農業協同組合新聞 JACOM
   

特集 「安心」と「満足」を提供し愛されるJA共済へ――JA共済3か年計画のめざすもの



 JA共済連では、この7月から全国のJAで共済を担当する中堅職員を対象にした研修プログラムとして、共済基幹職員研修「次世代リーダー養成コース」を新設する。19年度に4期に分けて実施されるこの研修は全国のJAより受講希望が殺到しているという。そこで、いまなぜ次世代リーダーの養成が必要なのか、そのためにどのような研修が実施されるのかを取材した。

全国のJA職員を対象とする「次世代リーダー養成コース」を新設

◆多くの人材を養成してきた「基幹職員研修」

 「私たちは目に見えない共済仕組みを提供しているけれど、これはその農家の家庭の幸せを配達して歩いているのだという自負をもってもらいたい」と野村弘会長がいうように、共済仕組みは、生産資材や米や野菜などの農産物のように直接目に触れたり手でさわったりして確かめられるものではない。
 「事業は人なり」ともいわれるように、どの事業においても「人材の育成」は重要課題だが、とりわけJA共済のように「目に見えない」ものを推進する場合に人の果たす役割は大きいといえる。
 これまで共済事業では、共済基幹職員研修の開催、普及推進、共済事務、自動車事故処理などを担当するJA職員の育成に取組んできている。とくに、中核的なJA職員の育成については、昭和50年度から平成10年度までの間、JAにおける共済事業リーダーの養成を目的とする「共済基幹職員研修」を実施。
 平成11年度からは、LAを中心とする推進体制の確立・整備を促進する必要から、それまでの共済事業全般にわたる研修体系から、LA体制の強化に対応するための普及活動の実践的な内容に重点をおいたカリキュラムに変更し、「普及活動実践コース」を実施してきた。
 さらに14年度からは、高度な専門知識の修得を主たる目的とした「LAステップアップコース」。そしてLA管理者として必要な知識・スキルの修得を主たる目的とする「LA管理者コース」を実施している。
 こうした研修などを修了した人たちは、各JAにおいて共済事業はもちろんのこと各事業分野で中核的な存在として活躍している。

◆環境の変化に対応した人材の育成をめざす

 しかし、農家・正組合員の減少と高齢化の進展、共済保険市場の成熟・飽和感や民簡保との競合の激化など外部環境の変化、さらにJA職員が減少するなかで、コンプライアンス、利用者満足度の向上など、JA職員に求められる知識・能力は年々レベルアップしてきている。
 こうした著しい環境変化に対応した人材を育成していくために、JA共済連では3か年スタートの年である19年度に、組合員・利用者との「絆の強化と仲間づくり」を担うこれからのJA共済事業を牽引していくリーダーを養成する「次世代リーダー養成コース」を、JA共済の将来を担う人材育成施設として、また人材育成の情報発信の拠点として建設されたJA共済幕張研修センターにおいて開講する。また、普及推進・共済事務・自動車事故処理等各部門のJA職員育成体系・研修等の強化・見直しを予定しているとともに、JAの共済担当常勤役員を対象とした新たな取組み(セミナーの開催等)について検討することにしている。

◆高い行動・思考・能力特性をもった人材を養成

 今年7月からスタートする「次世代リーダー養成コース」は、JA職員の高齢化が進展し、逆ピラミッド型の年齢構成となり、今後、中堅職員層・若手管理職層が極端に少ない状況になることが予測され、事業運営に多大な影響がでることが懸念される。そうした状況下にあって、共済事業の運営を確実に遂行していくため、共済部門全体や共済に携わる職員を牽引し、共済事業に率先して取組んでいく次世代リーダーを養成していく必要がある。厳しい事業環境・状況に的確に対応し、永続的に共済事業全般の運営をしていくために、現場において戦略的な思考のもと課題把握・分析を的確に行い、共済業務全般にかかる企画・戦略を策定し変革を自ら実践できる人材を養成する必要がある。と考え新設されたものだ。
 JA共済事業で考える次世代リーダーとは、将来に向けて、管内の共済事業を統括的な立場から運営・指導することを使命とするJAの共済部長(および共済部長に準ずる役職者)としてのあるべき姿を表現したものだ。 具体的には、JA共済事業の使命・役割を理解したうえで、共済事業目標の達成およびその適正な運営に向けて強い責任と使命感を持ち、CS(顧客満足)・ES(職員満足)の向上をはかるとともに、それを実現するための事業変革や組織風土の醸成、部下の育成を行うことができるなど、共済事業の企画・運営に必要な行動特性、思考特性、能力(スキル)特性を高いレベルでもち、業務を通じてそれらを十二分に発揮できる人材のことをいう。
 こうした次世代リーダーを養成するための研修は、農業協同組合の理念や共済事業の使命・役割などを再確認することを通じて、共済基幹職員研修の原点に立ち返る研修であるとともに、CS・ES戦略の修得・実践も組込むなど、今日的な事業環境・状況を踏まえた内容となっており、次世代リーダーに求められる「3つの特性」と「9つの人材要件」の修得を目指したカリキュラムを設定している。

