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コラム
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大宇宙・小宇宙
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景気は「底入れ」
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そういったさなか、5月17日の関係閣僚会議における月例経済報告で、竹中経済財政担当相は、景気の現状は「底入れしている」と発表した。 「底入れ」といわれても、正直のところ一般人にはちょっとぴんとこないと思う。そこで右図を見てほしい。 景気後退が下げ止まって反転しようとする時期が「底入れ」であり、それから先、右肩上がりになれば「底固め」であり、本格的に景気回復に向かえば「底離れ」と宣言できる。 一方、下げ止まって「底入れ」したといっても、依然、景気の横ばい状況が続くようならば「底ばい」であり、再び落ち込むようなら「底割れ」したと表現する。 さて、政府の月例経済報告を月別に追ってみると、2月発表の「悪化を続けている」が、3月は「一部に下げ止まりの兆しが見られる」となり、4月は「底入れに向けた動きが見られる」と変わり、5月は「底入れしている」と断言している。 ただし、「なんでもあり」の昨今の世界情勢だけに、一寸先は闇に近いので、今回も底入れしたといっても「景気が直ちに回復するかどうかは、引き続き注視する必要がある」と慎重に構えている。 ところで、当局の話では「底入れ」「底固め」「底離れ」といった用語自体「明確な定義がない」とのことであり、もう一歩踏み込んで「景気とは」と問うと、この言葉も分かったようで、案外分かりにくい。 「景気づけに一杯飲もう」とか「景気が良いので飛ぶように売れる」あるいは「不景気な顔をするな」等、「景気」という言葉は日常、さまざまなニュアンスで使われている。 試みに辞典を開くと「景」は「京(高い丘)の上にかかる日(太陽)のことで、ひかり、けしき、おもむきなど」を意味することとあり、「気」のほうは「ちから、宇宙の万物を生成する資料、水蒸気など」を表すとある。 ふたつを合わせた「景気」は「光と大気」転じて「けはい」「ありさま」と説明されており、日本語としては、本来このように漠とした雲をつかむような内容であった。 次に英語で「景気」のことをどう表現しているのか和英辞書に当ってみると、business activities(conditions)などと記載してあり、日本語の場合より、使われ方が「商売」「取引」に限定され、明らかに経済用語として位置付けられている。 歴史的には、江戸時代までは「けはい」「ありさま」程度だった「景気」の使われ方が、明治になって経済用語としての意味を担わされたのだと思う。 景気を経済用語として使う場合、一国の景気の良い悪いは国全体の経済活動が活発か否かで判断されよう。 そのため、鉱工業生産指数、労働力調査、輸出入動向、消費支出、設備、在庫投資、賃金水準、企業収益、税収、国際収支など、生産、支出、所得各部門にわたる諸指標から総合的に判定する必要がある。 政府としてこの作業を行っているのは、旧経済企画庁であり、平成13年以降は、内閣府経済社会研究所である。 同研究所は季(年)刊「国民経済計算」や、季刊「グラフで語る日米の景気動向」などを刊行している。冒頭の月例経済報告を記載した「経済月報」誌は、本年3月で発行を止め、内閣府のホームページか電話による問い合わせに移行した。(MMC) |