◆少子高齢化、競合飲料とで消費低迷
今年の春、酪農王国・北海道で生乳892トンを産業廃棄物として廃棄する事態が起きた。生乳の生産量は全国で829万トン(17年度)。そのうち388万トンが北海道で生産されている。平成17年度の生産の伸びは全国の0.1%増に対して北海道は1.6%増と伸び率が大きかったこともあるが、生乳廃棄の最大の要因は消費が低迷していることにあった。
中央酪農会議では、牛乳消費減退の主要な要因として、次の3つをあげている(「牛乳消費拡大事業活動レポート」)。
1.少子高齢化、単身世帯の増加、女性就業率の高まり
2.共通(類似)市場での競争の激化
3.乳業や小売業の販売マインドの低下。
1の少子高齢化などについては「一人当たりの牛乳の消費量を年代別にみると若年齢層ほど多い。したがって、若年齢層の減少は牛乳消費の減少に直結する。単身世帯の増加や女性就労率の高まりは、外食や半加工食品である中食の増加、朝食機会の減少に繋がるが、それは家庭内消費が中心である牛乳の消費機会の減少を意味する」と分析。
2の競争激化については「これまで競争の少なかった『健康飲料』市場で、近年、各種機能性飲料(アミノ系、機能性茶系)、野菜ジュース、豆乳等の競合飲料が急増。厳しい競争環境にある」としている。
3の販売マインドについては「収益性の高い利益商品に営業施策を重点化・特化させており、牛乳についても比較的に高価格でも売れる特徴的な商品に絞り込み、従来の低価格商品は市場から撤退させている」と指摘した。
◆需給状況と酪農経営への影響
酪農家戸数は平成7年の4.4万戸から17年には2.8万戸へと1.6万戸も減少(約38%の減)し、飼養頭数も195.1万頭から165.5万頭と約15%減少している。一方で、1頭当り年間泌乳量は平成7年度の6986kgから平成16年度7732kgへ約11%増加しており、飼養頭数の減による生産の減少を補っている。これにより、生乳の生産量は平成7年度の846.7万トンから平成17年度829.2万トンと2.1%減少にとどまっている。
飲用牛乳の消費量は平成7年度の505.5万klから、平成17年度426.1万klへと16%も減少している。学校給食向けの生乳処理量はこの10年間で18%強減少している。
主要乳製品である脱脂粉乳の推定消費量は、平成7年度の22.5万トンから平成17年度20.2万トンと10%強の減少、バターも9.2万トンから8.5万トンへ約8%減少というように消費が低迷しているのが現状。
生乳・乳製品の需要が長期的に低迷する中、国内の脱脂粉乳・バター在庫が増大し、平成18年度には13年ぶりの減産型の計画生産を実施せざるを得ない状況となっている。さらに、糞尿処理経費の増嵩や、ポジティブリスト関連など、酪農家の経営環境は極めて厳しい情勢となっている。
◆生乳・乳製品の需要拡大の取組み
このような情勢が酪農経営や生乳生産基盤に悪影響を及ぼすことが懸念されるなか、JA全農は生乳共販の機能的強化を通じ、合理的な生乳の需給調整を実施するとともに需要拡大が期待される醗酵乳や業務用牛乳、液状乳製品の推進とそれをサポートするための用途別供給に取り組む。
また、全農自らも、需要が伸びている缶コーヒーなどに使われる業務用牛乳、クリーム、濃縮乳などの液状乳製品の販売をさらに拡大していくことにしている。
脱脂粉乳やバターについては、飼料用脱脂粉乳や輸入調製品等への置換えにより国産乳製品の需要拡大を進める。
また、中央酪農会議が中心となって実施している「牛乳に相談だ」などの消費拡大運動も積極的に推進している。9月15日に開催した第24回酪農体験発表会では「牛乳・乳製品の消費拡大」をサブテーマに掲げ、各種のイベントを実施したり、「牛乳おもしろドリンク こんな飲み方・作り方」というレシピ集を辻クッキングの協力を得て作成・配布した。
このほか、ポジティブリスト制への対応など安全・安心への取り組みについても、県本部・JAと連携した対応の徹底を図る。また、生乳の物流面において、良い乳質を維持した状態で乳業会社へ搬入すべく、(株)エーコープラインやホクレン運輸(株)など関係物流会社と連携し、(1)ローリーの専用洗浄施設での洗浄および状態管理(2)集送乳の合理化等、酪農物流体制の整備に取り組んでいる。