかし、協同組合のアイデンティティである価値と原則に基づいて、人の組織としての在り様をキチンとしないと、いつの間にか協同組合の本質を逸脱した形が出てきます。 ――逸脱した形とは具体的にはどういうことですか。 河野 一つは経営管理委員会システムです。総代会で経営委員を選び、経営委員が理事長を指名する。社会的責任は経営委員会の会長にはなくて理事長にある。こんなことは協同組合ではありえません。このことは改革委員会のなかで最後まで議論になりました。 ◆官と民の間で大きな役割を果たしている協同組合 ――「官から民へ」という考え方に通じるものがありますね。 河野 今回の選挙でどの政党も「官から民へ」といっています。しかし、官と民の中間に非営利・協同組合セクターが存在し、今日、それが大きくなっています。いまの社会は、国家ですべてができなくなり、民間に委託するといっても成り立たない構造をもっているわけです。まさに共助・自助という枠組みの中に地域があり、官・民という二極で全てがすむわけではありません。 ――JAグループもそういう認識をもたなければいけないわけですね。 河野 JAグループは自分たちの社会的位置を十分に認識していないと思います。改革委でもそのことをいいましたが、事業改革がテーマということで議論になりませんでした。組合員の生活をよくすることが協同組合の目的で、事業はその一つの手段だといったのですがね。企業は営利を目的として事業をします。だから、企業の代表者は明快に全農は効率的でないといいます。それは直さなければいけない。しかし、効率的であっても人びとの生活を脅かしてはいけないわけです。郵政民営化の議論はそこにあるわけです。 ◆循環型社会実現に取り組むことが全農の社会的責任 ――消費者団体からみて、これから全農が果たさなければならない役割はなんですか。 河野 1億2700万人の食料生産の担い手だということです。 ◆負の情報も含めて公開するすることこそが ――「情報開示」も大きなテーマですね。 河野 BSE以降、食品の安全・安心に関するテーマが大きくなりました。そのときに、全農は生産するところから最終ユーザまで、組織の中で連携していますから、その間のすべての情報開示ができる組織です。ここまでの情報開示は他ではできません。だから、情報開示することが一番のキーになる。企業に対抗するときに協同組合にとって何が武器かといえば情報公開だと思います。 ◆部署ごとに全員参加のマニュアルづくりを ――負の情報も含めて本当に情報開示することができるかどうかですね。 河野 するんです。そのためには、裄V会長が全国の全JAから県本部を通さずに直接、一切のタブーやいままでのこだわりなしに意見を聞き、農業を再生産していく必要な事項を全部出してもらうことです。その意見を、直ちにやらなければいけないこと、長期にかかること。それらを日にちを区切り、整理して経営委員会で議論し決定する。 ◆販売チャネル別の営業戦略を構築する ――改革を成功させるためには、その他に何が必要ですか。 河野 全農は今日まで、制度に基づいて事業展開してきました。しかし、アテにしていたその制度が完全に崩壊したんだという認識をすべきです。 ――生活クラブは全農の経営役員にも入られましたね。 河野 生活クラブ事業連合の総会で全農に呑み込まれてしまうのかという意見もありましたが、呑み込まれるのではなくて、共同責任になったというのが、組合員の意見です。少なくとも食料自給というテーマは生活クラブだけの戦略から全農とともに進める戦略になり始めた。言葉だけではなく実態をそうしようと考えています。 ――ありがとうございました。 |
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(2005.9.27) |
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