◆物流拠点と隣接する消費地倉庫として
「オペレーターの技術教育を徹底しないと事故は起きますよ」山下照全栄倉庫管理(有)社長は、取材の冒頭にこう語った。倉庫を有効に活用して事故の起こらないように米の紙袋やフレコンを積むためには、キチンとした技術と経験が必要だからだ。技術教育が不徹底だとフレコンを2段積んだだけでも事故は起きると山下社長はいう。
だから「穀物のリフトマンは、半年は付きっきりで技術教育をしてから乗せなさい」という規則をつくらなければ、事故が多発する可能性があるのではないかと危惧する。40余年にわたって物流業に携わり、全農箱崎連倉の荷役業務を受託して20年余の経験からの言葉だけにその意味は重いものがある。
全農箱崎連合農業倉庫は、九州北部における農産物の広域拠点として、さらに品質を重視した保管体制を整備するために昭和53年に5つの低温倉庫からなる施設として完成。さらには、平成9年に6号倉庫を増設し、総床面積5310平方メートル。総収容力1万1300トン。九州自動車道福岡インターや博多港・福岡貨物ターミナルなど物流拠点に隣接する消費地倉庫として大きな役割を果たしている。現在は、全農から全農物流(株)(旧・エーコープライン)が管理を委託され、全栄倉庫管理が実際の荷役などを受託して業務を行っている。
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山下照社長 |
村田裕治所長 |
◆日本初3本爪のリフト開発で定時に作業を終了
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倉庫荷役の省力化を
実現した3本爪リフト
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山下社長は、倉庫荷役作業の安全性や合理化・省力化を実現するためにさまざまな開発を行ってきたことでも知られている。その主なものを見てみよう。
まず、日本初の3本爪プッシュプルフォークリフトの開発がある。これはシートパレットでも全農箱崎連倉の木製パレットでも使用できるもので、このリフト1台で従来の作業員10人分の作業を可能にし、これを3台導入した箱崎連倉では、1日に300〜400トン入庫しても定時に作業を終了することができるようになり、人件費の大幅な削減を実現した。
さらに倉庫を立体的に有効に活用するために、リフトの高さを6メートルまで上がるようにもした。もちろんこれだけの高さのはい付けをするには、それだけの技術が必要なことはいうまでもない。
◆はい見取図と在庫明細を1画面でみれる在庫管理システム
倉庫業務では、寄託物品の在庫管理が必須の業務となるが、米であれば倉番ごとの種類・年産・銘柄・量目・包装・等級別数量の管理とそのはい付け状況の管理を行わなければならない。このため、倉番ごとの保管台帳の作成とはい見取図の作成が必要となる。多くの農業倉庫ではこれらの作業が手書きで行われている。しかし、全農箱崎連倉では独自のパソコンシステムを開発し、業務の合理化をはかっている。
この在庫管理情報システム「米助」を使うと、はい見取図と在庫明細が1画面で確認できる、入出庫累計表が瞬時に作成できる、作業表が自動的に入力できる、在庫一覧表が自動作成できるなどあげればきりがない特長があり、話を聞いた経済連に販売したこともあるという優れものだ。
◆シートパレット洗浄装置で紙袋の汚れをなくす
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紙袋の汚れをなくすシートパレット洗浄装置
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最近は、異物混入はもちろんのこと、コンタミなど米についての品質管理について厳しくなっている。そうしたことの一つに、紙袋の汚れがある。納入しにいったトラックに積まれていた紙袋の一つに足跡が付いていたために、そのトラック1台分が返品されたケースもあるという。足跡(土足)は論外にしても、食品であり商品の包装である紙袋が汚れているのでは、食品を扱う業者としては水準が低いと思われてもしかたがないといえる。
最近は、シートパレットの汚れが紙袋に付着し返品される事例も多いという。フレコンでもシャフトの油による汚れがあれば返品される。10本のうちの1本の汚れでも10本すべてが返品されるほど、厳しいのが現状だといえる。
シートパレットの汚れ落しには、JAをはじめ農業倉庫関係者はみんな苦労をしているし、委託をするとそこそこのコストがかかる。それを何とかしたいと山下社長が開発したのが、水と高速ブラシで洗浄する「シートパレット洗浄装置」で、1分間に3枚の洗浄ができ、使い勝手がよいことから、JAなどから欲しいという要望が多く、いまは生産が間に合わない状況だという。この洗浄装置は19年2月には実用新案登録がされた。
◆フレコン作業の安全性確保するアタッチメント
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フレコン作業の安全を
確保するアタッチメント
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シートパレットでフレコンの
はい積を安定する |
また、最近はフレコンの利用が多くなってきている。倉庫内でのフレコンのはい付けやはい降し作業をフォークリフトで行うとき、フレコンが固定されないので、フレコン紐がはずれ重大な人身事故につながる危険性が高く、そうした報告を全国から聞く。そうした事故を防ぐために開発されたのが「フレコンアタッチメント」だ。このアタッチメントを使うことで、手をはさんだり、ずり落ちるなどの事故がなく箱崎連倉では安全な作業ができている。
品質管理面では、「入庫する米について穀検さんに委託して検定」していると村田裕治全農物流箱崎事業所長。入ってくる米をシッカリ検査し、その品質を損なわないように保管管理するのが、倉庫業者の仕事だということだ。
そして、倉庫保管で肝心なことは「安定したはい積みができていること」だと山下社長は強調する。「フレコンの積み方、紙袋の積み方の基本をはずれると、はいが倒れたりして人身事故を起こすことになる」からだ。だから冒頭にも紹介したように「技術教育の徹底」が必要なのだ。
◆穀温と湿度は1日に2回点検する
こうしたことと同時に倉庫管理で注意をしているのは「穀温と湿度の管理だ」。毎日、朝・夕方と点検し管理している。とくに夏場は外気温が高いので入り口付近の温度・湿度に気をつかうという。また、台風や大雨のときには、排水が詰まっていないか、樋が詰まっていないかなどのチェックも忘れない。
火災予防では漏電防止の点検を月1回を行うほか、消防署と連携して年1回は防火訓練を行っている。放水すると相当の圧力がかかるが、そのことを経験し実感しているのといないのでは、いざというときの対応が違うからだと村田所長。
取材を終えて帰り際に気が付いたが、鳩とか鳥の姿を見ないので聞いてみた。「米をこぼしたらすぐに掃除して、餌がないようにする」という答えが返ってきた。なるほどと納得だ。そうした小さなこととの積み重ねも倉庫管理で大事なことだと教えられた。
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毎年実施されている防災訓練 |
倉庫内はいつでもキレイに清掃 |
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