◆他にはない戦略構築などの研修項目

 「3つの特性」と「9つの人材要件」(図1)は、現在、共済事業運営に優れたリーダーシップを発揮しているJAの共済部長へのインタビュー調査から、次世代リーダーに求められる9つの人材要件として整理されたものだ。
 このなかで「人材マネジメント」「情報活用」「自己適応」「対人関係構築能力」については、部長クラスではなく課長クラスであっても基本的に保持すべき人材要件。「戦略構築」「戦略推進」「創造的思考(コンセプトメイク)」「課題発見・解決能力(コンセプチュアルスキル)」「経営分析能力」については、部長クラスの段階で特に必要な人材要件だと位置づけられているが、これらについては、既存の研修の中では、体系的なカリキュラムとしてあまり設定されていないものであり、この研修の大きな特徴となっている。

◆JAでの実践を意識したカリキュラム

 カリキュラムはJA共済事業の使命・役割の理解・浸透をはかる。共済事業の広範な知識を修得する(共済数理・法制等)。▽事業を牽引していくためのリーダー論を修得する。「CS・ES」の重要性の理解と改善の考え方を修得する。JA共済部門に求められる「企画力」「戦略の立て方」を修得する。「学ぶ」ことから「出来る」「する」ことを重視する。(ケーススタディ)研修で検討した内容についてJAに戻って実際に「実践」する。JAでの実践後、フォロー研修会を設定し、振り返りをはかる。JA・民間企業の視察などによる体験学習。事前学習等の導入により研修期間の短縮化をはかる。という視点から具体化がはかられ、「知識科目」と「ケーススタディ」を中心に、自JAでの「実践」を意識した次のような内容となっている( )内は修得する人材要件。
共済事業論(戦略構築、経営分析能力)経営分析の考え方(課題発見・解決能力、経営分析能力)マーケティング論(戦略構築、創造的思考)CS理論・CS改善の考え方(戦略構築、創造的思考、経営分析能力)リーダー論(全体総合)戦略構築の考え方(問題解決演習)(戦略構築、課題発見・解決能力)優良JAなどの講演(全体総合)ケーススタディ(グループワーク)(戦略推進、創造的思考、課題発見・解決能力)
 そして講師陣は、慶応義塾大学教授と明治学院大学准教授などの学識者、シンクタンク、JA共済事業の先進的取組みJAの共済担当部長、異業種講演としてCS先端企業として著名なネッツトヨタ南国(株)人材開発室責任者そしてJA共済連全国本部役職員など、多岐多様な講師・講演者が予定されている。

◆知識科目とケーススタディを中心に

 研修は、図2のように前期課程(5日間)・後期課程(5日間)、そして次年度のフォロー研修(2日間程度)で構成されている。
 「前期課程」は、9つの人材要件のうち特に重要と考えられる5つの人材要件(戦略構築、戦略推進、創造的思考、課題発見・解決能力、経営分析能力)修得のための諸理論について、座学を中心にグループ討議も交えて学習する。
 「後期課程」は、前期終了後、自学習課題として前期課程で学んだ諸理論に基づき、自JAにおける現状と課題、課題発生の要因などについて、各自考察しとりまとめてくる。そのうえで、前期課程で修得した諸理論を踏まえ、JAのケース事例を用い、グループ単位で、ケースの課題分析を行い、共済事業運営の全体計画や種々の課題についての解決策を検討し、自JAにおいて共済事業運営の改善・変革が実施できるスキルを習得する。 また、後期課程までにとりまとめた自JAにおける現状と課題にかかる解決策(各JAの改革アクションプラン)を策定する。
 「フォロー研修」では、前年度研修以降の自職場における改革アクションプランの実践にかかる振り返りを行う。また、CS優良企業の体験学習とそれを踏まえたグループ討議を行い、「顧客満足の追求」の考え方、実践の方法を体得する。

◆リーダーにふさわしい考え方・判断力・行動力を修得

 これをみても分かるように、「理論を学ぶ」「先進的な事例に学び吸収する」 「自分の考えを整理して他人に伝える」「具体的なアクションを起こす」というステージを繰り返すように設計されている。
 また、「共済基幹職員研修」の修了生アンケートでは、研修に参加することで、知識の修得だけではなく「全国のJAの担当者との交流によって、意識改革がされた」という意見が多くだされている。こうした研修は、同じ目的や意識を持つ全国の仲間が集う場でもあり、学ぶと同時に、全国の仲間との交流から「新たな気づき」や「視野の拡大」、あるいは日々の業務での情報交換など、さまざまな効果が生まれる可能性は高いといえる。
 この研修を受講することによって、これからのJA共済事業のあり方を再認識するとともに、次世代のリーダーとしてふさわしい考え方・判断力・行動ができるようになり、JA共済事業を牽引していく中核的な存在となることは間違いないといえる。
 19年度の「次世代リーダー養成コース」は、4期に分けて開催される(募集定員・各50名、計200名)が、すでに全国各JAからの受講希望が多数寄せられており、それだけ次世代のリーダーの必要性とこの研修に対する期待が大きいということだろう。

(2007.5.23)


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