農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 全農特集・生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋に

JA全農女性役員に聞く(4)

現場で農業者と汗流す全農に
日本農業の担い手づくりをリード

参与(JA全国女性組織協議会顧問) 峰島 歌子氏

 

 JA全国女性協の峰島歌子顧問は、全農の参与として経営管理委員会に出席し全農改革にも意見を反映している。女性農業者の立場からも全農への期待、要望を語ってもらった。

峰島 歌子氏
峰島 歌子氏
――全農の改革はどう進んでいると見ていますか。

 ここ(全農役員応接室)にかけてある旗の「改革」という言葉に、これぞ今の全農の姿勢、意気込みというものを感じます。経営管理委員会に出席していても非常にきめ細かく計画を立てて改革を進めていこうという姿は分かります。ただ、それは私が参与として関わっているから感じるのであって、現場に帰るとやはり浸透していないのではないかと懸念していますね。
 経営理念を非常に大事にした改革プランが打ち出されたわけですが、行動に移していくことが大事であって、今の段階でどう変わったのかといえば、意気込みは感じますが、さらにもう少しスピード感を持って進んでいただきたいなと思います。

――現場で改革に向けての努力が浸透していないと具体的に感じられることは何ですか。

 生産者、消費者にとって身近な全農をめざしていますが、たとえば、資材購入にしても全農と県本部(経済連)の両方に手数料を払うようなところがあって、周りの生産者からはどうしてこれがこれだけの値段になるのか、といった声があり、まだまだ情報開示、説明がなされていないと思います。
 やはり農業者のところにもっと足を運んで営農指導などいろいろな面で情報をつなげていかないと人は離れていきます。思えば思われる、という関係はありますから。産地では改革に取り組む全農の姿が見えないということなんです。
 
――全農の職員が姿を見せるべきだということですか。

 そうです。現場に足を運んで汗を流して生産者と一緒にモノを売っていくというようなきめ細かい配慮が必要ではないでしょうか。生産者からすると全農というと何か別の組織のような気がして、JAの理事会でも、全農を通して事業をするか、それとも通さないかということをはっきりと話題にする理事さんもいるぐらいです。私はそういう話題が出るたびに非常に歯がゆい。農業者には自分で販売ルートまで乗せることができない人がたくさんいるわけです。その人たちにとって全農はなくてはならない組織です。ただ不祥事を出さず経営が健全で安定すればいいということでなく、農業者のなかの全農なんだということをもっと強調し、またその姿勢を示さない限り理解されにくいと思いますね。
 組織として、なくてはならないことはみんな自覚しているんですが、本当に理解するということはまた別の問題です。精算された結果をデータだけでみると、全農にこれだけ払っているんだ、なぜ? となりますから、そこのギャップを埋めるためにデータを示すだけじゃなくて、こういう事業をしている、努力をしていると全農の職員の方が足を運んで組合員の心を捉えることです。

――女性の立場からの期待は?

 実は女性は全農に非常に関係が深くて、購買品にしても食材にしても私は全農なら安全なのよ、というように組織に働きかけてきました。そういう面に出てくる女性の力というものをもっと知っていただきたいとも思います。NHKが「まっすぐ真剣」をキャッチフレーズに改革していますが、それに習えば全農は、「まっすぐ正直」でありたいですね。
 それから消費者との懸け橋機能も強調していますが、それには協同組合の基本理念を持っていなければ懸け橋にはならないと思います。ただ売ってあげるということではなく、私たちは同じ立場なんだということを共有できるようにならないと。お互い助け合っていこうということでなければ。
 協同組合の理念、これは全農こそ持つべきです。協同組合というのは今の時代に通用しないかというとそれは私は大いに間違っていると思います。やはり人間の心というのはそんなに変わるものではなくて、悲しいこと、うれしいこと、みんな感じることは同じで、ただ利益だけでつながっているだけではないと思います。お互いが支え合っていくという基本理念が大きな組織には大事だと思いますね。女の人は非常にまじめで、何かの取組みでも協同組合の基本理念というものが共通認識され、だから女性組織も100万人近くが組織としてまとまっているのだと思います。そういう気持ちの通じ合いによって全農を支えていけると思います。

――改革の柱である担い手支援についてはどう思われますか。

 240億円を担い手育成のためにあてるということですが、どういう方法で担い手支援をしていくのか。240億円が一人歩きしてしまって、どう支援するのかということがなかなかみえてこない。たとえば、私の地元では政府のいう担い手となる人は一人しかいませんよ、ということも経営管理委員会で申し上げたことがあります。そういう実態を全農の方たちが足を運んでつかんで、自分たちで手がけて担い手を育てていくんだということを見定めて財源を使っていくのならいいです。そういう自分たちの活動につぎ込めばいいのではないか。自分たちがそれを使って担い手をつくってください、というのが私の気持ちです。
 やはり現場を知るということだと思います。そして、せっかくこれだけの組織なのですから、政府ではなくて全農が日本の農業を動かすぐらいのことをしてもらいたい。日本の国土と日本の農業の歴史をふまえて日本の農業はこうあるべきだということをしっかりと考えていただきたいと思います。

(2006.11.16)


社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。