JAとぴあ浜松は12年前の合併以来、意識的に保有純増に挑戦し続けて輝かしい実績を積み上げてきた。一斉推進を廃止し、ライフアドバイザー(LA)主体の恒常推進で成果を挙げている。前年度までは保有純増の目標は示すが、新契約獲得の目標は示さないという大きな特徴もあった。LAインストラクター(LA管理者)の活躍も特筆される。今年度からは職員教育をさらに強化し、精鋭化を図る。
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12年間連続の保有純増 LA管理者も力を発揮
◆効果挙げた推進手法
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木下正美会長 |
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田端敬一理事長 |
共済・保険事業では保有契約高の減少傾向が続いているが、JAとぴあ浜松は平成18年度も長期共済保有純増となった。合併以来12年間連続の保有純増となり、18年度のJA共済大賞に輝いた。前年に次ぐ2年連続の受賞だ。
田端敬一理事長は「18年度は恐らく保有純増でがんばれる最後の年になるだろうということもあり、どうしても保有純増で節目の年を締め括ろうと年度当初から、みんなで全力を挙げてきました。それだけに2年続きの受賞とあって、役職員一丸となって頑張ってきてよかったなという気持ちでいっぱいです」と喜びを語った。
同JAは合併スタート時から12年間、新契約推進の目標を掲げず、保有純増をどれだけ増やすかというユニークな目標を設定して取組んできた。
さらに大規模JAとして早くからLAを主体とする恒常推進体制を整えてきた。
バブルが崩壊後、超低金利時代が続いた中で、保有純増の追求はJA経営に寄与してきた。
田端理事長は「農協経営を考えるとき、共済事業は収益部門で大きなウエイトを占めています。融資の金利が非常に低くて金融事業の収益が低下した中で、共済事業は農協経営にかなり貢献してきたと思います」と話す。
また、共済事業を担当する中野信夫常務は「全国でも多分、共済事業収益をずっとプラスで伸ばしてきた農協は数少ないのではないでしょうか。この12年間は収益的にもほんとうに有難かったと思います。安定的な収益の確保という意味では、保有純増というのはほんとうにすごかったという感じが今さらながらします」と語る。
◆2万2000人を「3Q訪問」する
18年度は前年より10名減のLA体制となり、厳しい状況の中で推進活動がスタートした。
このため理事長は早くから純増達成への強力な取り組みを指示し、7つの全地区(東南、中央、西、北、浜北、湖西、湖北)挙げて3月の最終日までがんばり、何とか保有純増を確保することができた。
最近は満期到来の急増、終身共済の払い込み終了の増加、また失効・解約の増加など共済・保険需要の減退が顕在化してきている。満期到来は同JAで年間1044億円くらいだという。
こうした構造的な問題に直面し、やはり新契約推進をある程度前面に出した目標を設定する必要があるとして、19年度からは新しい手法に切り替えるため共済推進体制の組み直しを進めている。合併以来、初めてのことだ。
構造的な問題や内部事情などから、やむなく推進方策を切り替えたわけだが、しかし「保有純増の考え方はあくまでも継続し、堅持していく」と田端理事長は語る。
さらに今年度はJA共済連が提起している「3Q訪問活動」(全戸(個)訪問)の実践なども通じて、組合員が少しでも有利になるような保障を提供していく考えだ。
同JAの組合員数は約7万人。職員数は約1300人で、他に臨時・パート・嘱託が200人となっている。
3Q訪問活動の今年度目標は組合員の3分の1弱にあたる2万2000人の訪問である。LAとクラブ員が訪問するが、共済担当職員の中からも参加する予定だ。
◆LAを支えるLAインストラクターの力
現在、LAは118人。うち女性が7人。同JAの規模からするとLAは150人が最適だが、人事ローテーションや育成を考えると135人がベストということになっている。LAになるコースとしてはクラブ員からが多いという。女性は最高時で13人いたが、出産などで減り、現在の7人になっているが、定着を期待する声が多い。
LAは、JA管内を7つのブロックに分けそれぞれのブロックに設置されている地区支店に所属しているが、活動は地区支店の下にある支店範囲でされる。
LAを育成するLAインストラクター(LA管理者)は7地区に配置されている。多い時は130人以上もの指導と管理に当たるわけで非常にハードな仕事だといえる。地区によっては土・日曜日も返上してLAの推進に同行している。
LAインストラクターのアドバイスで新契約が獲得できても実績はLAとなるのだから、LAインストラクターはいわば縁の下の力持ちだ。
LAとして実績を挙げてきた人望の厚いリーダーシップを発揮できる人材を任命しており、現役LAからも信頼されている。
権限は各地区支店によって異なるが、ほぼ係長、主任クラスだが、支店長になる人も多いという。
