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特集 生産者と消費者の懸け橋になるために―JA全農「3か年計画」のめざすもの― |
これからの担い手支援対策 |
◆担い手対策は食料生産・地域農業振興の軸となる重要課題
――担い手対応強化を「新生プラン」の第一の使命として掲げていますが、その意味をどのようにお考えになっておられますか。 神出 まず、日本の農業をみると耕地の利用率が4年連続して低下し、農家の減少と高齢化がさらに進んでいます。一方で規模拡大は進んできていますが、農産物価格が低下しているので所得を向上させることが困難になってきています。また、直近の農業センサスでは2割の農家で販売の8割を占めているというような状況があります。 ◆出向く体制が不十分で真の課題が掴みきれていない ――18年度から「新生プラン」を前倒しで実行し、今年度から本格的に取組まれていますが、現在の状況はどうなっていますか。 神出 体制面では、担い手対応部署を設置したのは全国で260JA(北海道を除き、導入率37%)ですが、本当に「出向く部署」になっているかというとまだ不十分だとみています。 ――どういう意見・要望があるのですか。 神出 表のように組織運営面から販売面、そして情報そのものから資金対策など、かなり多岐にわたっています。 ――全中が4月に実施したJAへの調査では、「体制不足」が多いですね(図)。 神出 人的な体制がまだ不十分だということもありますが、「本質」は何かということです。まだ、出向く体制が未整備なため出向けていない。出向けていないから担い手が抱えている「真の課題」を掴みきれず、JAとしてどういうスタートをきるか、どういうフォーメーションをつくるか、どういう施策を念頭において動くのか、というコンセプトができていないことを象徴的に「体制不足」といっているのだと考えています。 支援システムと販売提案を柱に ◆担い手対策支援システムと出向く体制をセットで推進 ――そうした現状にどう対応していくのですか。 神出 特にいま力を入れているのは、JAの活動を多面的に構造的に深く分析できるツールである「担い手対策支援システム」の導入と「出向く体制」をセットで推進することです。出向けばその内容を必ずシステムに記録しますから、システムを導入することは出向く足場を築くことになりますので、システム導入とその活用方法の習得支援に全力をあげています。 ――現在、いくつのJAが導入していますか。 神出 県本部ではほぼ全県に導入され、JAは336JAで導入され、約11万件の担い手が登録されています。すでに担い手と一体的な形で進んでいるJAもありますが、全体的にみれば「足を運ぶ、足を動かす」という状況がやっと始まったという認識でいます。 ――生産資材などの支援についてはどうですか。 神出 肥料の満車直行とか農薬の大型規格などの全国共通施策は、価格など目に見える、実感できるものになっていますから、それなりに評価されています。 ◆フラットでスピード感ある運営ができ、問題を発見し解決するシステム ――今後もっとも重要なことは何でしょうか。 神出 二つあります。一つは、「担い手対策支援システム」の活用がJAで定着するよう徹底して支援し、結果的に全JAの出向く体制をつくっていくこと。つまり、「なるほどこのシステムはいいな」ということを分かってもらうための支援です。それができれば岡山のJA倉敷かさや(記事参照)のように、必然的に出向く体制ができます。 ――岡山を取材して、このシステムは「問題を発見し、解決するシステム」だと実感しました。 神出 その通りですね。 ◆現業部署も自らの課題として受け止め連携することが ――県域によってあるいは県内でもまだ温度差があるのではと思いますが…。 神出 県本部長等のトップの認識とリードです。確実に進んでいるところと苦労しているなというところがあります。例えばある県ではJAの担い手担当者が111名いますが、今のところ本気で取り組んでる方は3割。それが6割になればすごい力になる。この中からリーダーをつくり、ステイタスを揚げる研修体系を実施。この人たちの意識をレベルアップし、スキルを高めるため、県本部の担い手部署(10名の職員)はフル稼働しています。いくら全農が施策を提示してもこの人たちが動かなければ何も起きないわけです。 ――県本部の専任担当者の役割は大きいわけですね。 神出 全農の経営が厳しい状況のなかで165名を配置しているわけですから、そのことをよく理解してもらい、彼らが有効に動けるようにバックアップしていくつもりです。 ◆販売面での積極的な提案で所得を確保 ――二つ目のポイントはなんですか。 神出 二つ目は、担い手の実質手取りを確保するための販売面での支援です。 ――販売提案については具体的な事例がありますか。 神出 19年度は大豆のA級品反300kg取れる直播体系をある県域で担い手と取組んでいます。20年度は、米・麦・大豆、飼料米、業務加工用、生食用高品質など、様々な角度から品種・作付の提案ができるようにいま準備をしています。担い手に提案するためには、予め実需者との話合いも行い、どの立地のどういう産地に生産をしてもらえば、より手取りが増えるかを考えて、一定の産地を選びながら提案をしていくことも考えています。 ◆販売子会社のノウハウも活用できるルールを作成 ――販売面で積極的な提案をするのは、いままでにはなかったことですね。 神出 これについては、販売ノウハウをもつ関係子会社も含めて、全農グループとして、販売提案が実現できる「装置」をつくることをいま検討しています。 ――それができるとすばらしいですね。 神出 一挙にできるとは思っていません。一歩一歩小粒でも質の良いビジネスにしていきたいですね。 ――いままでのお話で、JAが担い手対策支援システムを導入して、出向く体制をシッカリつくり、販売面も含めて互いにキチンと話合い、担い手とともに日本農業のために力を尽くしていこうと全農は考えていることが分かりましたが、そのことをJAのトップが理解をしないと現場では進みませんね。 神出 そのことはJAと話をしなければいけないと思っています。岡山のルポにもあるように、分かって行動に移しているJAもたくさんあるわけですからね。 ――お忙しいなかありがとうございました。 |
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(2007.8.30) |
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