産地や地域の活性化、担い手対策、食の安全・安心に貢献している『サンクリスタル乳剤』。野菜類への適用を拡大し、いっそう使い勝手が良くなった。一方で、有効成分が植物油脂であることから安全性も高く、ポジティブリスト制の規制対象外であることなど多くの特徴を併せ持つ。開発の経緯や生産者へのメッセージなどを普及推進本部の野村光幸部長に聞いた。 |
◆果樹『マシン油』が全ての発想の原点に
――『サンクリスタル乳剤』開発のベースには、何があったんですか。
野村 当社は、原体を所有していないことから、取りあえず、もっているものを有効活用していこうというのが基本的な考え方です。
昔の話になりますが、各県の植物防疫関係の先生方が、いろんな試験を実施しておられました。この中で『マシン油』を上手く使っていこうと、多くの試験をやっておられました。『マシン油』は果樹では成功していたのですが、これを野菜に適用できないかということで、全農さんをはじめ各県の担当者が躍起となって検討した経緯があります。
しかし、臭いの問題、鉱物油であること、さらに、薬害の問題などが提起され、野菜では成功しなかったのです。このことから、野菜で『マシン油』に相当するものができれば面白いのではと発想した訳です。
当社では、果樹で菜種油を手掛けており、ミカンでの経験を活かしながら野菜でいろんなパターンを設定し試験を実施しました。しかし、オープンスペースであれば臭いの問題はないのですが、閉鎖的な空間ともいえる施設を考えると、天ぷら油の臭いをプンプンさせるわけにはいかなく、臭いのない油を探したわけです。
◆薬害対策を最優先し製剤改良を繰り返す
――いつ頃のことですか。
野村 平成6年からで、タイミングよく某化学品メーカーから臭いのない油があることを教えて頂き、本格的に着手しました。最初は、うどんこ病の試験から入っていったのですが、油であることからダニやアブラムシなどにも効果があるのではないかと想定し、本格的に研究を進めました。
その後、平成10年だったと思いますが日植防の委託試験を開始し、平成12年の農薬登録に至りました。その時の登録内容は、イチゴのうどんこ病とハダニでした。ただし、薬害対策などに傾注したことから上市は先のことになりました。この間、適用拡大が順次行われ、直近では、今年の8月15日にトマト・ミニトマトのコナジラミ類に適用が拡大になりました。
――コナジラミ類の終戦記念日ですね。普及において、何か印象的なことがありますか。
野村 現場の農家さんから、「ホコリダニやサビダニにも効果があるよ」といった声を頂き、これが作物・害虫の適用拡大への道に繋がりました。農家さんの声に優るものはなく、その声を真摯に受け止めることが普及の原点だと思います。
いっぽう、技術面では、乳化性と薬害の関係が表裏一体にあることから、製剤改良を繰り返し、実用化にもっていきました。
◆魅力ある特長を兼ね備え食の安全・安心に対応
――『サンクリスタル乳剤』の有効成分は、食用油脂です。
野村 脂肪酸グリセリドと呼ばれています。極めて安全性が高く、しかも、収穫前日まで安心して使用できます。適用作物が野菜類、花き類、観葉植物と使用場面が豊富なこと、適用病害虫もうどんこ病、アブラムシ類、ハダニ類、コナジラミ類と幅広いことも大きな魅力だと思います。
――使用回数に制限がありません。
野村 これも、もうひとつの大きな魅力です。また、有機JAS適合剤に位置づけられ、有機栽培にも活用できます。さらに、これを忘れてはならないのですが、ポジティブリスト制対象外の物質であることから、ドリフト(飛散)に対する心配もいりません。その他、有用昆虫や天敵類に対する影響が少ないことも大きなメリットといえます。
――『サンクリスタル乳剤』の位置づけは。
野村 本剤の特長を活かし、基幹防除剤に位置づけて頂ければ幸いです。化学合成農薬との混用もバリエーションがあり、しっかりした技術普及を進めていきたいと思います。
――生産者へのメッセージは。
野村 安全性の高い薬剤をより広く使って頂き、安全・安心な農産物を自信をもって作って頂きたいですね。担い手も含め、農家さんが、地域が、産地が、もっともっと元気になって頂けるよう、当社としても支援していきたいと思っています。
――ありがとうございました。
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