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特集 生産者と消費者の架け橋を築く女性たちの役割 |
ルポ・JAファーマーズマーケット(2) |
もっと活かそう食と農「提案」の場 JA紀の里(和歌山県) |
◆京都や大阪から買いに来る人、人 1月11日水曜日、平日の朝10時頃なのに店のなかはカートが行きかい普通に歩くことが難しい。それでも「今日はまだそれほどではないですよ。土日とかのピークには歩くことも難しいです」と店内を案内してくれた野菜ソムリエの西野奈美さん。 お客は主婦が中心だが夫婦で来ている人も多く、ご主人が両手にビニール袋を下げて車へ走り、戻ってきてまた夫婦で袋を下げて行く姿もある。サラリーマン風の中年男性もいる。奥さんに頼まれて会社をちょっと抜け出してハクサイなどを買いに来たのだという。明らかに八百屋さんと思える人もいてキャベツだけをせっせとカートに山積みにしている。 160台入れる駐車場はほぼ満車の状態だが、次々と車が入ってくる。車のナンバープレートを見ると、地元の和歌山が多いのは当然だが、大阪府の和泉やなにわナンバーも多い。そしてもっと遠い神戸や京都ナンバーの車も見られる。中年の主婦二人が大量に買い込んだ野菜を京都ナンバーの車に積み込んでいるので話を聞いてみた。二人は姉妹で月に1回はここに来る。今日は二人だが家族でくることもあるという。なぜ京都からとの問いに「新鮮で安いから」と答えが返ってきた。そして「よけい買わんようにしようと思っていても、ついつい買うてしまう」ので、嫁いでいる娘さんへあげたりするのだとも。野菜を積み終わって帰るのかと思っていると、朝に採った花で鮮度がよく安いから必ずここに来たら花を買って帰ることにしているのだと花売場に向かった。
品質向上・品揃えの充実で年間24億円以上の売上 ◆1日中来店者があるようにみんなで品揃え ここは和歌山県のJA紀の里のファーマーズマーケット「めっけもん広場」。登録生産者は約1500名。1日平均出荷者数は約500名。営業時間は朝9時から夕方5時まで。来店客数は平日が2000〜2500名、土日祝日は3000〜3500名だがこれはレジを通った数で、夫婦や家族で来る人も多いので、この2倍近い人が来店しているのではないか。 ◆“売れたらスカッとする”売れるものをどう作るか 野菜や果物など生鮮品で売れ残った品物は、5時の閉店後に生産者が引き取ることになる。そのときに「なぜ売れなかったのか考え、売れるものをどうしたら出せるか考える」そのことでレベルがしだいに高くなってきていると川原店長。登録生産者は趣味的に作る人からJAの共選を通して市場流通に出す人までさまざまだが、売れるものを作ろうという意識が多くの生産者に強くあるということだ。
◆端境期でも消費者が欲しいものを作る生産拡大運動 二つ目は、生産拡大運動だ。めっけもん広場で売られている農産物の7割は登録された生産者が出荷したものだが、その他にそれを補完するための仕入品がある。仕入品でもっとも多いのがJAの共選から仕入れるものだ。JAの内部流通品で、JA紀の里ブランド品だ。そして全国のJAと提携して仕入れるものがある。リンゴや梨など紀の里では採れないものや端境期の品揃えのためにいくつかのJAと提携している。さらに市場から仕入れる場合もある。 協同の心で店を盛り上げ 元気な農業・元気な地域をつくる ◆学校給食にも食材を供給 だが大原部長は「作ればいいとだけはいえない」という。それは「オーバーフローしたときに、作れと奨励した責任をどうとるのか」という問題があるからだ。だから「営農指導は慎重にしなければならないし、生産者に判断してもらわなければいけない状況もあるので、生産者自身が判断できるようありとあらゆる情報を生産者に提供するのがJAの役目であり、そのうえで牽引していく」。そしてオーバーフローした場合は、販売部が「フォローアップする。そのためにめっけもん広場は販売部に属している」のだという。 ◆野菜ソムリエが情報を発信 三つ目は、消費者への情報発信だ。めっけもん広場には、JAファーマーズマーケット野菜ソムリエの資格を取得した永山由美子さんと前出の西野さんの二人がいる。野菜ソムリエについて川原店長は「私たちは販売のプロではないし接客技術もないので、食べ方や栄養価値などの情報を伝えていかないと消費者と生産者が結びつかない。そうした情報を伝え接客能力をアップさせる一つの方法」だと位置づける。 ◆JAブランドから個人ブランドへ 情報発信の定番といえるPOPだが、めっけもん広場では個々の生産者がつくったものが意外に少ないと思った。川原店長は「POPは努力の最初の段階だ。POPや見かけで売っているうちはまだ甘い」と厳しい。ミカンは、2000人来店したとしても買うのは1000人だ。それを1200人するためにはどんな努力が必要なのかと考える。消費者のニーズに応えた「間違いのない味のものを供給していけば固定客が必ずつく。そういう状態をつくること」だという。それは「紀の里」ブランドからさらに一歩進めて「個人ブランド」をつくることであり、「それが農家の仕事」だとも。 ◆安定した農業が確立されなければ成功とはいえない これまで生産者と消費者の架け橋としてめっけもん広場がどのような役割を果たしてきたかを駆け足でみてきた。その背景にあるのが「協同の心」だと石橋組合長はいう。生産者個人個人は自分の作った農産物を一つでも多く売りたいと思っている。高齢者や女性もいれば市場出荷もしている生産者もいる。売れるからといって売場面積を広く確保せず、多少の犠牲をはらっても高齢者のものでも売れるようにお互いに助け合う。そうした「協同の心」でめっけもん広場を発展させていくことが、市場流通とは異なるファーマーズマーケットの存在意義だということだ。 |
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(2006.1.25) |
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