第53回JA全国女性大会で、JA全国女性組織協議会は温暖化防止に向けた地球環境問題に取り組む「JA女性 エコライフ宣言」を行う。自然を相手にした農業の現場にいるJA女性はこれまでも地域環境問題への先進的な取り組みを行ってきたが、地球環境をテーマに掲げたのは初めて。食と農を守る活動としても重要な取り組みとして期待される。福代俊子会長にJA女性組織の今後の課題も含めて新たな取り組みへの思いを聞いた。 |
食と農の現場にいるJA女性ならではの活動を展開
◆食と農はJA女性組織こそ取り組むテーマ
――JA全国女性協の「JA女性 かわろう かえようSTEP2〜食と農を育む未来計画」について会長自身の思いをお聞かせください。
食と農はJA女性組織発足の時からのテーマだと私は思っています。JA女性組織は女性の権利を守り社会的、経済的な地位向上を目的として発足し、その時々の時代の課題を活動に移してきたという歴史がありますが、やはり食と農はずっと活動の基軸だったと思います。
「JA女性 かわろう かえよう宣言」は3年前に策定していますが、それを今年度から「ステップ2」として引き継ぎ、これを完成させようということです。
「農と暮らし」、「食と地域」、「家族の主役・JAの主人公」と3つの柱立てで女性組織の課題を整理していますが、これは全部、今日的なテーマですね。
とくにいのちを育む農の現状は、今、非常に厳しい状況にあります。
特に今年度は水田農業において過剰米により米価が大きく下落しました。緊急対策がとられましたが、依然として厳しい状況です。品目横断的経営安定対策も必ずしも農業者にとっては十分ではなく見直し対策が打ち出されました。
自給率は39%まで落ちました。農業の持つ多面的機能は貨幣評価すると何十兆円にもなりますね。それも含めながら今長いスタンスで抜本的な対策もとらないと10年後には日本の農業はどうなっているか、とても懸念される状況です。
米対策については生産調整に加えて消費拡大もセットで行わなければならないと思いますし、それには食農教育も大切です。米を中心とした日本型食文化、これは世界でも有数の食文化ですから継承していかなくてはなりません。
それから、食農教育では食に農の要素も含め、糧とする農畜産物がいかに長い時間と愛情をもって育てられたものか理解し、またその「いのち」をいただくということに感謝する心も育てなければなりません。それができるのはJA女性組織のメンバーであり、とくにこの点ではフレッシュミズに期待するところが大きいですね。次世代の子どもたちを育てている真っ最中ですからね。
学校給食法も見直されて栄養中心の考え方から食育の方向へと変わります。学校給食でも米飯給食の回数を積極的に増やしていただきたいし、私たちもこれらを具体的なテーマとして活動していくことが、「農と暮らし」、「食と地域」を支える活動、になると思っています。 ◆JAへの女性参画を進める
――「自立と組織」についてはどのような課題がありますか。
自立についてはやはり男女共同参画ですね。JAへの女性参画が進んでいません。女性理事数などの数値目標は設定はしていますがまだまだ目標数値にはほど遠い状況です。たとえば理事についてはJA数と同数以上が目標ですから、811名以上ということですね。現状は406名で目標の50%程度ですし、JAの全理事に占める割合は1.9%です。
JA女性はJAの活動のなかでも営農、生活、それから文化活動まであらゆる面を担っていますが、そういった面をなかなか正当に評価していただけないということがあります。男女共同参画は活動の重点にしていきたいと考えています。
理事は、理事としての発言としてきちんと認めてもらえますし議決権もあります。参与ではあくまで参加であって参画ではありません。ですから最終的には議決権のある役員になることを目標にしなければならないと思います。
私は全中理事会で、女性の積極的な参加が大切なことを提起しています。女性はきちんと地産地消活動、食農教育活動をしながら国産農産物の消費拡大に取り組んでますし、米づくりでも生産調整にも関わっているわけです。男性だけの水田農業ではないわけですから、たとえば水田農業をテーマにしたJAグループの集会にも参加者のせめて3割は女性になるようにとお願いしています。
女性参画と同時に女性自身、今の農業情勢を認識し活動することが大事だと思うからです。
――女性部の組織強化に向けては何が課題でしょうか。
まず部員数の減少になかなか歯止めがかからない状況で組織強化を図らなければなりません。そのために組織対策では「星の数ほどグループを作りましょう」ということを掲げています。これだけニーズが多様化していますからたくさんのメニューをそろえて魅力ある活動を行っていくということも非常に大切なことだと思います。その他、色々な方法で仲間づくりを進めていかなければなりません。
そのなかに次世代を担っていただくフレッシュミズの育成も当然含まれていますし、フレッシュミズの組織強化についても検討していきます。地域で安心して活動できるように子育て支援も含めながら環境づくりを行っていきたいと考えています。 ――さて、今年のJA全国女性大会では「JA女性 エコライフ宣言」をするということですがお考えをお聞かせください。
農業は自然相手ですから地球温暖化の影響が農産物に出ていることはみなさん肌で感じているはずですし、作物への影響だけでなく、大型台風、集中豪雨等深刻な自然災害も発生していますよね。それから昨年のあの夏の暑さを思い起こしてみてください、電力がオーバーヒート寸前までいったわけですから。
この大会では「JA女性 エコライフ宣言」を行って83万人の統一行動として地球温暖化防止への取り組みをスタートさせます。
温暖化は喫緊の課題です。以前からぜひ統一運動として取り組みたいと考えていました。京都議定書のCO2削減目標数値は達成できず、今、日本は以前より6%増えている状況です。メニューはたくさんあると思いますのでそれを示し、そのなかから各県、各組織で取り組みを進めていただきたいと考えています。
たとえば、マイ箸運動、マイバッグ運動などいろいろ出てくると思います。また、フレッシュミズ組織は「エコドライブ」に取り組もうという申し合わせをしています。一人ひとりができることは限られていると思いますが83万人が集まればかなりのことができるのではないでしょうか。
粉せっけん運動など環境問題へのJA組織の取り組みは歴史は長いですが、地球温暖化にテーマを絞った活動は今まではありませんでした。他の組織でもまだあまり活動例を聞きませんね。しかし、今の喫緊の課題は温暖化なんですよね。今すぐ対策をとらないと、人類滅亡の危機にあるとさえ予測されています。
京都議定書の約束もありますし、今年は洞爺湖サミットが開催され、主要テーマは温暖化です。何より日本は議長国です。世界に示していかなければなりません。これは世界的課題でもありますが、農業や生活にも実際に大きな影響が出始めている今自分たち自身の問題としても取り上げて皆で取り組みたい。まずは宣言をすることにより温暖化への意識を持っていただきたいです。 |