|
||||
特集 生産者と消費者の懸け橋になるために ―JA全農「3か年計画」のめざすもの― |
インタビュー |
◆何が大事かを現場にキチンと浸透させること
――理事長に就任され1か月近くが経ちましたが、いまどのような感想をおもちですか。 宮下 いままでの全農には至らざる面もありましたし、そのことについては私も役員の一人として大きな責任を負っていると思っています。その反省にたって、理事長として、改革すべきことを全農グループの役職員に対する「理事長メッセージ」として伝えてきました。それをやりきるのは大変にシンドイ仕事ですが、2万人を超える全農グループの総括責任者として、自信をもって進めていかなくてはならないと思っています。 ――先日記者会見で「内向きの組織となることを避け、自らが出向いて顔を合わせて協議をし、理解を得ることがすべての基本」であり、「たたかえる全農」にしていきたいという主旨のお話がありましたが、もう少し具体的にお話いただけますか。 宮下 私自身が全農に入会して以来、一時期を除けば常に支所など現場で仕事をしてきましたので、現場の視点にたってものを考えるということを常々心がけてきました。 ◆改革の第一歩は簡素化と効率化から ――それは全農内部でも同じことがいえますか。 宮下 例えば全農には「経営理念」があります。そしてその下に「行動指針」があり、その解説書があります。さらに「環境方針」があります。私は、個々人のレベルですべてを消化しきれているのだろうか、という疑問があります。「経営理念」は、これは私たちが向こう10年はやるべきことです。その下の「行動指針」は、10項目くらいにまとめて、後は常識の範囲内で判断するというように簡素化しないと「そういうものがあったな」という程度のことになってしまうと思います。 ――仕事の「簡素化」とか「効率化」ということをキーワードとしてあげておられますね。 宮下 書類や会議の時間など「何でも半分にしてください」と役職員にいっています。例えば、書類では、やること、やれること、やれないことを明確にすることですし、会議も集中して必要なことだけを議論することで時間を短縮することです。もう一つは、いま作成している書類、あるいは会議が何のためか、誰のためかを考え、不必要なものを省くことで合理化ができるはずです。そこが改革の一歩なのです。 ――それでできた時間を使って現場へ、ですか。 宮下 そういうことです。 ◆コアの事業に集中するべき時期に ――「新生プラン」を策定してそれを18年度に前倒しで実行し、19年度から新たな3か年計画に取組まれているわけですが、いま一番重要な課題は何だとお考えですか。 宮下 事業の面でいえば、原料価格の高騰などがあり、収支面では厳しい影響が出ていますが、肥料、農薬や主要な生産資材、飼料では事業分量やシェアはけっして落ちていません。それは全農らしい仕事をしていて、良い品物があるからです。ただ、米については、制度や仕組が変わる時期で集荷率が落ちていますので、さらに改革をすすめ、新しい方向を定着させていかなければならないと思いますね。 ――それでは、改革のポイントは何ですか。 宮下 すべての事業において方向が定まっているわけではありません。 ◆現場に出向き自分たちの“思い”を伝えること ――コアの事業に集中することでそこを伸ばしていくわけですね。 宮下 コアの事業で、1%でもシェアを上げる努力をしていくことです。自由な競争のなかで売り買いしているわけですから、シェア100%なんてありえないことですし、われわれだって高いものはあります。なぜ高いのかという理由をJAに納得できるように説明する必要があります。 ――JAにキチンと説明をしに行く… 宮下 単に説明しに行くのではなくて、“私たちの思い”を伝えに行くことです。かつてはそれが実行されていたと思います。ところが最近の地区別総代会議や総代JA巡回をみていると、私たちの思いまで含めて説明していないのではないかと思われる意見が、総代JAから出されることが多くなってきていると思います。 ――「全農も選択肢の一つだ」というJAのトップもおられますが……。 宮下 JAは担い手や大型農家から厳しいご意見をいただいて、ホームセンターに負けないような価格を出せるようにするために、仕方なしに入札などを行っているわけですから、そのことを一方的に責めるようなことは言えないと思います。 ――全農としてはそれにどう対応していくのですか。 宮下 全農として精一杯努力をし、その代り買取などのリスクをお願いするなど、そのJAにふさわしいやり方を提案していけば、すべてとはいいませんが納得していただけるということもあると思います。 ――そういう意味でも、もっと出向いて顔を合わせて理解をしてもらうことが大事だということですね。 宮下 「東京の全農が来るようになったな。動くようになったな」という現場からの評価が出るまで、私自ら出て行くと役員にもいっています。 ◆いま販売事業には追い風が吹いている ――農家の所得確保という面で生産者が全農に期待することは、生産資材の価格もありますが、やはり自分たちがつくった農畜産物を適正な価格で安定的に販売して欲しいということではないでしょうか。 宮下 全農グループの直販事業で考えると、東西のパールライスで1000億円強、全農青果センターで1400億円、畜産関係が全農ミートフーズ、全農チキンフーズ、全農たまごで約3000億円あり、生協や量販店を中心に販売をしています。この力をどんどんつけることが大事だと私は考えています。 ――販売面では、米や和牛の輸出にも取り組まれていますが、今後についてはどうお考えですか。 宮下 先日、中国に米を輸出しましたが、小売価格がかなり高いにもかかわらず完売しました。「日本のモノは良い」という評価をし、求める購買層があるわけですから、中国を含めて相手国の事情をよく確認して、受け入れ先を探して、シッカリ売る体制を整えればもう少し増えると思います。 ◆全農を引っ張り出して活用して欲しい ――最後にJAや生産者そして生協や量販店など取引先の方々へのメッセージをお願いします。 宮下 私たちは、取引先にどんどん提案していきますし、JAや生産者へ出向いていかなければいけないと考えています。そして、それを実行します。 ――今日はありがとうございました。 |
|||
(2007.8.29) |
特集企画 | 検証・時の話題 | 論説 | ニュース | アグリビジネス情報 | 新製品情報 | man・人・woman | 催しもの 人事速報 | 訃報 | シリーズ | コメ関連情報 | 農薬関連情報 | この人と語る21世紀のアグリビジネス | コラム | 田園交響楽 | 書評 |
||
社団法人 農協協会 | ||
|