LAインストラクターのカラーによって各地区の推進に特徴が出るから、その影響は大きいといえる。例えば生命系に力を入れるLAインストラクターのもとにいるLAは、やはり、その分野が得意といった傾向がある。勢い、その地区の実績も生命系の伸びが高いという結果などが見られるという。
LAインストラクターはそれぞれ地区の実情に対応した月間の推進計画や行動計画を持ち寄って本店で協議する。今年からは本店とLAインストラクターの連携を強めたいとのことだ。
◆外部講師を招き研修を強化する
一方、金融渉外担当員からLAへと人材を配置換えし、それでもLAが足りないという状況なので、今年はJA全体として職員教育を強化する。
以前は人手不足を補うため新入職員をいきなり渉外に出したりしたが、その後は1年間は外に出さないことにした。1、2年は内勤で組織を理解させる教育を徹底して行う方針だ。
「今年は研修漬けだ」ともいう。これまでの研修は内部講師がほとんどだったが、その方式では講師になった職員がよく勉強をし、知識などを習得するものの、それ以上の効果がなかなか期待できないということから今年からは外部講師をどんどん招くという。
また女性の金融渉外員を置いたが、その人たち向けのローン研修会を開いたりして、ある程度専門的な業務に当たる職員を増やす。
さらに金融渉外員に対してはクラブ員研修の徹底を図っていく。
◆新契約目標を設定するが基本は保有純増
今年度からは新契約の獲得目標を設定し、保有純増目標は掲げないことにした。しかし考え方の基本は、これまで通り純増を追求していく。
具体的には純増に貢献するような新契約についての獲得目標を掲げた。満期は継続分をできるだけ多くしていく。解約についても地区や支店の実態に合わせて、どこまで許容できるか「解約許容」といった形の数値を示した。
短期的に収益を確保しようとするなら転換でも何でもやって新契約を伸ばせばよいが、そうはせずに、後々に与える影響を考えるという基本は守っていく。
LAの推進目標設定については長期・年金・定期医療・自動車・がん共済の5部門で設定し、奨励金に関わる達成は長期・年金・定期医療をセットにしている。
振り返って見ると、同JAは純増管理をしていたので、新契約実績をそれほど大きく伸ばさなくても収益だけは毎年、確実に増やしてきた。しかし、実際には新契約実績も増やしてきた。
もし仮に新契約実績だけを追って収益を挙げていこうとすれば毎年105%アップくらいの新契約を積み上げる必要があったと担当部署では試算する。
5%といっても10年も続けると50%になり、さらに試算すると、その目標を達成するためには1職員当たり新入職員を含めて3億円ほどの目標を背負わせることになる。そこでそんなに背伸びをした新契約目標を設定しなくてもよいようにと保有純増に取り組んできたという。
合併前には一斉推進がつらいから退職するという女性もいたため共済事業に対する一般職員の意識を変えるという狙いもあって一斉推進を廃止し、純増管理を導入したとのことだ。
また純増の管理はきめ細かい。例えば解約をともなう推進についてはカウントしないのが基本だというように、純増に貢献しない実績は分けてカウントしている。
ただ、例えば窓口にきた解約を翻意させようとして勧めたものは解約推進ではないとされるため、そういったケースをどのように分けるのかなども全部が規定化されている。このため規定も推進要領もやや複雑になっているのが課題だと考えられている。
◆3年連続の受賞めざして
個々人の実績の把握はJA独自のもので毎年、管理システムの一部を修正しており、導入後の通算では1億円以上をかけているという。
共済は親戚、知人など人間同士のつながりで加入することも多い。このためLAが所属支店のエリア外、例えば前任地で新契約をとった場合、実績が前任地につくと、純増とのつながりがきちんとつかず、目標管理に支障が出る。このためシステムで、それを修正して現在所属する支店の実績になるようにしている。こうしたきめ細かい修正が毎年続けられているわけだ。
なお同JAは次世代対策として自動車・自賠責共済でも実績を挙げている。
同JAは積極的に加入者の保障の充実につながる新契約実績を挙げながら、解約推進と転換をできるだけ減らす管理で保有純増を続けてきた。
しかし、それに対応して、どこのJAよりも多い満期を抱えることになった。そうした立場で今年度は新契約獲得の目標を掲げながらの保有純増へ向けて再スタートを切った。
保有純増に挑戦してきたJAは全国でも珍しい。今後も、そうした挑戦者意識を発揮しつつ共済推進を展開する構えだ。
推進体制の切り替えに当たって今年度から来年度にかけ、新しい施策をどう打ち出していくかが注目される。
共済大賞は2年連続の受賞だ。「ついでのことに3年連続受賞をねらう意気込みで進みたい」との担当者の声も聞かれた。
JAとぴあ浜松概要
・組合員数 7万1424人(正+准)
・共済事業
長期共済保有契約高 4兆1806億円
長期共済新契約高 2771億円
年金共済新契約高 19億4096万円
自動車共済新契約件数 5万3034件
自賠責共済新契約台数 2万1107台
・信用事業
貯金残高 8518億円
貸付金残高 2061億円
・経済事業
購買事業 109億円
販売事業 225億円
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