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特集 生産者と消費者の架け橋を築くために |
特集2 農協批判の本質を考え改革のあり方を探る |
農業の根本的な問題は低い自給率に 運動が事業をつくり、事業が運動をつくる 若森資朗 パルシステム生協連合会専務理事に聞く |
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◆組合員の生活全般に役立つ付加価値の高い事業を展開
田代 パルシステムに名称を変更された理由は何でしょうか。 若森 最近、生協自身が事業的に厳しい環境にあり事業面ばかりが強調され、生協はモノを売る組織というイメージが強くなっています。そうした古いイメージを脱ぎ、新しい生協をつくろうという考えです。 田代 「個人対応型」と個人を強調する狙いは何ですか。 若森 無店舗共同購入では班として組織化して事業をし、班のなかでいろいろなことを解決していこうという考え方です。しかし、いまの生活環境や生活感覚からは、班活動できる人に限界があり、入れない個人は世の中にたくさんいます。そうした個人にキッチリと視点をおいて見つめていき、生協組合員というネットワークをつくり、生協が組織的に生活をどう支援・保障するのかも生協の役割だと考えています。 田代 パルシステムは個配とは違うといわれていますが、その違いについて。 若森 パルシステムはただ単にモノを売る購買事業だけを考えているわけではありません。パルシステムは、組合員の生活全般に対して役立つような付加価値が高い事業として位置づけています。生協をすぐれた活動組織としてとらえ「運動が事業をつくり、事業が運動をつくる」というのが基本的な考え方です。 ◆農業の多面的な価値を見直し、豊かな地域社会を ―産直事業 田代 産直については「生活者の健康で安心なくらしに貢献するため、農業の持つ多様な価値を見直し、環境保全・資源循環を基本に、豊かな地域社会をつくる」ことを目的に掲げられていますね。 若森 私たちの産直は、単に「産地直送」ということではないということです。30年の歴史がありますが、最初は他の生協と同じで安全な食品を欲しいということでした。その頃は産直をする生産者は地域では変わり者扱いでした。しかし彼らは地域社会の活性化のためにいろいろな思いをもっており、自分たちの農産物を買ってくれる仲間づくりしたいと考えていました。当初は私たちの組織も小さかったので点と点の結びつきでした。 田代 年間、何人くらい参加していますか。 若森 一般組合員の参加が増え、年間延べ2万人くらいが参加しています。そしていま力を入れているのは、子どもたちが参加する「田んぼの学校」といっていますが生き物観察です。 田代 ヨーロッパの生協では子どもに対する協同組合教育に力を入れていますね。 若森 私たちは注文誌を3つに分けていますが、2歳くらいまでの子どもをもつ人を対象にした「YUMYUM」が増えています。この若い層は問題意識が多様ですし、積極的です。私たちは「産直と環境のパルシステム」といっていますが、それに「おしゃれ」を入れて欲しいという提案もあります。そのような意味も加えて組合員の層を広げたいと思っています。 ◆地域に合った形で持続的に農業が続けられるように
田代 農業については「新農業モデル産地づくり」ということを提案されていますが、具体的にはどういう内容ですか。 若森 環境に優しく持続可能な農業ということです。一つはできた食べ物も大切ですが、作っている人とそこに住んでいる人に優しい農業をやろうということです。化学者によっては農薬は進歩し低濃度で残留しないから使ってもいいといいますが、私は違うと思います。農薬を使うことは虫などを殺しているわけだから、生態系を壊しているわけです。そのことをやめる農業をしないと、生態系が崩れ、そこに住んでいる人たちが蝕まれることに変わりはない。だから、そうではない農業を地域ぐるみでやっていきましょうということです。それを広げるためには、購買力を高めなければいけないから、私たちは都市のなかで、理解してくれる人たちを組織していきましょうということです。 田代 ささかみはその一つのモデルなわけですね。 若森 ささかみは兼業農家が多い地域ですから、兼業でも成り立つモデルですね。 ◆まずモノありき、価格を目的にはしない 田代 安全性を求めるとコストがかかり、価格問題になると思いますがその点は…。 若森 確かに、組合員は安全とかに興味をもって入ってきますが、実際にどれだけ買うかというと価格対比されて利用が進まない面もあります。なぜこういう価格構成になっているかを、組合員に伝えて理解してもらい価格の壁を突破したいと思います。 田代 しかし、良いモノを安くが前提ではあるわけですね。 若森 価格問題は前提ですが、目的化はしません。安くすることは前提ですが、まずモノがあって、どこをどうやったらコストを下げられるかを必死に努力をします。安くが目的なら外国からもってくればいいんです。 耕作放棄地が増えるような ◆日本農業が国際競争力を持つことにムリが 田代 日本生協連が「農業への提言」をしていますが、これについては…。 若森 大規模化とか株式会社の参入とかについて真正面からとらえて議論をした方がいいと思います。農業のあり方としては、基本的には家族経営だと思いますが、新規就農を個人では受けにくいから、最初は法人が受け皿となりその後に自営に分散化するとか、多様な展開を考えた方がいいと思いますね。 田代 一番、気になったことは関税の逓減と競争力強化を提言していることですが…。 若森 日本農業が国際社会のなかで競争力をもってということは無理なことです。一定程度の関税をかけなければ、生き残れるものしか生き残れません。コンニャクしか作れない地域がありそこに存在する人がいるわけです。それを切り捨てる政策は間違っています。保護しなければならないところは保護しなければいけない。根本的な問題は自給率が低いことです。だから農地が少なくなることに結びつく施策は排除すべきです。 ◆農協の基本は営農に力をいれること 若森 担い手問題については、運用を一つ間違うと差別になりますから、そうならないように農協が積極的な政策を出していくことが大事だと思います。 田代 農協にとっていま一番大事なことは何だと思いますか。 若森 基本は営農にもっともっと力を入れることです。そうでないと生産者が離れていってしまいます。 田代 ありがとうございました。
グローバリゼーションの時代は「ばらける」時代である。「ばらける」とはまとまっていたものがばらばらになること。一度はばらばらにされた個人の間に新たな協同を打ち立てる。それが個人対応型くらし課題解決を掲げるパルシステムの挑戦と受け止めた。赤ちゃんを抱えた若い女性、子育て真っ最中のママ世代、子育て終了世代とライフステージ別の商品案内で、若い世代に協同の輪を拡げているのは、組合員高齢化のなかで画期的だ。 |
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(2005.10.19) |
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