火災・盗難事故防止と米の品質維持を
農業倉庫基金 事務局長 森谷昌道
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平成18年産水稲の作況指数は、全国的には96であったが、特に九州を中心に台風13号による潮風害等の被害が発生し、収穫量が大きく減少しました。被害を受けられた地域の皆様には心からお見舞い申し上げます。
さて、今年も倉庫での火災盗難事故が多発しやすい時期になりましたので、「農業倉庫火災盗難予防月間」を設け、防災・防犯の徹底と併せて適切な保管管理をはかる運動を展開します。
農業倉庫における火災事故は、ここ数年不審火による事故が発生しています。1件は倉庫の軒下に仮置きしていた木製パレットに放火されました。幸い、近隣の住民の発見が早く、庫内の米への被害は免れました。また、他の1件は倉庫下屋付近から出火し、全焼して保管麦に大きな被害が発生しました。下屋には可燃物の放置もなく、放火と判断された事故でした。このような不審火の火災事故が相次いで発生していることから、少なくとも倉庫周辺には燃えやすいものを放置しないこと、不在時は倉庫や事務所敷地出入口には必ず施錠すること、見回りを徹底すること、あらかじめ周辺住民には異常があった場合には協力を依頼しておくこと、などの対策が必要です。
また、米の流通が原則自由になった現在、換金が容易になったことから、盗難も増加傾向にあります。通用口の鍵が壊されたり、下屋の鍵が切られて保管していた米が盗難にあっています。したがって、見回りの徹底と付近住民への協力のほか、警備会社による管理体制なども検討する必要があります。
さらに、例年5月から「保管管理強化月間」を設定していますが、この「火災盗難予防月間」時にも、保管管理の徹底を図る必要があります。今や米も「食品」として位置づけられており、消費者の目が厳しくなっています。これにともない、卸・量販店などの産地に向ける対応も厳しくなっています。倉庫保管中の事故としてはカビの発生、欠減・害虫の発生・ネズミ跡、袋の汚れ・誤出庫のほか、最近では水分過多なども返品となります。最近の情勢から、一旦事故が発生すると、被害金額も多額となり、JAの経営そのものに影響を及ぼしかねません。さらに産地としての信用を失い、取引先を無くすこととなりますので、この機会に経営者・管理者も保管管理の重要性を今一度見直して、日頃の管理体制の整備と管理が適正に行われているか否かも再検討をしてください。 火災・盗難の予防を万全に!
JA全農米穀部長 原 勝
JAグループでは安全・安心をコンセプトとしたJA米について、平成16年産より取り組んでおり、17年産では連合会出荷米の7割を占めるまでになり、JAグループが取り扱うスタンダードなお米として卸売業界の信頼が高まっています。
今後は、消費者の認知度向上のため、JA米マークを使用した消費者向け精米および米加工品の販売に取り組みます。
JA米の信頼を更に高めていくためには、生産段階はもとより需要者にお届けするまでの保管管理が重要となります。
JA米を保管する農業倉庫は全国に約8200棟、収容力は約670万トンを有しJAグループ米穀事業の拠点となっております。
平成15年度に国の保管管理要領が廃止されて以降、倉庫業者が自らの責任と判断で米麦の保管管理を行っておりますが、農業倉庫業者であるJAは、これまでの間、従来以上に大きな役割を果たしてきました。
全農では(財)農業倉庫受寄物損害補償基金とともに農業倉庫保管管理技術研修会を開催し、保管管理技術者の育成および技術の向上を図るとともに、火災や盗難の多発する冬期に「農業倉庫火災盗難予防月間」(12月15日〜翌年2月15日)を設定し、全国一斉運動を展開しています。
倉庫の火災は、JA合併に伴い、倉庫の大型化・低温化(断熱構造化)が進みつつあり、万一、火災事故が発生すると甚大な被害となることが予想されます。
また近年、農作物の盗難が頻発しており、米穀についても流通が多様化し盗品の換金も容易となってきたことから、盗難の対象となり、普段は無人の農業倉庫が狙われる恐れがあります。
つきましては、農業倉庫関係者の皆様におかれましては研修会・会議および巡回指導を通じて防災意識の高揚を図っていただくとともに、改めて緊急時の連絡体制の確認と施設・設備の点検整備をおこなっていただき、事故の発生防止に向け保管管理に万全を期していただきますようお願いします。
(「農業倉庫火災盗難予防月間スタート その2」へ)
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