農業協同組合新聞 JACOM
   
特集 JA全農畜産事業 安全・安心な畜産物の生産基盤拡大と販売事業の強化

JAグループ肉豚50万頭増産体制へ向けて

畜産生産部

◆意欲ある優良生産者の法人化で基盤を拡大戦略I

 畜産生産部では、かねてから進めてきていたハイコープSPF肉豚生産100万頭体制が18年度には計画達成の目途がついたことから、昨年12月の畜産委員会で、引き続き肉豚生産基盤の拡大による肉豚増産の取組みを行うことを決めた。
 具体的には、県域単位を基本にして、地域実態に応じた施策を展開することで、平成21年度までに、全国規模で肉豚50万頭の増産を図るというものだ。
 50万頭のうちわけは、「戦略I :意欲ある優良生産者の法人化による基盤拡大」で10万頭増産。「戦略II :既存養豚生産基盤の再編・強化による基盤産地の育成」で40万頭となっている。
 戦略I の「意欲ある優良生産者の法人化による基盤拡大」とは、大規模養豚経営に挑戦したいと考えている意欲ある組合員、あるいは新規養豚就農者の法人化によって、資金調達力を高め、規模拡大をすすめることで、養豚基盤の拡大をはかるというものだ。
 具体的には、食肉センターのある県域(ブロック域)にモデル農場(母豚500頭一環経営)を全国10か所に設置し、21年度までに、肉豚生産頭数年間10万頭増産を目標とするもの。
 販売については、生産基盤造成の段階から販売部署と協議し、県域あるいはブロック域における地産地消を基本に、地域密着型でのと畜・部分肉加工による安定的な数量・品質による出荷体制を前提にして、安定的な販売先を確保していく。

◆地域内での繁殖・肥育分業体制の確立戦略II

 戦略II の「既存養豚生産基盤の再編・強化による基盤産地の育成」は、食肉センターのある県域(ブロック域)にモデル産地(母豚1200頭、繁殖・肥育ツーサイト方式)を全国20産地設定し、21年度までに、肉豚生産頭数年間40万頭増産を目標とするもの。
 1産地あたりの規模は、広域量販店や大消費地量販店に対する肉豚販売頭数・週500頭以上を前提にして、年間肉豚出荷頭数2万4600頭(母豚1200頭)を目標にする。
 事業方式としては、JAグループが出資する農場運営管理会社を運営主体とする子豚生産農場(繁殖・育成センター)を産地に設置。そのセンターを核にして、生産意欲のある既存養豚農家や新規養豚就農者による肥育農家群を確保し、地域内での繁殖・肥育の分業体制(ツーサイト方式)を確立する(図参照)。生産された肉豚は、計画的・安定的に産地食肉センターへ出荷する。

地域内一貫経営農業概念図

◆一貫経営から廃業農場・遊休施設を活用

 新たな肥育農家群の再構築については、次のような構想を考えている。
 一つは、現在、繁殖から肥育まで一貫して行っている生産意欲のある自立養豚農家の肥育専門農場経営への転換をはかるというもの。この場合、養豚農家は繁殖舎を改修し肥育専門農場となるが、子豚の年間引取り契約を行い、養豚経営を行っていくことになる。
 二つ目は、地域内の廃業農場や廃業予定農場を運営主体(繁殖・育成センター)が賃貸あるいは取得し改修して肥育専門農場とし、養豚経営希望者に運営を委託する契約生産方式。
 三つ目は、JAグループの遊休畜舎などの農場施設を有効利用したり、豚舎を新設して、肉豚生産農場を整備し、運営主体が肥育農場として運営するものだ。この場合、5年後を目途に、自立能力をもっている農家に、これらの施設を譲渡することも視野にいれている。
 販売については、販売部署と協議して、大消費地向け販売を主体にし、地域内販売を従とした安定的な販売先を確保する。
 この繁殖育成センターを核とした地域内一貫経営農場方式の場合、分娩から体重25kgまではセンターで育成されるが、それ以降出荷までは肥育専門農場で肥育されることになる。そのため、地域内で生産される肉豚の数量や品質が一定以上の水準で統一される必要がある。そのことで、産地食肉センターでのと畜・部分肉加工が統一され、安定的数量・品質による出荷・販売が可能となる。
 そういう意味で、運営主体の繁殖・育成・肥育にいたる一貫した指導力が問われることになるだろう。

◆最新のソフト、ハードをもつセンターが福岡に

 現在、畜産生産部では、こうした構想を確実に実現するために、地域内一貫経営農場のモデル産地の設定などについて具体的に検討しているが、すでに九州では、こうした生産方式がとられているところもある。
 その一つに、県内養豚生産基盤の維持・拡大をはかるために平成10年に、JAふくれん(全農福岡県本部)が国の「畜産再編総合対策事業」の適用を受けて、施設整備し設立した「SPF豚集中繁殖・育成センター」(福岡県八女市)だ。
 同センターでは、繁殖母豚を1100頭規模で飼養し、年間2万4000頭の子豚を生産している。施設は、SEW方式(早期分離離乳方式)という生産効率の高い技術と、それに対応した最新の豚舎施設をもつという、ソフト、ハード両面とも充実した施設で、国際競争に打ち勝つ生産コストと消費者の求める「安全な」肉豚を提供し、地域の養豚経営の大きな支えとなっている。
 このようなセンターを核とした地域内一貫養豚経営と意欲ある優良生産者の法人化による基盤拡大によって、ハイコープSPF豚が50万頭増産され、従来から進められてきたものとあわせて150万頭体制が、21年度には確実に実現するだろう。

(2006.9.28)



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