全農が取り組んでいる経済事業改革の成果が、ひとつひとつ目に見えて実現されるよう期待している。改革は撤退ではなく「事業の再構築」と捉え、JAが事業をやりやすくできるよう、改革を進めてほしい。
全農の力強い指導力の発揮に対するJAの期待は大きい。組織統合の成果がはっきり見えているとは残念ながらまだ言い難い状況である。全農のネームバリュー(力)を統合以前よりさらに高める必要がある。
都市と地方との格差問題はJAの経営についても同様で、JAの経営格差が進んでいる。都市に近いJAは金融事業も分量が大きく、経営状態は良いが、中山間地帯のJAは、経営が大変だ。全農の事業推進は全国一律の方針ではなく、地域別にきめ細かい配慮を望みたい。例えば、販売品については「地域ブランド」を作ることが、販売促進に役立つ。
バイオエネルギーと食料との競合問題は生産現場で大きな影響をもたらしている。肥飼料価格が高騰しても、畜産価格が連動して高値にはなりにくい。全農が自己開発肥・飼料の供給をさらに進めるなど、「全農の組織と規模」のメリットを発揮し、組合員を守ってもらいたい。
◆エタノール稲を
少子高齢化、農家人口の減少、耕作放棄、後継者不足など、日本の農業の抱える“負”の側面は、中山間地帯で顕著に現れている。全農は農水省の「バイオ燃料地域利用モデル実証事業」を新潟県で始めたが、その一環としてのエタノール稲の栽培を全国に広げられないものか。販売収入の手段があれば、後継者は踏みとどまることができる。
JA、組合員への情報提供は極めて重要だ。ITの発達した現在では、パソコンの検索でかなりの情報が手に入る。その結果、JAに頼らず離脱して行くケースも出てくる。「全農ならでは」、の価値ある情報提供が望まれる。JAは、そうして受けた情報を組合員に丁寧に発信して行きたい。
19年産米から全農が仮渡方法を変えたことにともない懸念されることは、米の集荷がきちんと出来るかどうかだ。米の集荷力が低下すれば、全ての品目に波及するおそれがある。「強い全農」であってほしい。
品目横断的経営安定対策を進めるなかで、JAの役割が減少して行かないよう、配慮する必要がある。
再度、全農の機能を整理し、現場に目線を当てた具体的な推進策を策定してほしい。過疎、遠隔地への対策も忘れずに。難問だが、きめ細かい対策を大胆に立てて、日本農業の維持発展のため、全農の活躍を期待したい。
農業、農協はさらに大きな境目にさしかかっている。これから5年ぐらいかけて、全農が大きく立ち上がり、全農らしさをしっかり発揮するよう切望したい。